音楽生成AIコンサルタントSunoPよこたん「AI音楽」をLIVEで語る

音楽生成AIの現状と今後のビジネス可能性について語った回。楽譜が読めなくても鼻歌でメロディを口ずさめば曲になり、Suno Studio 2.0では「ギターをもっと強く」とチャットで指示するプロデューサー型の制作が可能になった。自作曲や自作詞を学習させたAI作曲家・AI作詞家も作れ、故人を含む「AIアベンジャーズ」的コラボも現実味を帯びる。9月3日のモデル切り替えで著作権問題はクリアになる見込み。状況はYouTuber黎明期に酷似し、有名人が参入する前の今が勝負どころだと説く。
詳しくは15分の動画で解説しました。
https://www.youtube.com/watch?v=YJat33KEQYA
0:00 🎤 導入・AI音楽ランキング国内12位に浮上 1:10 🎙️ 懇親会9時間の録音から生まれた今日のスライド 2:17 📋 本日お話しする内容の全体像 2:40 🎵 口ずさみから1曲へ〜鼻歌で作る新しい制作スタイル 3:24 🎛️ Suno Studio 2.0でプロデューサーのように試作する 4:26 🎸 楽器が弾ける人・音楽を聴いてきた人が強くなる時代 5:33 💿 ラルクとkenのギター、数万円で買った限定シングルの思い出 6:40 🧠 作曲・作詞の個性をAIに学ばせて「AI作曲家」を作る 7:45 ✍️ 人間らしさを加えてポン出しより1段上のクオリティへ 8:55 📉 自分の曲ばかり聴く時代がヒット曲のボリュームを食う 9:20 💕 恋愛ソングとガチャの高揚感〜疑似恋愛とモチベーション維持 10:03 🌅 1日2曲の習慣と9月3日「夜明け前」の状況 11:11 🚀 FacebookやTwitter初期と同じ構図、HIKAKINから学ぶ先行者の価値 12:18 🦸 AIアベンジャーズ〜AI同士のコラボとMiliaの可能性 13:25 ⚖️ 9月3日の著作権モデル変更と「AI◯◯」の誕生 14:00 ❤️ 結局、人は人間が好き〜AI音楽の本質とまとめ
本日2026年8月21日16時よりライブ配信に出ました。
以下のリンクよりアーカイブご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=OhnCBnpT-6E
音楽生成AIコンサルタントSunoPよこたん「AI音楽」をLIVEで語る
お陰様で国内12位になりました。
いつも聞いてくださり感謝です。
イーンスパイアの横田です。
https://www.enspire.co.jp/

ありがとうございます。
もう1つ上まで少し遠いです(笑)
僕のSunoフォローください。
https://suno.com/@enspire
さて、本題です。
先日に飲み会で話した内容と
そのダイジェストを合わせて
1つのコンテンツにしました。

音楽生成AIコンサルタントSunoPよこたん「AI音楽」をLIVEで語る
一昨日、福井県でのInstagramセミナーの録音を切り忘れたまま懇親会へ。ホテルに戻ると9時間分が丸ごと録音されていた。「今日すごくAI音楽のいい話をしたのに、録っておけばよかった」と後悔した直後の出来事。
飲み会で1時間話した内容 → そのままスライド化 → 15分ライブでダイジェスト配信。いざという時、録音は最強の資産になる。
そして本日16:00から1時間のライブ配信「AI音楽の現状と今後のビジネスの可能性 / 9月3日でAI音楽は激変する」を実施。
楽譜も読めない、楽器も弾けない。それでも曲はできる。口ずさむという入力方法にたどり着いたから。
キーボードでテキスト入力して曲にする
声+メロディで渡すから、気持ちがそのまま乗る
だから最初のワンフレーズが一番大事。 — ネットビジネス・アナリスト 横田秀珠
イントロを何十パターンも出させて一番いいものを採用する。これはプロがギタリストに「もうちょっといい感じにできない?」と注文するのと同じ工程。人間がやってきたことを、速く回しているだけ。
最新版では、できあがった曲の一部分をチャットで直せる。ポン出しして終わり、ではなくなった。
作れる人ではなく、「どうアレンジすればもっと良くなるか」を言える人が強い。つまり楽器が弾ける人、音楽をたくさん聴いてきた人が本格参入したら、クオリティは一段跳ね上がる。
ギターを持っている人は、自分で弾いたフレーズを入れて「これをイントロで」「これをリズムギターで」と展開させられる。その感覚は、弾けない自分には出せない。だから12位という今の地位は、正直かなり危うい。
L’Arc〜en〜Cielのギタリスト・kenの音がとにかく好きだった。インターネットもSNSもない時代に知ったインディーズ限定1000枚のシングル『夜想花』を、数万円を出して手に入れた。
「誰も持ってねえだろう」と自慢できる幻の1枚
ベスト盤や『DUNE』のボーナストラックに収録
その悔しさはさておき、kenっぽいギターの曲をAIで作ってみたら、偶然かなりそれらしいものが2曲ほどできた。ギターソロだけの曲は、歴代でも上位のバズ。
ラルクはken・tetsu・hydeの全員が作曲する。聴けば「あ、これtetsuだな」と分かるほど個性が違う。個性があるなら、それは学習できる。
この2つを掛け合わせると何が起きるか——というのが、ここから先の話。
いい感じに盛り上がった曲の最後に、「マカロニサラダが美味しかった」と書く。人間はこれをやる。AIは絶対にやらない。文脈上、そこにマカロニサラダは存在しないから。
そのエッセンスを最後に置ける人には、勝てない。 — ネットビジネス・アナリスト 横田秀珠
AI音楽ラジオを一緒にやっていたともみんは元シンガーソングライター。人間らしさの出し方を、だいぶ勉強させてもらった。
AIが出した曲 + 人間がちょろっと足す人間くささ = ポン出し勢より一段上。素人がやっているうちはいいが、やってきた人が参入すると、違いが一発でバレる。
いい曲が出るまでガチャを回し、ダメなものはボツにする。だから手元には自分がいいと思った曲しか残らない。当然、自分の曲がかわいくなる。
ラルクを聴かなくなる。人の曲を聴いている暇がなくなる。これがみんなの端末で同時に起きたら——ヒット曲の再生ボリュームが静かに削られていく。
AI音楽は「今売れている人がさらに売れる」のではなく、全体がばらけていく方向に進むのではないか。
「こういう理由であなたが好きです」という曲を作る。その返事として「私もあなたが好きです」というアンサーソングを作らせる。自分で作らせておきながら、言われると感動する。
落ち込んでいる時に「こう言われたら頑張れる」という言葉を歌わせる使い方もある。何回、自分のAI音楽に励まされたか分からない。
自分で作ったのに、1回目の再生でどう展開するか読めない。イントロで「お、いい」、サビで「めっちゃいい」、そして「このまま上手く落ちてくれ」と祈る。作り手なのに、いちばんのファンになっている。
これまでのSunoは、ネット上の音楽を学習して成立していた。著作権的にアウトで、実際に訴訟にもなっている。そこで自社で用意した音楽をもとに学習したモデルへ全面的に切り替わる。
真面目に音楽を作ってきた人たちの学習データがなくなる。クオリティが落ちる可能性
権利者は自分の曲を学習させて「AI◯◯」を公式に作れる
GOを出したということは、切り替えてもクオリティを保てる確信があるはず。それでも、ここが本当の分かれ目。かなり大事な時期です。
自分のような人間が国内12位にいること自体がおかしい。本当に才能のある人が来たら一瞬で抜かれる。この既視感、覚えていませんか。
有名人が入るとユーザーの分母が増え、先行者も一緒に伸びる。FacebookやXはダメだったが、YouTubeは成立した。音楽はYouTubeに近い。
- 米津玄師のような人が「Sunoで作りました」と普通に言い出す可能性
- Adoが毎日AIで曲を作り「歌ってみた」を回し始めたら、相当なインパクト
- ユーミンは既にAI活用が活発で、荒井由実のAIと現在の松任谷由実が一緒に歌う試みも
- 海外では数千万フォロワー規模のラッパーがAI制作をカミングアウトし始めている
Sunoもフォロワー制のSNS。有名人が「アカウントはこれです、フォローお願いします」と言った瞬間、1600フォロワーは一瞬で置いていかれる。逆に言えば、いまがチャンス。
いまミュージシャンのコラボが増えているのは、ネットで音源をやり取りできるようになったから。次はそれがAI同士で起きる。
hideのギターの音だけを学習させて「ギターはhideの感じで」と指定する。BUCK-TICKの櫻井さんの声、尾崎豊の新曲。権利者がOKを出せば、再生数はすべて本人側に還元される。有料の別契約になっていくはず。
ちなみに尾崎豊が今も生きていたら——丸くなって「あの時は校舎の窓ガラスを割ってすいませんでした」と歌うのでは、という話でも盛り上がった。逆に無課金だと素人扱いになる未来も、笑えない。
山下達郎はレコーディングとライブの音を完全に一致させる。アコースティックバージョンもやらない。同じ音なのに、それでも人は会場に足を運ぶ。
だから、作り手として立っている人の価値はなくならない。 — ネットビジネス・アナリスト 横田秀珠
音楽生成AIコンサルタントSunoPよこたん「AI音楽」をLIVEで語る
- はじめに
- 口ずさんだメロディが1曲になる|楽譜が読めなくても作曲できる時代の入口
- 「もっとギター強めに」が通じるAI|Suno Studio 2.0が起こしたプロデューサー革命
- 自分の曲しか聴かなくなる|AI音楽が音楽の分母を静かに食い始める
- 9月3日のモデル切替とAIアベンジャーズ|それでも人間は人間を好きになる
- おわりに
- まとめ
- よくある質問
はじめに
楽譜が読めない。楽器も弾けない。それでも「作曲してるんだよね」と言える時代が、もう目の前どころか、すでに始まっています。口で「タラタラタラー」と言って、それを「これをギターソロにして」と伝えるだけでギターソロができあがり、サビだけを鼻歌で歌えばメロディが立ち上がる。こんな話を数年前にしていたら、ほとんどの人は冗談だと思ったはずです。
この記事は、2026年8月21日金曜日にお届けした「ネットビジネスに関する情報を生中継で15分間」という番組の内容と、その元になった福井県での懇親会での約1時間にわたる生々しいやり取り、この2つを1本に統合して再構成したものです。片方はスライドを使って整理された「ダイジェスト」、もう片方は酒席で飛び交った本音のトーク。両方を突き合わせると、AI音楽がいま置かれている状況の輪郭が、驚くほどはっきり見えてきます。
話題は、鼻歌からの作曲、Suno Studio 2.0によるチャット指示でのアレンジ変更、L’Arc〜en〜Cielのkenのギターへの偏愛、「マカロニサラダ」が象徴する人間の歌詞、自分の曲しか聴かなくなる自己陶酔、そして2026年9月3日に控えたSunoの学習モデル切り替えと、その先に待つ「AIアベンジャーズ」まで。YouTuberが誕生する直前の空気に酷似したこの瞬間を、できるだけそのまま記録しておきたいと思います。
口ずさんだメロディが1曲になる|楽譜が読めなくても作曲できる時代の入口
国内12位という現在地と、偶然録れていた9時間
今日は2026年8月21日金曜日です。この日は、音楽生成AIの話を少ししていきたいと思います。
まず、現在地の報告からです。Sunoのランキングというものがあるのですが、なんと前回ご紹介したときからさらに順位が上がりまして、国内で総再生回数が12位、そして1曲あたりの再生回数で国内37位ということで、最高位をランクインいたしました。ありがとうございます。
そんな僕が、実は今日お話をします。2026年8月21日の16時から、「AI音楽の現状と今後のビジネスの可能性」ということで、テーマは「9月3日でAI音楽は激変する」。1時間ぐらいライブ配信でお話しいたしますので、よかったら概要欄のほうにリンクを貼っておきますので、ぜひご参加ください。この記事では、その中身を少しダイジェストでお伝えしていきます。
なぜ今日この話ができるかというと、実は偶然が重なっているんです。
たまたま一昨日、福井県のほうで昼間にInstagramのセミナーがありました。その内容は録音していたんですね。録画もしていました。ところが、その内容をほぼそのまま録音しっぱなしで忘れていて、その後の懇親会もそのまま録音状態になっていたんです。
僕はその飲み会の時に「今日すごくAI音楽のいい話をしたから、これ録音しておけばよかったな」と言って、後で後悔していました。ところが、ホテルに戻ってみたら、そのやり取りが全部録音されていて、なんと9時間分録音されていることが分かったんです。
やっぱり音源は取っておいたほうがいいな、と改めて思いました。PLAUD NOTEのようなツールもありましたが、最近使っていなかったんです。でも、いざという時にこういうのはめっちゃ役立つな、と実感しました。その録音内容をもとに、今日ちょっとスライドを作ってみたんですね。この話を飲み会で1時間ぐらい僕が喋ったので、その内容からスライドにして、15分間でお伝えするという流れです。
この記事は、その15分間のダイジェストと、元になった飲み会での生のやり取り、その両方を突き合わせて再構成しています。整理された話と、酒席で出た本音。両方あるからこそ見えてくるものがある、というのがこの記事のねらいです。
「録っておいてよかった」が起きる仕組みを作る
少し脇道にそれますが、この経験から学んだことを共有しておきます。コンテンツを作る立場の方には、たぶん一番役に立つ部分です。
セミナーの録音・録画をするのは、多くの方がやっていると思います。でも今回価値が高かったのは、セミナー本体ではなく、その後の懇親会でした。しかも、意図して録ったわけではありません。止め忘れです。結果として9時間分が残っていた。
ここには、重要な示唆があります。用意した話より、その場で引き出された話のほうが、往々にして面白い。なぜかというと、質問されるからです。「音楽やってたんですか?」「ギター弾いてたんですか?」「収益化はできるんですか?」「1回やればハマるんだろうけど、まだ手が伸びないですね」——こういう相手の反応があるから、自分でも思っていなかった角度で話が展開していきます。一人でスライドを作っている時には、絶対に出てこない言葉が出てくるんです。
だから僕は、飲み会の最中に「今日すごくAI音楽のいい話をしたから、これ録音しておけばよかったな」と本気で後悔しました。そして、ホテルに戻って録れていたと分かった時の安堵といったらありませんでした。
教訓は2つです。
1つは、とにかく録っておくこと。PLAUD NOTEのようなツールもありますし、スマホの録音アプリでも構いません。最近使っていなかったのですが、いざという時にこういうのはめっちゃ役立ちます。ストレージは安いですが、失われた会話は二度と戻りません。
もう1つは、録音をそのまま寝かせないこと。9時間の音声を、そのまま9時間かけて聴き直すのは現実的ではありません。今はAIで文字起こしをして、そこから要点を抜き出し、スライドに落とし込むところまで一気にできます。実際、今回のスライドはそうやって作りました。1時間喋った内容が、15分のコンテンツになり、さらにこうしてブログ記事にもなっている。1つの素材が、形を変えて何度も働いてくれるわけです。
これはAI音楽の話ではありませんが、AI時代のコンテンツ制作の基本形だと思っています。
「タラタラタラー」がギターソロになる
まず、いまどんな作り方をしているのかという話からです。
今、作曲をしています。ただし、楽譜は読めません。楽器も弾けません。それでも作れるんです。どうやっているかというと、口で「タラタラタラー」と言って、それを投げて「これをギターソロにして」と伝える。すると、そのニュアンスを汲んだギターソロが出てくる。あるいは、サビだけを自分で歌ってメロディを作る。こういうやり方をしています。
これは明らかに、今までのAIの使い方とは違います。今までのAIは、あくまで「今まで学習したもの」の中から組み合わせて作っていました。ところが、自分が口ずさんだメロディは、AIがこれまで学習していないものです。学習していないものを入力として出すわけですから、当然、今までとは違うものが出てくる。ここが決定的に違うポイントです。
すごいのは、ワンフレーズ、1コーラス思いついただけで、そこから膨らませて1曲まるごと作ってしまうところです。そのワンフレーズをループさせる。ワンフレーズをサビに入れて、そのサビから膨らませて全部作る。そういうことが全部できてしまいます。
なぜ「打つ」より「喋る」ほうが良い曲になるのか
ちょっと前までは、自分が喋って「今日こんなことを曲にしたいです」という内容を音声入力したものを投げて、それを曲にするということをやっていました。テキストで打つのではなく、音声で入れるという方法です。
なぜそうしていたかというと、やっぱりキーボードで打つよりも、喋ったほうが自分の気持ちが入りやすいからです。文字にすると、どうしても整理された、こぎれいな言葉になってしまう。でも喋ると、言い淀みや強弱や、言葉の選び方そのものに感情が乗ります。
そして最近は、そこからさらに一段進んで、メロディも乗せて曲にするようになりました。喋るだけでなく、メロディまで自分から出す。そうすると、さらに気持ちが入りやすくなるんです。最近の曲がちょっと変わってきたな、と気づいた方がいらっしゃるかもしれませんが、その理由がこれです。作り方が変わったから、出てくるものも変わっている。
ベースから始まる曲だって作れる
この方法は、ギターソロに限った話ではありません。何でもできます。ベースもそうです。
例えば、ベースで始まる曲を作りたいなと思ったとします。そうしたら「デーンデーンデーンデーンデーンデーン」と口で言って、「こんな感じで」と伝える。あとはAIが作ってくれます。楽器が弾けなくても、頭の中で鳴っているリズムやフレーズさえあれば、それを起点にできるということです。
ここで重要なのが、ラージランゲージモデル(大規模言語モデル)の性質です。先を作ると、作った分の続きを想像して作っていく。つまり、最初が大事なんです。最初に置いたものから連想して、どんどん繋げていく仕組みなので、冒頭の一手が曲全体の方向性を決めてしまいます。イントロが弱ければ、その先も引きずられる。逆に、最初の数秒に強いアイデアを置ければ、そこから先は勝手に良い方向に伸びていきます。
プロもすでにやっている、という現実
「そんなのはアマチュアの遊びでしょう」と思われるかもしれませんが、プロもやっています。もうやっています。
例えばイントロです。「イントロでちょっと掴みたいな」と思ったときに、候補をいっぱい作らせて、その中から一番いいやつを採用すればいい。これは、絶対にやります。やらない理由がありません。
これは要するに、人間がやってきたことを見つけて、それを早くやっているだけなんです。考えてみてください。プロデューサーが、例えばギタリストに「この曲のイントロにギターソロ弾いて」と言う。ギタリストが弾く。すると「ちょっと弱いね」と言われる。「もうちょっと何かいい感じにできない?」と言われて、「じゃあこんなのどうですか?」と別のフレーズを出す。そこで「あ、OK OK」となる。
このやり取りが、レコーディングスタジオでずっと行われてきたことです。AIがやっているのは、この「じゃあこんなのどうですか?」をポーン、ポーンと次々に出すこと。そして「あ、OK OK」となる。構造としてはまったく同じです。
違いは何かというと、今まではその場でひらめかないと弾けなかったということ。ひらめいた人間だけが「こんなのどうですか?」を出せた。それが、ひらめきの部分を大量に自動生成できるようになった。これが今、起きていることです。
楽器が弾ける人には勝てない、という正直な話
ここで、正直な話をしておきたいと思います。
「音楽やってたんですか? ギター弾いてたんですか?」と聞かれることがありますが、答えはノーです。そして、もし楽器を弾いていた人がAI音楽に本気で参入してきたら、もうバリバリいけると思います。弾いている人には、僕は勝てません。
なぜかというと、音を出せないからです。例えばギターを持っている人が、チャラーンと鳴らして、それで「こんな感じだ」というのが感覚として湧いてくる。その感覚が、僕にはありません。わからないんです。やったことがないから。
だから結局、過去に誰かが作った曲を参考にして、そこから思いついてやるしかできない。ゼロから音を鳴らして、鳴らした瞬間に「あ、これいいかも」と思う——あの体験ができないんです。「いいかも」と思うものを作ることはできても、そこに偶然がない。偶然の発見が生まれる余地がない、ということです。
この差は大きいと思っています。だからこそ、楽器を弾ける人がこの世界に入ってくることを、僕はかなり本気で歓迎しつつ、同時に脅威にも感じています。
なぜ「AIが学習していないもの」を入れると強いのか
ここで、少し理屈の部分を整理しておきたいと思います。ブログでこの話をすると、「結局AIが作っているんでしょ」と言われることが多いのですが、鼻歌を入れる作り方は、その批判が当たらない領域に入っています。
AIによる音楽生成の基本は、学習したデータの中から、確率的にもっともらしい続きを組み立てることです。だから、テキストだけで「明るいポップスを作って」と指示すると、出てくるのは「明るいポップスとして統計的にありそうなもの」になります。これは悪いことではありません。むしろ、平均点が非常に高い。だからこそ、何を出してもよく見えてしまうんです。
ところが、自分が口ずさんだメロディを投げると、話が変わります。そのメロディは、世界中のどのデータセットにも入っていません。あなたの頭の中にしかなかったものです。それを起点にすると、AIは「学習していないもの」を出発点として続きを組み立てなければならなくなる。
結果として出てくるのは、「AIが得意な平均点の高いもの」ではなく、「あなたの発想を、AIの技術で仕上げたもの」になります。ここが決定的に違うポイントです。
しかも先ほど触れたように、ラージランゲージモデルは前を受けて続きを想像する仕組みです。だから、冒頭に自分のオリジナルを置けば、その後の展開もその色に引きずられていく。1フレーズの投入が、曲全体の性格を決めてしまうわけです。逆に言えば、最初にありきたりなものを置いてしまうと、その後もありきたりに流れていきます。
実際にやってみるための5ステップ
「じゃあ具体的にどうやるの」という声が聞こえてきそうなので、実際の流れをステップに分けて書いておきます。
ステップ1|まず口に出してみる テキストで打つのをやめて、まず喋ってみてください。「今日こんなことを曲にしたいです」でいいんです。キーボードで打つより、喋ったほうが圧倒的に気持ちが入ります。文字にすると整理されすぎてしまうものが、声だと生々しいまま残ります。
ステップ2|メロディを乗せる 喋るだけで終わらせず、メロディも乗せてみます。「タラタラタラー」でも「デーンデーンデーン」でも構いません。音程が合っていなくても、上手くなくても大丈夫です。大事なのは、頭の中で鳴っているものを外に出すことです。
ステップ3|役割を指定する そのメロディに対して、「これをギターソロにして」「これをベースで始まるイントロにして」「これをサビにして」と役割を指定します。ここで指定を変えるだけで、同じ鼻歌からまったく違う曲が生まれます。
ステップ4|膨らませる ワンフレーズができたら、そこから膨らませます。そのフレーズをループさせるのか、サビとして中心に据えて前後を作らせるのか。1コーラス分あれば、そこから1曲まるごとになります。
ステップ5|聴いて、直す 出てきたものを聴いて、弱いところを見つけます。ここから先が、次の章で扱う「プロデューサーの仕事」です。
従来の作曲プロセスとAI作曲プロセスの違い
言葉だけだと分かりにくいので、表にして比べてみます。
| 項目 | 従来の作曲 | AI作曲(鼻歌スタート) |
|---|---|---|
| 必要な前提 | 楽譜の読み書き、楽器演奏 | 頭の中で鳴っているメロディだけ |
| アイデアの出し方 | その場でひらめいて演奏する | 口ずさんで投げる |
| 候補の数 | ひらめいた分だけ | 何十パターンでも出せる |
| イントロ作り | ギタリストが弾いて提案 | 大量生成して一番いいものを採用 |
| 偶然の発見 | 音を鳴らした瞬間に生まれる | 生成結果を聴いた瞬間に生まれる |
| 1曲にかかる時間 | 数日〜数ヶ月 | 数分〜数時間 |
| 弱点 | ひらめかないと進まない | ゼロから音を鳴らす体感がない |
こうして並べると、AI作曲は従来の作曲を置き換えているのではなく、「ひらめきを大量に供給する装置」を後ろに置いただけだ、ということが分かると思います。だからプロが使うのも当然なんです。
「もっとギター強めに」が通じるAI|Suno Studio 2.0が起こしたプロデューサー革命
チャットで曲を直せる時代が来た
ここからが、今いちばん面白い話です。
今、Sunoの一番新しいバージョンであるSuno Studio 2.0というのを使っていくと、本当にすごいんです。
例えば、何か1曲作ったとします。その中で、ギターのソロの部分があった。それを聴いて「この部分がちょっと弱いな」と思ったとします。従来なら、また最初から作り直すか、諦めるしかありませんでした。
ところが今は、「この部分、もうちょっとギター強めにして」とか、「ドラムをもっと強調して」とか、チャットで指示するだけで内容を変えることができるんです。これが出たんですよ。
これはもう、完全にプロデューサーの仕事です。いわゆるレコーディングをしている時に、バンドメンバーに弾いてもらったり歌ってもらったりして「もっとこうして」と言う。あのやり取りが、まさにAI相手にできるようになったということです。
飲み会でもこの話をしました。今、1個上のプラン、つまり有料プランを使っているのですが、曲を作って、例えば間奏のギターソロがあった時に「ギターソロ弱いじゃん」となる。そうしたら、その部分をチャットで「ここもっと強めに」と言えば直る。口で言うだけで直るんです。
プロデューサーが「ここもっと強めにして」と言うのとまったく同じで、それで変えてくれる。「いや、そうじゃないでしょ」となったら、「いや、そうじゃなくて、例えばラルクのみたいに」と伝えれば、「ああ、そういうことですね、じゃあ直します」となる。もう全て、言葉で通じるんです。
そして、途中で「いや、そうじゃないでしょ」となったら、途中から作り直せます。曲全体を捨てる必要がない。ここが本当に大きい。
ポン出しする人より、アレンジを語れる人が強い
ということになると、何が起きるか。
ポン出しするのではなくて、作ったものに対して「どうアレンジしたほうがもっと良くなるか」ということが言える人が強い、という話になるわけですね。
「ポン出し」というのは、プロンプトを投げて出てきたものをそのまま使う、という作り方です。これは誰でもできます。ところが、出てきたものを聴いて「ここのベースがもたついている」「サビ前のブレイクをもう半拍伸ばしたい」「この間奏はもっと歪ませたい」と言える人は限られています。
ということになってくると、やっぱり楽器を弾ける人。もしくは、AIだけでなく音楽をたくさん聴いている人。こういう人が音楽を作ると、そういうアドバイスができるわけですね。
なので、楽器を弾ける人や、発想がある人が参入してくると、かなりまたクオリティが上がってくるんじゃないかなと思うので、非常に楽しみにしています。
同時に、これは自分にとっては脅威でもあります。僕もそういう経験をしていかないと、AI音楽の今の12位という地位は危ういんじゃないかな、と思っているところです。順位というのは、参入者の質が上がった瞬間に一気に変わりますから。
飲み会でも、こんな話をしました。ギターを弾いている人が、自分がギターを弾いたものを入れたら、そこから展開が作れる。それをイントロで使う、それをリフで使う、というのもできる。それをリズムギターでやって、というのもできるわけです。自分が弾いてみた音を素材にして、そこからAIに膨らませてもらう。多分そうなると思います。
さらにその先には、AIで作った曲を実際に演奏するミュージシャンが出てくる、という展開もあります。ライブでは人間が演奏する。素人レベルだったら、それを作って「俺のオリジナル」と言っている。そういう層も含めて、裾野が一気に広がっていくということです。
『夜想花』に数万円払った話
ここで、少し個人的な話をさせてください。飲み会でいちばん盛り上がったのは、実はこの話でした。
僕、L’Arc〜en〜Cielというバンドが大好きで、昔よく聴いていたんです。L’Arc〜en〜Cielにkenというギタリストの方がいて、この人のギターの音がすごく好きなんですね。そして、曲も好きなんです。
そんな中で『夜想花』という曲があります。夜を想う花、と書いて夜想花。これはインディーズ時代に出された限定1000枚のシングルで、そのカップリングに入っている曲なんです。売れていない時に、ライブ会場で手売りとか配布とかされたもので、配布シングルか何かだったと思います。とにかく限定1000枚しかない。
これを僕は、昔まだインターネットもSNSもない時代にその情報を知って、数万円出して買ったんですよ。今から20年ぐらい前かな。いくらだったかは全然覚えていないのですが、5万か7万か、そんなぐらいだった気がします。
で、それを買って「誰も持ってねえだろう」と言って、限定品であることを自慢していたわけです。
そうしたら、それからラルクが売れて、2枚組のベストアルバムとかを出したんですよ。その時に、収録されたんです、その曲が。
「おい!」って。「俺、何万も出して買ったんだぜ」って。「何、付録につけてんだよ」って。
さらに今では、『DUNE』というデビューアルバムのボーナストラックにも追加されるようになってしまいました。「これめっちゃ金出して買ったのに!」という話です。まあ、それはちょっと置いておいて。
ちなみに、僕が一時期めっちゃラルクが好きだった時期がありまして、どのぐらいまでかというと、『虹』とかが出て、sakuraが辞めて、そこから売れていって……という流れの中で、途中からちょっと音楽が変わってきたんですよね。そこからちょっと遠のいたんです。でも遠のいたけど、つかず離れずみたいな感じで、やっぱり好きという状態が続いています。
kenとtetsuとhyde、この3人の作曲のセンスがもうバラバラじゃないですか。だから曲を聴いて「あ、これ絶対tetsuだ」とか「kenだ」とか分かるでしょう。「kenっぽいな」「あ、これkenだよね」みたいな。kenの曲が、僕は一番好きでした。tetsuは、なんだろう、いわゆる明るいんですよね。僕はあの暗さのほうが好きです。ラルクはkenがメインだったからなのかな、と思っています。
サマソニの話も出ました。サマソニは大御所ばっかりだから楽しいかなと。ラルクも出たんですよね。行っていないんですけど、『総天然色』という新曲もあって、Xを見ているとみんなめっちゃ楽しそうで。一生後悔する気がします。ただ、hydeもだいぶ声がやばいというか、だいぶ疲れているところもあって。そろそろもう50代ですからね。
指示が通りやすい言葉のパターン
「言語化が大事」と言われても、具体的にどう言えばいいのか分からない、という方も多いと思います。実際に使っている言い回しを、パターンとして整理しておきます。
パターン1|強弱で指定する 「この部分、もうちょっとギター強めにして」「ドラムをもっと強調して」。一番シンプルで、一番通りやすい形です。まずここから始めるのがおすすめです。
パターン2|楽器と場所をセットで言う 「間奏のギターソロが弱い」「サビのベースをもっと前に出して」。どの楽器の、どこか。この2つを揃えるだけで、精度が一気に上がります。
パターン3|参照を出す 「そうじゃなくて、例えばラルクのみたいに」。自分の中にある音のイメージを、既存の音楽で例える方法です。これが一番強力ですが、聴いてきた蓄積がないと使えません。逆に言えば、音楽をたくさん聴いてきた人の最大の武器がこれです。
パターン4|役割で言う 「これをイントロにして」「これをリフで使って」「これをリズムギターでやって」。同じ素材でも、役割の指定を変えるだけで曲がまるごと変わります。
パターン5|構成で言う 「このフレーズをループさせて」「サビから膨らませて全部作って」。ワンフレーズ、1コーラスからでも1曲になるのは、この指定ができるからです。
慣れてくると、自分の中に定型ができてきます。そして、その定型がそのまま自分の作風になっていきます。プロデューサーが自分の口癖で現場を動かすのと、まったく同じ構造です。
「希少性」が消える時代に、ファンは何を買うのか
『夜想花』の話には、実は今の時代を考えるうえで重要な論点が含まれています。
僕が数万円払ったのは、曲そのものに対してではありません。限定1000枚しかない、という希少性に対してです。「誰も持ってねえだろう」と自慢できることに価値があった。ところが、後にベストアルバムやデビューアルバム『DUNE』のボーナストラックとして誰でも聴けるようになった瞬間、その希少性は消えました。曲は同じなのに、価値の中身が変わったわけです。
今、AI音楽で起きようとしているのは、これの極端版です。誰でも、いくらでも、高品質な曲を作れるようになる。曲そのものの希少性は、限りなくゼロに近づいていきます。
では、ファンは何にお金を払うのか。答えは、体験と、人です。
サマソニの話をしたのも、実はここにつながります。ラルクも出て、『総天然色』という新曲もあって、Xを見ているとみんなめっちゃ楽しそうで。行っていないので、一生後悔する気がしています。あの「その場にいた」という体験は、音源では絶対に代替できません。hydeさんもだいぶ声がやばいというか、だいぶ疲れているところもあって、そろそろもう50代ですから、なおさら「今のうちに見ておきたい」という気持ちが強くなる。
つまり、複製できるものの価値は下がり、複製できないものの価値は上がる。AI音楽の時代に、ライブやその人自身の価値が上がる、というのはこういう理屈です。
kenっぽさをAIに学ばせる=AI作曲家
さて、なぜこのラルクの話をしたか、です。ここからが本題です。
そのkenのギターの音がすごくいい、となった場合に、そのギターの曲を僕が作ったりしたんですね。これは偶然なんですけど、2曲ぐらいあって、かなりkenっぽい曲ができたりする。この話を飲み会でしました。実際、そのギターソロだけの曲があるのですが、それは僕の歴代の中でもかなり上位で、バズっています。
そこから出てきたのが、「kenっぽさと人間の歌詞」というテーマです。
ということは、こう考えられます。kenっぽいギターの音がある。ラルクというのは、tetsuというベーシストも、ボーカリストのhydeも、全員が作曲するのですが、それぞれやっぱり作曲の個性が違う。僕は曲を聴く時に「あ、これtetsuの曲だな」「あ、これhydeだろうな」と分かるわけです。
ということは、そういう作曲における「その人の個性」が確実に存在するということです。
その個性をAIに学ばせると、いわゆるAI作曲家というものを作ることができる。そして、これが今、AIモデルとしてSunoでできるようになったんです。
自分が作った曲を入れて、それをモデルにして学習させて、そういうっぽい曲をどんどん作っていく。こういうことができるようになりました。
AI作詞家という、もうひとつの武器
そして今度は、逆に作詞もできるわけですね。
作詞をAIではなく自分でやっている人は、自分が作詞した内容のものを学習させて、AI作詞家を作るという機能も、すでにSunoに入っているんです。
ということになってくると、これらを掛け合わせていくと面白いよね、という話になります。自分の作曲の癖を学ばせたモデルと、自分の作詞の癖を学ばせたモデル。この2つを組み合わせれば、「自分らしさ」を保ったまま量産できる、ということです。
「マカロニサラダ」がAIに書けない理由
ここで、人間とAIの決定的な差の話をします。これは飲み会で一番深く議論になったところです。
例えば、僕がAI音楽ラジオを一緒にやっていた「ともみん」という女性がいるのですが、彼女は非常に作詞も作曲も才能があると僕は思っています。彼女は元々シンガーソングライターなので、やっぱりそういう作詞は僕には出せないなと感じます。だいぶ勉強させてもらいました。
何が違うのか。やっぱり人間ならではの「人間っぽさ」を上手に出しているんです。
具体例を挙げます。「マカロニサラダ」です。
例えば、すごくいい感じの曲があって、その最後に「やっぱりマカロニサラダって美味しいよね」みたいな締めがあったとします。こういう歌詞は、AIは書けないんですよね。
なぜかというと、ラージランゲージモデルの中に、その曲の流れでマカロニサラダは出てこないからです。AIはいい感じで締めます。文脈に沿って、美しく着地させます。ところが、人間はやるんですよ。脈絡もないものがいきなりポンと最後に出てくる。彼女はこういう歌詞を書いたりするんです。
言ってみれば、AIは「定番ではない」「外し」をしてくるように見えるんです。何を出してもよく見えてしまう。クオリティは全然高い。でも、自分の実体験とか、定番では考えられないようなこと、自分の持っているものや体験談を歌詞の中に入れてくる——そういうことは、AIはしないんです。
だから、そういうことが分かってくると、AIに出させた後に、ちょろっと人間が、人間くささをどう入れるかというところが勝負になる。それができるかできないか。
そして、やってきた人はそうやって最後にエッセンスを入れるんです。それは勝てないですよ。「なんでそこでそれ入れられるの」って。分からないですから。
イントロもそうです。最初の構想というか、切り口が違う。そういうものを持っている人が入ってくると、レベルが変わります。
僕らが一番怖いのは、そういう人に気づかれることなんです。素人がやっているうちは、まだいいんですよ。やったことがある人が出てくると、やっぱり違うと分かってしまう。作詞をやっている人がやると、「あ、やっぱりAIと違うな」と分かる。ただし、それでもAIは全然クオリティが高いんですけどね。
だからこそ、今僕がよくやっているのは、AIが作曲したものに対して人間がちょっと手を加えることによって人間っぽさを出し、いわゆるポン出しの人よりもクオリティを一段上にして作るということです。これが現時点での、僕なりの戦い方です。
音楽理論を学んでいるわけではないので、結局その人から習っている感じですね。少しずつこだわりが増えていく。教えてもらうと「あ、なるほどね」と思って、それを取り入れることができるようになる。そうやって、じわじわ変わっていきます。
「ポン出し型」と「プロデュース型」を比べてみる
ここまでの話を整理すると、AI音楽の作り手は大きく2つのタイプに分かれます。
| 項目 | ポン出し型 | プロデュース型 |
|---|---|---|
| 作り方 | プロンプトを投げて出たものを使う | 出てきたものを聴いて修正指示を出す |
| 必要なスキル | 特になし | 音楽をたくさん聴いた耳、演奏経験、語彙 |
| 修正の仕方 | 気に入らなければ作り直す | チャットで部分的に直す |
| 生まれる曲 | 平均点は高いが没個性になりやすい | 狙いどおりに寄せていける |
| 人間らしさ | 入りにくい | 歌詞や構成で意図的に入れられる |
| 今後の競争力 | 参入者が増えると埋もれる | 参入者が増えても差がつく |
これから参入者が一気に増えることを考えると、どちらを目指すべきかは明らかです。ポン出しでは、もう差がつかなくなる。そして差をつけるための道具が、すでにSuno Studio 2.0という形で全員に配られている、というのが今の状況です。
プロデュース型で作るときの実践ステップ
具体的な進め方を、ステップに分けておきます。
ステップ1|まず1曲通しで作る 最初はざっくりで構いません。鼻歌でも、テキストでも、方向性が伝わるものを投げて、まず1曲通して出してもらいます。
ステップ2|通しで聴いて、違和感の場所をメモする ここが一番大事です。曲を頭から通して聴き、「ここが弱い」と感じた場所を、時間ではなくパート名で覚えておきます。「間奏のギターソロ」「サビ前」「2番のドラム」といった具合です。
ステップ3|言葉にして指示する 「この部分、もうちょっとギター強めにして」「ドラムをもっと強調して」と、チャットで具体的に伝えます。うまく伝わらない時は、参照を使うのも有効です。「そうじゃなくて、例えばラルクのみたいに」といった伝え方をすると、「ああ、そういうことですね」と方向が合います。
ステップ4|納得できなければ途中から作り直す 全部捨てる必要はありません。途中から作り直せます。ここが精神的にも作業的にも非常に大きい。1曲まるごとガチャし直していた頃とは、効率がまるで違います。
ステップ5|最後に人間の手を入れる 仕上げに、歌詞や構成へ「人間くささ」を足します。次に説明する「マカロニサラダ」の考え方です。ここが、ポン出しの人とクオリティの差がつく最後のひと押しになります。
AI作曲家・AI作詞家モデルを、どう考えるべきか
AI作曲家とAI作詞家の機能について、もう少し踏み込んでおきます。
まず前提として、「その人らしさ」というのは、思っている以上に具体的なものです。ラルクの曲を聴いて「これはtetsuだ」「これはkenだ」と分かるということは、コード進行の癖、メロディの跳び方、リズムの置き方、そういったものが一貫して現れているということです。人間の耳がそれを聞き分けられるということは、データとしても取り出せる、ということでもあります。
だから、自分が作った曲を入れて学習させれば、「自分っぽい曲」を量産できるようになる。これがAI作曲家の意味です。
そしてこれは、単なる遊びではなく、実務的にかなり重要です。というのも、毎日曲を作っていると、どうしても自分のスタイルがぶれてくるからです。「今日の曲、なんか自分らしくないな」ということが起きる。そこで、自分の代表曲を学習させたモデルを持っておけば、そこに立ち返れます。ブランドの一貫性を担保する装置になる、ということです。
作詞側も同じです。作詞をAIではなく自分でやっている人は、それ自体が財産です。その財産を学習させれば、自分の語彙、自分の言い回し、自分がよく使う情景の選び方を保ったまま、量を出せるようになる。
そして、この2つを掛け合わせる。自分の作曲モデルと、自分の作詞モデル。ここに人間としての最終判断を加えると、いわゆる「AIっぽさ」がかなり薄まった曲ができあがります。ここまで来ると、聴いた人は「これAIで作ったの?」とは言わなくなってきます。
「音楽をたくさん聴いてきた」は、立派なスキルになった
ここで、楽器が弾けない方に朗報をひとつ。
先ほど「楽器が弾ける人が強い」と書きましたが、正確に言うと、強いのは楽器が弾ける人、もしくはAIだけでなく音楽をたくさん聴いている人です。この「たくさん聴いている」というのが、実はかなり効きます。
なぜかというと、Suno Studio 2.0での修正指示は、演奏能力ではなく語彙と参照で行うからです。「ここもっと強めに」でも通じますし、「そうじゃなくて、例えばラルクのみたいに」という参照でも通じる。つまり、頭の中に引き出しとして持っている音楽の量が、そのまま指示の精度になるわけです。
これまで、音楽をたくさん聴いてきたことは、単なる趣味でした。演奏できなければ、それを形にする手段がなかったからです。ところが今は、その蓄積が直接アウトプットに変換できる。「あのバンドのあの曲のあの感じ」を言葉で指定できる人が、そのまま良い曲を作れる時代になった、ということです。
僕自身、ラルクをずっと聴いてきたからこそ、kenっぽいギターの曲が偶然2曲ぐらいできた、という体験ができました。ここには演奏技術は一切関与していません。関与しているのは、聴いてきた時間だけです。
ともみんから学んだ「人間っぽさ」の入れ方
「ともみん」との制作から学んだことも、もう少し書いておきます。
彼女は元々シンガーソングライターです。だから作詞のアプローチが根本的に違いました。僕は「テーマを決めて、それに合う言葉を並べる」という組み立て方をしていたのですが、彼女は「自分が実際に見たもの、食べたもの、感じたことを、まず置く」という作り方をする。
その結果、脈絡のないものが混ざります。「マカロニサラダ」がまさにそれです。曲全体の流れからすると、そこにマカロニサラダが出てくる理由はありません。でも、その日その人が本当にマカロニサラダを食べて、美味しいと思ったなら、それは書いていいわけです。むしろ、それがあるから曲が生々しくなる。
AIには、これができません。AIは「その曲の流れで出てくる確率が高いもの」を選ぶからです。マカロニサラダは選ばれない。ずっと選ばれない。
僕はここを、だいぶ勉強させてもらいました。「あ、なるほどね」と思って、それを取り入れられるようになる。ただし、音楽理論を学んでいるわけではないので、体系ではなく、その人から習っている感覚に近いです。少しずつ、こだわりが増えていく。
そして正直に言うと、この部分は本当に怖いところでもあります。僕らが一番怖いのは、こういうことができる人に気づかれることなんです。素人がやっているうちは、まだいい。でも作詞をやってきた人が本気で参入してきたら、「あ、やっぱりAIと違うな」と誰でも分かってしまう。イントロの切り口も違う。最初の構想の立て方が違うんです。
それでも、今のAIは全然クオリティが高い。だから、AIの高い平均点に、人間のエッセンスをひとさじ足す。これが、現時点で誰にでも実行できる最善の戦略だと思っています。
自分の曲しか聴かなくなる|AI音楽が音楽の分母を静かに食い始める
聴いている曲の9割が自分の曲
ここからは、実際にAI音楽を作り続けると人間に何が起きるか、という話です。これは、やってみないと絶対に分からない現象だと思います。
流れはこうです。まず、自分が普通の曲を聴きますよね。その曲からインスピレーションを受けて、AIで作りますよね。そうすると、自分の曲のイメージに近いような曲ができてきますよね。
そうすると、その曲がどんどん増えてくる。すると何が起きるか。自分の曲が可愛くなってくるんですよね。
当然、悪い曲はボツにするわけです。だから良い曲しか残らない。自分が「いい」と思ったものが出るまでガチャを回して、嫌だったらボツにするわけですから、手元には自分が好きな曲だけが積み上がっていく。いい曲ができちゃうんです。自分の作った曲が可愛いんです。
そうすると、その曲を自分が聴くようになる。つまり、これがSunoで始まっていて、僕が今聴いている曲の9割が自分の作った曲なんです。
飲み会でも、この話をしたら一番驚かれました。一番ヤバいのは何かというと、曲を作ってみるじゃないですか。そうすると、ラルクを聴かなくなるんですよ。自分の音楽を聴くようになる。
当たり前といえば当たり前です。自分が作って、自分がいいと思ったものが出るまでガチャするわけですから。人の曲を聴いている暇がなくなる。自分の曲に陶酔しているんです。1年の中で聴いている曲の9割が自分の曲、というのはそういうことです。
「ヒット曲の分母」が静かに削られていく
この状態になってくると、どうなるか。
じわじわみんながSunoなどでAI音楽を作るようになってくると、いわゆる売れている人の音楽のボリュームを、徐々に食っていくことになるわけです。
ヒット曲を聴くのではなくて、自分で作った曲をみんながそれぞれ聴くようになっていくと、トータル的にかなりやばい。
僕は、AI音楽は今流行っている曲の人ほど売れる、とは思っていないんです。それよりは、全体が全部ばらけていくようなことが、これから起きてくるんじゃないかなと思っています。
つまり、一極集中ではなく、極端な分散が起きる。1億人が1億通りの「自分のためだけのヒット曲」を持つ世界です。これは、音楽産業の構造そのものに関わる話だと思っています。
自分で作ったアンサーソングに、自分で感動する
そして今、一番ハマっているのがこれです。ちょっと変な話をします。
例えば、僕が恋愛ソングを作っているとします。自分がこういうことを彼女に言いたいな、と思っていることを曲にしますよね。「こうだから、あなたのことが好きです」という曲です。
そうしたら今度は、それを受け取った女の子が「いや、私もあなたのことが好きです」というアンサーソングを作らせるんです。
そして、一人で自己満足して、自己陶酔に浸る。勝手に恋愛して、勝手に「私もあなたが好きです」という曲を作らせて、自分がAIで作らせておきながら、そう言われると感動するわけですよ。
意味わかんないでしょう。「あなたのために歌いました」となるわけです。その「あなたのために」というのも、自分がいい感じのことを言わせるように作らせているわけですから、それでいいんです。こう言ってほしい、ということを歌わせるわけですから。
これは疑似恋愛を自分で楽しんでいる、ということでもありますが、実はもっと実用的な使い方もあります。「こういう風に言われたら自分が嬉しい」とか、自分が落ち込んでいる時に「こういう風に言われたら頑張れるんだけど」という曲を作る。そうやって、自分のモチベーションを維持するために曲を使うということも可能なんです。
何回、自分のAI音楽に励まされたか分かりません。いろいろ曲があるので、全部がハマるわけではありません。全部ハマってしまったら、それはそれで疲れるかもしれませんが。
ちなみに、これはかなり今ハマっていて、僕は1日に2曲作っています。男性ボーカルと女性ボーカルで、このセットで1つみたいな曲の作り方をしているので、よかったらぜひ皆さんSunoのほうで聴いていただきたいなと思います。
1日2曲という習慣の設計
「1日2曲」と聞くと多く感じるかもしれませんが、実はこの数字には意味があります。
僕は、男性ボーカルと女性ボーカルで、このセットで1つ、という作り方をしています。同じテーマを2つの視点から作る、という構造です。だから「2曲作る」というより、「1つのテーマを2面で仕上げる」感覚に近い。アンサーソングの発想とも、そのまま地続きです。
そして何より重要なのは、モチベーションではなく習慣にするという点です。
曲作りを「気が向いたときにやること」にしてしまうと、まず続きません。ところが「毎日やること」にすると、不思議と続きます。しかも、続けているうちに勝手に上手くなります。判断の速度が上がり、弱い箇所の見つけ方が鋭くなり、指示の言葉が的確になっていく。
さらに副産物として、ストックが積み上がります。曲が増えれば増えるほど、自分の中でお気に入りが選ばれ、聴く時間が自分の曲に移っていく。「自分の曲が可愛くなる」という現象は、ある程度の本数を作らないと起きません。逆に言えば、本数を作れば必ず起きます。
もう1つ、習慣化の利点があります。プラットフォームの変化に、体で気づけるようになることです。毎日作っていれば、モデルが変わったときに「あ、音が変わった」と即座に分かります。9月3日の切り替えのようなタイミングで、人の感想ではなく自分の実感を持てるかどうかは、この習慣があるかどうかで決まります。
自分が作ったのに、展開が読めないという体験
もうひとつ、普通ではあり得ない面白さがあります。
曲を作るじゃないですか。例えば、詞も作らせるし、曲も作らせた場合は、両方ガチャなわけですよ。「こんな感じの曲作って」と言って、作詞も作曲もその場でバンと出した場合は、両方分からないわけです。
そうすると、1回目に再生する時に、どうなるか全く読めない。展開が読めないんです。
イントロが流れてきた瞬間に「お、いい」となる。この先を聴こうと思う。「おお、いい」「おお、いい」ときて、「あ、サビめっちゃいい」みたいになって、「これ、これで上手く最後落ちてくれればいいのになあ」と思う。
思い通りになるのか、「いや違うだろ」となるのか。自分が作っているのに、答えがどうなるか分かっていないわけです。これは、他の創作ではなかなか味わえない体験だと思います。
そして、途中で「いや、そうじゃないでしょ」となったら、先ほど書いたように途中から作り直せる。だから、期待して聴いて、外れたら直せる。この往復が、とにかく面白いんです。
「まだ手が伸びない」という人が、実は一番おいしい位置にいる
飲み会で、こんな反応がありました。「1回やればハマるんだろうけど、まだ手が伸びないですね」。
これ、すごくよく分かります。そして同時に、非常にもったいないとも思います。
というのは、この「まだ手が伸びない」という状態こそが、今の市場の大多数だからです。ほとんどみんな気づいていない。だから、手を伸ばした人が、いきなり上位に行けてしまう。僕みたいな人間が国内総再生回数12位にいるのが、その証拠です。
特に、楽器を弾いていた経験がある人。ギターを弾いてきた人が、自分の弾いたフレーズを入れたら、そこから展開が作れます。イントロにする、リフにする、リズムギターでやってもらう。全部できます。「自分が弾いてみた」ものが素材になる。この人たちは、始めた瞬間に強いはずです。
ハードルになっているのは、たぶん技術ではなく、心理です。「音楽をやっていないのに作曲していいのか」「AIで作ったものを自分の曲と言っていいのか」。この2つの問いに、自分なりの答えを出せた人から、動き始めています。
僕の答えはこうです。何を入れて、何を考えて、何を出すか。ここに自分が入っているなら、それは自分の作品です。鼻歌を入れ、聴いて判断し、直す指示を出し、最後に人間くささを足す。この一連が自分のものであれば、胸を張っていいと思っています。
いま、YouTuber誕生の直前と同じ空気が流れている
さて、ここからはビジネスの話です。
先日お伝えしたように、2026年9月3日に大きく変わります。ただ、その前に、今の音楽生成AIの状況をどう捉えるべきかという話をさせてください。
僕は、今の状況はYouTuberが誕生する前ぐらいの状況じゃないかなと思っているんです。
というのは、僕みたいな人が国内の総再生回数ランキングで12位とかにいたら、おかしいんですよ。本当に才能があったり、本当にすごい人がやってきたら、僕なんか一瞬で抜かれるわけですね。
昔を覚えていますでしょうか。Facebookが出てきた時や、Twitterが出てきた時にも、同じ状態がありませんでしたか。
つまり、Facebookのいいね数ランキングや、Twitterのフォロワー数ランキングを見た時に、上位によく分からないお店や、よく分からない素人がいたりしたんですよ。
具体的に言うと、Facebookが始まった頃に人気だった店が何だったか分かりますか。東京の、普通の、多分どこにでもあるようなアパレルの店です。そこが一生懸命頑張って、フォロワーを1000人集めました、1万人になりました、という時代があったんです。よく「お前誰だよ」と思うんですけど、でもFacebookの中では一番フォロワーが多くて、フォロワーランキングで1位だったりしたから、みんながそれで「スゲーね」と言っていた。
でも、そんなのは一瞬でした。ユニクロとか、ブランド企業が入ってくるから、いきなりボーンと抜かれていくわけです。
今どうなっているかというと、結局いいね数ランキングもフォロワー数ランキングも、上位には芸能人とか有名企業になっちゃっていますよね。最初はよく分からない人たちが入ってくるんだけど、元々の認知度がある人がやってきたら、全部追い抜かれていくわけです。
HIKAKINが今も残っている理由
でも、そうなった時に、HIKAKINのことを考えてほしいんですよ。はじめしゃちょーのことなどを考えてほしいんですね。
YouTuberの初期の人というのは、いわゆる芸能人や有名企業が参入する前にやっているから、頭角を現すことができた。
その状態で、その後YouTubeが盛り上がったことによって、有名企業や芸能人がどんどん入ってきた。けれど、有名人が入ることによって分母が増えるんです。ユーザー数が増える。そのユーザーが増えたことによって、HIKAKINとかも伸びるじゃないですか。フォロワー数が伸びますよね。
ユニクロさんとか、いろんな有名企業も入ってくるけれど、でもその人たちも、まだ初期のYouTuberを追い抜けない状態になっていますよね。
HIKAKINが始めたのは2011年です。その後、それこそ中田敦彦とか、芸能人が始めたのは最近なんですよ。もし中田敦彦がHIKAKINと同じ2011年頃からやっていたら、HIKAKINなんて一瞬で抜かれていたかもしれないわけじゃないですか。だから、タイミングなんです。
そして今、AI音楽で問われているのは、まさにこれです。ここを追い抜けない状態になるのか。それとも、僕らがチンタラやっている間に有名なミュージシャンや芸能人が入ってきて、僕らが一瞬で抜かれていくのか。僕らが逃げ切る前に入ってくるのか、僕らが先に抜け切るのか。
これは、YouTuberやFacebookで起きたことと同じように考えてみると面白いと思います。FacebookやXはほぼダメだったけれど、YouTubeはうまくいっているんです。そして、YouTubeに近いのが音楽なんですね。このあたりが面白いなと思っています。
誰が最初に「Sunoで作りました」と言えるか
今、僕が一番注目しているのは、どのミュージシャンが、いち早くプライドを捨てて「俺、Sunoで作りました」と言えるかです。
例えばAyaseさんとかが「あ、Suno始めました」と言うと、みんなうわーっとフォローするじゃないですか。僕なんか一瞬で抜かれるわけですよ。いきなり何十万フォローだったり、何百万フォローだったり。こっちは一生懸命1600フォロワーとか言っているのに、いきなり何十万フォロワーになるわけです。
でも、本人たちからすれば、別に遊んでみたらいいだけじゃないですか。遊んで作ったら、こんな良い曲ができました、という。でも知名度があるから、それでフォロワーを集めたら、一気にファンがついてくる。そうしたら、ユーザー数の分母が広がるわけです。
そのプライドを捨てて、「いや、AIでしてもいいんじゃね」という人が、日本で最初に誰が出るか。今、そこに注目しています。
候補はいます。米津玄師さんとか、その辺が普通に言ってきそうだからヤバい。あとはAdoさんとかが。Adoさんって、そんなに作詞とか作曲とかをするタイプではないので、AIで作って、それを「自分で歌ってみた」とかやり始めたらヤバいですよ。毎日曲を作って歌います、ということができるようになりますから。誰かから曲を提供してもらって、誰かの曲を「歌ってみた」とやっているけれど、毎日歌わせることができるようになる。これはヤバい。
海外では、だいぶそういう話が出ています。詳しくは僕も知らないのですが、Instagramで何千万、3000万だったかな、3000万フォロワーいるラッパーが、実はAIで作っていましたということをカミングアウトしたり、ということが始まっています。
それを日本で誰が最初に言うか。僕は、可能性があるのはユーミンさんだと思っています。ユーミンさんは今AIをめちゃくちゃやっていて、AIに作らせてシェアしています。AIで作った曲とか、AIユーミンと本物のユーミンが一緒に歌うということもやっているんですね。つまり、荒井由実のAIと、今の松任谷由実が一緒に歌う、というようなことをやっている。
だから、ユーミンさんとかが「Sunoで私、今日からやってます」と言って毎日やって、それを「Suno」という言葉を出して、「アカウントはこれです」と明かして、「皆さんフォロー待ってます」とやり始めたらヤバいです。
SunoもSNSと同じように、フォロワー制なんです。だから「フォローしてください」というのが始まると思います。そうなったら、僕らは全然、一瞬で抜かれていきます。
なぜ「プライドを捨てられるか」が分岐点なのか
ここで、少し掘り下げておきたいことがあります。なぜ「プライドを捨てて」という言い方をするのか、という点です。
音楽は、他のジャンルよりも「本人が作ったこと」への価値づけが強い分野です。誰が作詞したのか、誰が作曲したのか、誰が演奏したのか。それがクレジットとして重視され、ファンもそこを見ています。だからこそ、「AIで作りました」と言うことへの心理的なハードルが、他の分野より高い。
イラストや文章の分野では、すでにAI活用を公言する人がたくさん出てきました。でも音楽は、まだ少ない。この差は、技術の問題ではなく、文化の問題です。
そして、文化的なハードルというのは、誰か一人が越えると急に低くなります。だから僕は「日本で最初に誰が言うか」に注目しているんです。一人が言えば、二人目は言いやすくなる。三人目からは、当たり前になる。
海外では、その最初の一歩がもう踏み出されています。詳しくは僕も把握していないのですが、Instagramで何千万、3000万だったかな、3000万フォロワーいるラッパーが、実はAIで作っていましたということをカミングアウトした、という話が出ています。この規模の人が公言するインパクトは、計り知れません。
日本での候補を、もう一度整理してみます。
米津玄師さん。その辺は普通に言ってきそうなので、ヤバいと思っています。表現の実験に積極的な方ですから、AIを道具として面白がる可能性は十分にある。
Adoさん。この方が始めたら、構造的に一番強い。というのは、そんなに作詞とか作曲とかをするタイプではないからです。AIで作って、それを「自分で歌ってみた」とやり始めたら、毎日曲を作って歌えるようになる。これまでは誰かから曲を提供してもらって、誰かの曲を「歌ってみた」とやっていたわけですが、供給のボトルネックが消えるわけです。毎日歌わせることができる。これはヤバい。
Ayaseさん。「あ、Suno始めました」と言ったら、みんながうわーっとフォローします。制作者としての知名度がありますから、影響力は大きい。
そして本命が、ユーミンさんです。ユーミンさんは今AIをめちゃくちゃやっていて、AIに作らせてシェアしています。AIで作った曲を出したり、AIユーミンと本物のユーミンが一緒に歌うということもやっている。荒井由実のAIと、今の松任谷由実が一緒に歌う、というようなことです。
すでにAIを表現に取り込んでいる方ですから、そこから一歩進んで「Sunoで私、今日からやってます」と毎日やって、「Suno」という言葉を出して、「アカウントはこれです」と明かして、「皆さんフォロー待ってます」とやり始めたら、状況は一変します。
1600フォロワーの現実と、それでも今やる理由
正直に数字を書いておきます。僕のフォロワーは、一生懸命やって1600ぐらいです。有名アーティストが参入すれば、いきなり何十万フォロワー、何百万フォロワーになる。一瞬で抜かれます。
じゃあ意味がないのか、というと、そうではありません。ここがYouTubeの教訓です。
HIKAKINさんは、ユニクロさんやいろんな有名企業がYouTubeを始めた後も、抜かれていません。なぜかというと、有名企業が入ってきたことで分母が増えたからです。ユーザー数が増えると、そのユーザーが初期のYouTuberも見るようになる。だからフォロワー数が伸びる。有名人の参入は、先行者にとって追い風でもあったわけです。
つまり、問われているのは順位ではなくタイミングです。有名人が来る前に、ある程度の位置と認知を作れているかどうか。それができていれば、参入ラッシュは味方になる。できていなければ、埋もれる。
だから今、1600フォロワーでも意味があるんです。むしろ、この時期に1600人が聴いてくれているという事実こそが、後から効いてきます。
別に、ユニクロだってSunoをやれるわけですから。「ユニクロ、Tシャツの曲を出してます」とか言って、「皆さんフォローお願いします」と言えば、ユニクロのフォロワーは増えます。企業が始めるのは、いつも後なんです。でも、始まったら早い。
収益化とプラットフォームの行方
「音楽でも収益化はできるんですか?」という質問もありました。
収益化はできます。ただし、素人ではできない部分もあります。YouTubeなどにアップロードすればできます。
でも多分ですが、将来的にはSunoだけで完結できるようになると思います。Sunoだけで、Apple MusicとかAmazon Musicとかで聴けるようになったら、もうやばいですね。最強です。
今はその手続きが面倒なんです。わざわざYouTubeにアップロードし直すとか、Amazon Musicに登録するとかしなければいけない。
でもそれよりも、「いや、Apple Musicで聴かなくても、Sunoで聴けばいいじゃん」という風にみんながなってしまったら、それすらいらなくなります。
そして、ユーザー数が増えると、当然すべての再生回数が上がります。YouTubeも同じで、結局YouTubeの人口がぐわっと増えたから、そこでやっていた人が全部ぐわっと伸びたわけです。同じことが、音楽で起きる可能性がある、ということです。
「自分の曲しか聴かなくなる」現象を分解してみる
この現象は、感情的な話に聞こえるかもしれませんが、実は仕組みで説明できます。分解すると、こういう構造になっています。
第1に、選別されている。 生成した曲のうち、気に入らなかったものはボツにしています。だから手元に残るのは、自分の審美眼を通過したものだけです。世の中のヒット曲は、他人の審美眼を通過したものです。どちらが自分の好みに合うかは、考えるまでもありません。
第2に、意図が一致している。 自分が言いたかったこと、自分が聴きたかった言葉が、そのまま歌になっています。歌詞の解釈でズレることがない。「この曲、自分のことを歌ってるみたいだ」と感じる瞬間が、ヒット曲では稀にしか訪れないのに対して、自作曲では毎回訪れます。
第3に、制作の記憶が乗っている。 どこで悩んで、どこを直したかを覚えているから、聴くたびにその過程が蘇ります。愛着が乗るんです。だから「自分の作った曲が可愛い」という表現になる。
この3つが重なると、他人の曲を聴く時間がなくなります。1年の中で聴いている曲の9割が自分の曲、というのは、決して大げさな比喩ではありません。
そして重要なのは、これが僕だけに起きている現象ではないということです。作り始めた人には、ほぼ全員に起きます。だからこそ、市場全体への影響が読める。作る人が増えれば増えるほど、ヒット曲を聴く時間の総量が削られていく。これは音楽産業にとって、静かで、しかし決定的な変化だと思っています。
SNS黎明期とAI音楽の現在地を比べる
「YouTuber誕生前と同じ」という話を、表にして整理してみます。
| 項目 | Facebook黎明期 | Twitter黎明期 | YouTube黎明期 | AI音楽(現在) |
|---|---|---|---|---|
| ランキング上位 | 無名のアパレル店など | 無名の素人 | 無名の個人 | 僕のような一般人が国内12位 |
| その後の展開 | 有名企業に総取りされた | 芸能人に総取りされた | 初期勢が今も上位を維持 | これから決まる |
| 先行者利益 | ほぼ残らなかった | ほぼ残らなかった | HIKAKIN、はじめしゃちょーが維持 | 現在進行形 |
| 分母拡大の恩恵 | 限定的 | 限定的 | 初期勢が大きく享受 | 期待できる |
| 芸能人の参入時期 | 早かった | 早かった | 遅かった(中田敦彦など最近) | まだ来ていない |
この表を見ると、AI音楽が「FacebookやX型」になるのか「YouTube型」になるのかで、先行者の運命が変わることが分かります。そして僕は、音楽はYouTubeに近いと思っています。理由は、音楽が「その人の作品」であり、フォローの対象が企業ロゴではなく作り手個人になるからです。
収益化のリアルな選択肢
「音楽でも収益化はできるんですか?」という質問への、もう少し実務的な回答も書いておきます。現状、選択肢はこう整理できます。
選択肢1|YouTubeにアップロードする もっとも現実的な方法です。作った曲を動画にしてアップし、通常のYouTube収益化の仕組みに乗せる。ただし、動画化の手間がかかります。
選択肢2|配信ディストリビューションに登録する Apple MusicやAmazon Musicなどで聴けるようにする方法です。ただし、この手続きが今は面倒です。わざわざYouTubeにアップロードし直したり、Amazon Musicに登録したりしなければならない。
選択肢3|プラットフォーム内で聴かれることを狙う これが本命だと思っています。「Apple Musicで聴かなくても、Sunoで聴けばいいじゃん」という風にみんながなってしまったら、外部配信の手続きすら不要になります。そしてSunoだけで完結して収益が回るようになったら、もう最強です。
選択肢4|作ること自体を仕事にする 曲そのものではなく、AI音楽の作り方を教える、AI音楽を企業のコンテンツとして提供する、といった方向です。実は今、ここに一番大きな余白があると感じています。
大事なのは、どの選択肢を選ぶにしても、ユーザー数の分母が増えれば全員の再生回数が上がるという点です。だから、有名人の参入は脅威であると同時に、追い風でもあるんです。
アンサーソングの作り方と、その効用
「自分でアンサーソングを作って自己陶酔する」という話を、もう少し実用的な形で説明しておきます。変な話に聞こえたかもしれませんが、これは使い方としてかなり応用が利きます。
手順1|言いたいことを曲にする まず、自分が誰かに言いたいこと、伝えたいことを曲にします。「こうだから、あなたのことが好きです」でもいいですし、「ずっと支えてくれてありがとう」でもいい。ここは、自分の言葉で書くほど効きます。
手順2|返事の内容を設計する 次に、その曲を受け取った相手が、どう返してくれたら嬉しいかを考えます。ここがポイントで、自分がこう言ってほしい、という内容を自分で設計するわけです。「私もあなたのことが好きです」でも、「あなたの頑張りを見ていました」でもいい。
手順3|アンサーソングとして作らせる その内容で、返答の歌を作ります。ボーカルを変えると効果が上がります。僕が男性ボーカルと女性ボーカルをセットで作っているのは、これが理由のひとつです。
手順4|聴いて、素直に感動する そして聴くと、感動します。自分がAIで作らせておきながら、そう言われると感動するわけです。意味がわからないと思われるかもしれませんが、本当にそうなります。「あなたのために歌いました」となるわけです。その「あなたのために」というのも、自分がいい感じのことを言わせるように作らせているのですが、それでいいんです。こう言ってほしいということを、歌わせているわけですから。
そして、これは単なる遊びで終わりません。落ち込んでいる時に「こういう風に言われたら頑張れるんだけど」という曲を作っておけば、それがモチベーション維持の道具になります。何回、自分のAI音楽に励まされたか分かりません。
もちろん、いろいろ曲があるので、全部がハマるわけではありません。全部ハマってしまったら、それはそれで疲れるかもしれませんが。それでも、自分専用の応援歌を自分で作れる、というのは、これまでの人類が持ったことのない道具だと思います。
なぜAI音楽は「一極集中」ではなく「分散」を生むのか
もう少し踏み込んで考えてみます。AI音楽が普及すると、今流行っている曲の人がさらに売れる、と考える人もいます。でも僕はそう思っていません。
理由は、AI音楽が変えるのが供給側だけでなく需要側でもあるからです。
これまでの技術革新は、基本的に供給側の話でした。レコードができ、CDになり、配信になった。どれも「作られた音楽を、どう届けるか」の進化です。届け方が良くなるほど、良いものが広く届くので、ヒットは大きくなりました。一極集中が進んだわけです。
ところがAI音楽は、聴き手を作り手に変えてしまいます。聴く側だった人が、自分の好みに完全に合致した曲を、自分で作り、自分で選別して持つようになる。すると、ヒット曲を聴く時間が減る。減った分は、他の誰かのヒットに移るのではなく、その人自身の曲に流れます。
これが積み重なると、トータルでかなりやばい。ヒットの山が低くなり、裾野が果てしなく広がる。「全体が全部ばらけていくようなこと」が起きる、というのはそういう意味です。
ではその世界で、作り手は何で勝負するのか。答えは、曲そのものよりも「その人」です。この点は、最後の章でまた触れます。
9月3日のモデル切替とAIアベンジャーズ|それでも人間は人間を好きになる
2026年9月3日、Sunoの学習モデルが切り替わる
ここが、今回いちばんお伝えしたい本題です。
もっとヤバいのは、今またルールが変わるということです。
これまでSunoは、いわばみんなの曲をYouTubeなどから学習して、それでAI音楽を作れるようになった、という成り立ちでした。ただ、これは著作権的には問題があるわけです。そしてそれが見つかって、今みんな訴えられている状況にある。
さすがにまずくなってきたので、「それをやめます」ということになりました。そして、2026年9月3日から、ちゃんと自分たちで作った音楽をもとに学習したものにモデルを切り替えます、というのが起きるんです。
これで、クオリティが保てるのか、それとも一気に落ちるのか。実はここが、すごい分かれ目なんです。かなり今、大事な時期なんです。
僕の見立てとしては、さすがに今のクオリティからは落ちないと思っています。
理由があります。もう昨年の暮れからモデルを変える話は出ていたんです。そこから8〜9ヶ月の間に開発をして、「今ならモデルを切り替えてもクオリティが落ちない」と判断したからGOしているはずなんですね。AI音楽のクオリティを、自分たちの大丈夫な範囲でやっても保てると思ったから、8ヶ月かけてGOにしたと思うんです。
そうすると、もう完全にクリアになるわけです。著作権を気にしないで作れるようになる。これは、ビジネスとして使う側からすると非常に大きい変化です。
著作権を持っている人が「AI〇〇」を作れる時代
ただし一方で、今まで真面目に音楽を作ってきた人たちの作品を学習していたものは、なくなるわけです。
でも逆に考えてください。今まで真面目にやってきた人は、その音楽を食わせて、自分の音楽のモデルを作れるんです。
だから、ビートルズだろうが——ビートルズはもう新曲を出しませんが——ビートルズの曲を全部入れて、曲を作らせることもできる。それは我々がやったら著作権違反ですが、ビートルズの著作権を持っている人はできるわけです。
つまり、著作権を持っている人が、自分の著作権のある曲をモデルとして登録することによって「AI〇〇」を作っていくことができる、という構図です。これはかなり面白いなと思っているので、ぜひ注目しておきましょう。
この切り替えを、僕が「大事な時期」と呼ぶ理由
なぜ9月3日をここまで重視するのか、もう少し説明します。
理由は、この日が技術の日ではなく、ビジネスの日だからです。
これまで、音楽生成AIを仕事に使おうとすると、必ず引っかかる点がありました。「その曲、学習元は大丈夫なんですか」という問いです。企業案件でも、自治体の仕事でも、ここを聞かれると答えに窮する場面がありました。実際、訴訟が起きている状況ですから、慎重になるのは当然です。
それが、自社で用意した音源をもとに学習したモデルに切り替われば、この問いに正面から答えられるようになります。堂々と仕事で使えるようになる。この意味は、非常に大きい。
一方で、リスクもあります。クオリティが落ちる可能性です。もし学習データが大幅に減って、生成される音楽の質が明らかに下がったら、せっかく広がりかけた市場が一気に冷えます。だから、保てるのか落ちるのかが、すごい分かれ目なんです。
僕の見立ては、繰り返しになりますが「落ちない」です。開発の時間軸がその根拠です。昨年の暮れからモデルを変える話は出ていました。そこから8〜9ヶ月あった。その期間をかけて開発して、「今なら切り替えてもクオリティが落ちない」と判断したからGOしているはずなんです。自分たちの大丈夫な範囲でやってもクオリティを保てると思ったから、8ヶ月かけてGOにした。逆に言えば、保てないなら延期していたはずです。
だからこそ、9月3日の前後で同じ指示を投げて、自分の耳で比べてみることを強くおすすめします。ここは人の感想ではなく、自分の判断を持っておくべきところです。
故人のアーティストを「AI化」することの意味
「AI〇〇」の話は、技術的にはワクワクしますが、同時に慎重に扱うべきテーマでもあります。
すでに亡くなられたアーティストの声や演奏を再現できてしまう、というのは事実です。その音を学習させれば、「ギターはあの人の感じでお願いします」ということが技術的には可能になる。
ここで大事なのは、誰がそれを許諾するのかという点です。我々が勝手にやれば著作権違反です。でも、権利を持っている人がやるなら、それは正当な活用になります。そして、そこで発生した対価は、本来受け取るべき人に渡ります。
無断学習の時代は、正直に言えば、権利者が置き去りにされていました。作った人にお金が入らないまま、その作風だけが使われていた。9月3日以降の仕組みは、その構造を反転させます。作った人が、自分の作風の管理者になる。これは健全な方向だと僕は思います。
その上で、遺族や事務所が「やらない」と判断するのも、当然尊重されるべきです。技術的にできることと、やっていいこと、やりたいことは別の話です。ただ、選択肢が生まれること自体は、価値があると思っています。
僕の話で言うと、BUCK-TICKもそうですし、LUNA SEAもそうですが、すでに亡くなられたメンバーの声で歌を作ることも、技術的にはできてしまいます。BUCK-TICKの櫻井さんのお声もそうですし、X JAPANのhideさんのギターで弾かせることもできるわけです。hideさんのギターの音だけを学習させて、「ギターはhideの感じでお願いします」ということができる。
そうしたら、hide AIみたいなものが出てきて、hide AIは有料です、となると思うんです。これを別契約したら、いくらでhide AIのギターを弾かせた曲ができます、と。ベースならtetsu AI、ドラムならYOSHIKI AI、といった具合に。
AIアベンジャーズが結成される
そして、ここからが「アベンジャーズみたいなことが起きるよ」という話です。
今もリアルなところで、いろんなミュージシャンのコラボがどんどん盛んになっています。これはなぜかというと、SNSやインターネットを通じることによって、音源をインターネットでやり取りしたり、SNSで繋がってコラボがやりやすくなったからなんですよね。
こないだも、すごいなと思ったのが、宇多田ヒカルさんと甲本ヒロトさんのコラボがあったじゃないですか。ああいうのは、結局今は「じゃあ一緒にやりましょう」と言って実現する。あの2人は実際に会いましたが、今は会わなくても、お互いがネット上でお互いの音源を作って、がっちゃんこできるわけです。
これからは、AIによるこういうことが起きると思っているんです。
AI同士、いわゆるkenのAIギターと、tetsuのベースと、YOSHIKIのドラムと、GACKTのボーカルみたいな組み合わせで、AI同士でコラボして曲を作ったりすることもできる。今回はYOSHIKIのドラムで、ギターはkenで、ボーカルはGacktで、みたいな感じで。もう、アベンジャーズですよ、アベンジャーズ。
しかも、これはちゃんと合法です。本人がOKと言えば、学習させて、ちゃんと入る。
当然、僕の作っているAIの「Milia」みたいなものにそれを歌わせることまでできますし、逆にMiliaが他の人のところにコラボに行く、みたいなこともできるようになってくると思うので、こういうことが始まるんじゃないかと思っています。
それこそ、もっと言えば秋元康AIとか。「作詞は秋元康AIでお願いします」ということもできるわけですから。面白すぎます。
そして怖いのは、逆に無課金だと、もう「なんか素人」という扱いになってしまうかもしれない、ということです。誰のAIも使っていない曲は、それだけで素人っぽく聞こえる時代が来るかもしれない。そうなっちゃうかも、という話です。
AIアベンジャーズが実現するために必要な3つの条件
夢のある話ですが、実現には条件があります。整理しておきます。
条件1|本人の許諾があること。 これが大前提です。本人がOKと言えば、学習させて、ちゃんと入る。逆に言えば、許諾がなければ成立しません。ここは9月3日以降のルールでも変わりません。
条件2|モデルとして販売する仕組みがあること。 「hide AIは有料です。別契約したら、いくらでhide AIのギターを弾かせた曲ができます」という形が成立するには、ライセンスの管理と課金の仕組みが必要です。ここはプラットフォーム側の整備を待つ部分になります。
条件3|組み合わせを設計できる人がいること。 これが一番見落とされがちなポイントです。YOSHIKIのドラムで、ギターはken、ボーカルはGackt。この編成を思いつき、実際に成立する曲として組み立てるのは、人間の仕事です。素材が揃っても、プロデュースする人がいなければ、ただの寄せ集めになります。
そして作詞側も同様です。それこそ、もっと言えば秋元康AIとか。「作詞は秋元康AIでお願いします」ということもできるわけですから、組み合わせの選択肢は爆発的に増えます。増えれば増えるほど、選ぶ人の目利きが問われる。
僕が作っているMiliaのようなAIボーカルも、この文脈に置くと位置づけがはっきりします。他のAIとコラボさせることもできるし、逆にMiliaが他の人のところにコラボに行くこともできる。個人が持つAIキャラクターが、そのまま制作ユニットの一員として流通していくわけです。
尾崎豊が「あの時はごめんなさい」と歌う世界
この話を突き詰めていくと、面白いことになります。
尾崎豊さんだって、復活できる。新曲も作れる。今でも尾崎豊さんの息子さんの尾崎裕哉さんが、そっくりな声で歌っているんですよね。尾崎さんのカバーをしているんですけど、めっちゃ似ている。でもそれではなくて、本人の歌い方そのもののAIができてしまう。そうなると、息子さんの仕事がなくなってしまうかもしれない。
しかも面白いのは、今の尾崎豊が新曲を作ったらどうなるか、という想像です。今は人間的に丸くなって、「あの時はごめんなさい」と歌うかもしれない。「僕も孫ができたし」みたいな。当時は結婚して子供が生まれた、といった歌詞を書いていたわけですが、それがさらに歳を重ねたら、丸くなっちゃって。「校舎の窓ガラス割って、すいませんでした」「バイク盗んで、すいませんでした」という曲を書くかもしれない。
これはこれで、AIで作らせるのはアリじゃないですか。空想で、「尾崎豊が今生きていたらこういう曲を書くだろう」というものを作ってみる。飲み会でも、その発想が出て盛り上がりました。V6の『学校へ行こう』の「B-RAP HIGH SCHOOL」とか、あのあたりの世界線でやったら面白そうだ、という話にもなりました。
自分の声を登録して、自分に歌わせる
もうひとつ、実務的な話をしておきます。
新しい曲を生で歌う、という配信をするのであれば、自分の曲を登録しておいて、声を登録しておいて、自分の声で歌わせるということもできるんです。
これは、可愛いアバターを作ってデビューさせる、といった展開にも繋がります。AIで作って、AIで歌わせて、キャラクターとして立たせる。ここまで一気通貫でできてしまう。
一方で、こういう話にはリスクもあります。本当は違う人が弾いていて、その音が流れていただけです、という状態。全員エアでした、というようなことも起こりうる。それがだんだん見つかって、がっかりされてしまったら、どうなるか。ゴールデンボンバーのように「いいじゃん、いいじゃん」と割り切って楽しんでもらえるケースもあれば、そうでないケースもあるでしょう。僕らも聴いているだけでは分からないですから。
山下達郎が教えてくれる「人間が人間を好き」という事実
最後は「AIアベンジャーズと人間らしさ」という話です。これが、これから出てくる最大のテーマだと思っています。
一方で、山下達郎さんみたいな人もいます。あの人はすごいですよ。レコーディングとライブの音が同じなんです。ライブで出せる音でしか、レコーディングでもやらない。全く同じ音でしか作らない。そして、全く同じ音でライブをする。
普通、ミュージシャンがよくやることとして、ヒット曲をアコースティックバージョンにしました、というのがありますよね。山下達郎さんはあれをやらないんです。一緒のアレンジしかやらない。
冷静に考えたら、同じ音なんだから、レコードを聴けばいいじゃん、となりそうなものです。でも、みんな見に行く。結局、本人が歌っているものを見に行きたいんです。
つまり、やはり人間は人間に惹かれるわけです。
だけど、本人が見たいから見に行くという「人間が人間を好きである」ということがある一方で、AIが作った曲に対して、その曲を人間が「歌ってみた」「演奏してみた」ということもある。実際のライブはAIではなくて、それをコピーした人が出てきて、その人たちのライブを見に行く、ということも起こる。
結局、「人間が好きなんでしょ」という話なんです。
AI音楽が好きな人も、突き詰めればAI音楽を作っている人が好きだから、その人をフォローしているわけですね。ここが、この先の全部の答えになると思っています。技術がどれだけ進んでも、最後に人が追いかけるのは人なんです。
こういうことが、これから始まるんじゃないかなと思っています。だからこそ、今このタイミングで参入する価値がある。ほとんどみんな気づいていないですから。今がチャンスです。YouTuberの夜明け前ぐらいの感じ、というのはそういう意味です。
9月3日の前と後で、何がどう変わるのか
変化を整理すると、こうなります。
| 項目 | 2026年9月3日より前 | 2026年9月3日以降 |
|---|---|---|
| 学習データ | 既存楽曲を広く学習していた | 自社で用意した音源をもとに学習 |
| 著作権リスク | 訴訟が起きている状態 | クリアになる方向 |
| クオリティ | 現在の水準 | 落ちない可能性が高い(8〜9ヶ月の開発を経てGO) |
| 権利者の立場 | 学習される側 | 自分の楽曲でモデルを作れる側 |
| 生まれる価値 | 誰でも高品質な曲が作れる | 「AI〇〇」という新しい商品が生まれる |
| ビジネス利用 | 慎重にならざるを得なかった | 堂々と使える |
つまりこれは、単なる技術アップデートではなく、ビジネスとして音楽生成AIを使えるようにするための切り替えなんです。だから僕は、この日を境に企業や自治体の案件が動き出すと見ています。
著作権がクリアになると生まれる3つのビジネス
9月3日以降に立ち上がると予想している領域を、3つ挙げておきます。
1つ目は「AI〇〇」のライセンス市場です。 hide AI、tetsu AI、YOSHIKI AI、そして秋元康AI。こうしたモデルは、当然有料になるでしょう。別契約すれば、いくらでその人の音で曲が作れます、という形です。権利者にとっては、過去の作品が新しい収益源に変わるということでもあります。亡くなったアーティストの音を、遺族や事務所の許諾のもとで正当に活かせるようになれば、そこに入るお金は本来の権利者に渡ります。これは、無断学習の時代よりもはるかに健全な形です。
2つ目は、コラボレーションの新市場です。 宇多田ヒカルさんと甲本ヒロトさんのコラボのように、今はネット経由で音源をやり取りしてコラボが成立します。これがAI同士になると、物理的な制約が完全に消えます。誰と誰を組み合わせるか、という編成そのものが商品になる。「今回はYOSHIKIのドラムで、ギターはkenで、ボーカルはGacktで」という、いわばAIアベンジャーズの企画そのものが売り物になるわけです。
3つ目は、個人の「声」と「作風」の資産化です。 自分の曲を登録し、自分の声を登録すれば、自分の声で歌わせられる。これは有名アーティストだけの話ではありません。個人でも、自分の声と作風をモデル化して持っておけば、それが資産になります。可愛いアバターを作ってデビューさせる、という道もある。僕が作っているMiliaも、その一形態です。
一方で、無課金だと「なんか素人」に見られてしまうかもしれない、という逆転も起こりえます。今までは「AIで作った」ことが素人の証でしたが、これからは「どのAIモデルを使えているか」が差になる可能性がある。ここは注意して見ておく必要があります。
今日から始める人のための実践ステップ
最後に、「じゃあ何から始めればいいの」という方に向けて、順番を書いておきます。
ステップ1|まずアカウントを作って、1曲作ってみる 理屈より先に、1曲作ってください。作ってみないと、ここまで書いてきた「自分の曲が可愛くなる」という感覚は絶対に分かりません。1回やればハマる、というのは本当です。
ステップ2|毎日作る習慣にする 僕は1日2曲、男性ボーカルと女性ボーカルのセットで作っています。大事なのはモチベーションではなく、習慣にすることです。曲は「たまに作る」より「毎日作る」ほうが圧倒的に伸びます。
ステップ3|鼻歌を混ぜる テキストだけの指示から卒業して、喋る、そしてメロディを乗せる。ここで一段、自分の曲になります。
ステップ4|チャットでアレンジを直す練習をする 出てきた曲を聴いて、弱い場所を言葉にする練習をしてください。この「言語化の筋トレ」が、これから最大の差別化要因になります。
ステップ5|人間くささを最後に足す 歌詞の最後にひとつ、自分の実体験や、脈絡のない具体を入れてみる。あなたにとっての「マカロニサラダ」を探してください。
ステップ6|9月3日以降の変化を自分の耳で確認する モデルが切り替わったら、切り替え前と同じ指示で作ってみて、何がどう変わったかを自分で確かめる。人の評価を待たずに、自分の耳で判断することが大事です。
AIが作り、人間が演奏するライブという形
もう少し先の景色も想像しておきましょう。
AIで作った曲を、実際に演奏するミュージシャンが出てくる。これは、かなり高い確率で起きると思っています。制作はAI、ライブは人間、という分業です。
考えてみれば、これは不自然でも何でもありません。作曲家と演奏家が分かれているのは、クラシックの時代からずっとそうでした。作曲した人と演奏する人が同一である必要は、もともとないんです。AIが作曲を担い、人間が演奏を担う。それだけの話です。
そして面白いのは、この形だとライブの価値がむしろ上がるということです。音源は誰でも無限に作れるようになる。だからこそ、その場に人間がいて、その瞬間にしか鳴らない音を出すことの希少性が高まる。
すでに、AIが作った曲を人間が「歌ってみた」「演奏してみた」という形は始まっています。実際のライブはAIではなくて、それをコピーした人が出てきて、その人たちのライブを見に行く。こういう構造が広がっていくはずです。
一方で、素人レベルだと、AIで作った曲を「俺のオリジナル」と言っている人も出てきます。ここは、これから議論になるところでしょう。
「エア」問題と、信頼という資産
明るい話ばかりではありません。リスクの話もしておきます。
本当は違う人が弾いていて、その音が流れていただけです、という状況。全員エアでした、というようなこと。これは、技術的にはいくらでも可能になってしまいます。そしてそれが、だんだん見つかって、がっかりされたらどうなるか。
ゴールデンボンバーのように、最初から演奏していないことを打ち出して「いいじゃん、いいじゃん」と楽しんでもらえるケースもあります。これは、隠していないから成立するんです。
問題は、隠していた場合です。聴いている側からは分からない。僕らも分からない。だからこそ、後から発覚した時のダメージが大きい。
ここから導かれる結論はシンプルで、AIを使っていることを隠さないほうが、長期的には強いということです。だから僕は、自分が音楽生成AIで作っていることを一貫して公言しています。「SunoPよこたん」という名乗り方をしているのも、その表明です。
そして実は、これがそのまま次の話につながります。誰が最初に、プライドを捨てて「Sunoで作りました」と言うか。言った人が、最初に信頼を取れるんです。
AI音楽をめぐる、よくある3つの誤解
ここまで話してきて、セミナーや懇親会でよく出る誤解を3つ挙げておきます。
誤解1|「AIが作るんだから、誰がやっても同じでしょ」
これは、ポン出しだけをしている場合には、ある程度当たっています。同じようなプロンプトを投げれば、似たようなものが出てくるからです。
でも、鼻歌を入れた瞬間に話が変わります。あなたが口ずさんだメロディは、世界中のどこにもないものです。さらに、出てきたものを聴いて「ここが弱い」と判断する耳、それを言葉にする語彙、最後に人間くささを足すセンス。この4つが重なると、もう別物になります。同じにはなりません。
誤解2|「AI音楽が流行ったら、有名アーティストがもっと儲かるだけ」
これも違うと思っています。理由は本文で書いたとおりで、AI音楽は聴き手を作り手に変えてしまうからです。作り始めた人は、自分の曲を聴くようになる。僕の場合、聴いている曲の9割が自分の曲です。ヒット曲を聴く時間は、その分だけ減ります。
つまり、一極集中ではなく分散が進む。今流行っている曲の人ほど売れる、という構図にはならない、というのが僕の読みです。
誤解3|「AIが作れるなら、人間のミュージシャンはいらなくなる」
これが一番大きな誤解です。答えは、山下達郎さんが証明しています。
そして、AI音楽の世界でも同じことが起きています。AI音楽が好きな人は、AI音楽を作っている人が好きだからフォローしているんです。曲だけを消費しているのではありません。むしろ、曲が無限に作れるようになったからこそ、「誰が作ったか」の比重が上がっています。
さらに言えば、AIが作った曲を人間が演奏する、という新しい役割も生まれています。制作はAI、ライブは人間。この分業は、これから確実に広がります。人間の仕事は減るのではなく、置き場所が変わるだけです。
山下達郎が証明していること
改めて、山下達郎さんの話に戻ります。
あの人は、レコーディングとライブの音を同じにしています。ライブで出せる音でしかレコーディングしない。全く同じ音でしか作らない。そして全く同じ音でライブをする。ヒット曲をアコースティックバージョンにしました、というようなこともやらない。一緒のアレンジしかやらない。
論理的に考えれば、音が同じなら、家でレコードを聴けばいいはずです。わざわざチケットを取って、会場まで行く理由はない。
それでも、みんな行きます。本人が歌っているのを見たいからです。
これは、AI音楽の未来を考えるうえで、決定的な補助線になります。音が同じでも、人は「その人が出している」ということに価値を感じる。だから、音楽が無限に生成できるようになっても、人間が人間を見に行く行為はなくならない。
そして、AI音楽の世界でも同じことが起きています。AI音楽が好きな人も、突き詰めればAI音楽を作っている人が好きだから、その人をフォローしているわけです。曲だけを消費しているわけではない。
だからこそ、これから参入する人は、曲を作るだけでなく、自分を出していく必要があります。どんな考えで作ったのか、どこで悩んだのか、何を面白いと思っているのか。それが伝わるほど、フォローされます。AIが曲を作れるようになったからこそ、人間の部分が資産になる。この逆説が、これからの中心テーマになると思っています。
おわりに
ここまで、鼻歌からの作曲、Suno Studio 2.0によるチャットでのアレンジ指示、kenっぽさを学ばせるAI作曲家、マカロニサラダが象徴する人間の歌詞、自分の曲しか聴かなくなる自己陶酔、そして2026年9月3日の学習モデル切り替えとAIアベンジャーズまで、一気に見てきました。
整理すると、話は3つの層に分かれます。1つ目は「作り方が変わった」層。口ずさむだけで曲になり、チャットで直せるようになった。2つ目は「聴き方が変わる」層。自分の曲が9割を占めるようになり、ヒット曲の分母が静かに削られていく。3つ目は「権利と参入者が変わる」層。9月3日を境に著作権がクリアになり、代わりに権利者が「AI〇〇」を作り始める。
そして、その全部を貫いているのが「結局、人間は人間が好き」という一点です。山下達郎さんのライブに人が集まるのも、AI音楽の作者がフォローされるのも、理由は同じです。
今の状況は、YouTuberが生まれる直前とよく似ています。有名人が参入する前に始めた人が、その後の分母拡大の恩恵を丸ごと受けた。同じ構図が、今まさに音楽で起きようとしています。逃げ切れるか、抜かれるか。その分岐点が、9月3日です。
まとめ
- 2026年8月21日時点で、Sunoの国内ランキングは総再生回数12位、1曲あたりの再生回数37位と、いずれも過去最高位を更新した
- 同日16時から「9月3日でAI音楽は激変する」というテーマで1時間のライブ配信を実施。この記事はそのダイジェストにあたる
- 福井県でのInstagramセミナー後の懇親会が偶然9時間分録音されており、その内容をスライド化して番組の題材にした。PLAUD NOTEのような録音ツールの価値を再認識した
- 楽譜が読めず楽器も弾けなくても、口で「タラタラタラー」と歌ってギターソロにしたり、サビだけを歌ってメロディを作ったりできる
- 自分が口ずさんだメロディは「AIが学習していないもの」なので、従来のAI生成とは明らかに違う出力が得られる
- キーボードで打つより喋るほうが気持ちが入り、さらにメロディを乗せるとより気持ちが入るため、最近は曲そのものが変わってきている
- ラージランゲージモデルは前を受けて続きを想像するため、冒頭の一手が曲全体を決める
- プロもすでにイントロ候補を大量生成して選ぶ使い方をしている。これはプロデューサーとギタリストのやり取りをAIで高速化したもの
- ゼロから音を鳴らして「これいいかも」と気づく偶然は、楽器が弾ける人にしかない。だから楽器経験者の参入は脅威でもあり歓迎でもある
- Suno Studio 2.0では「この部分もうちょっとギター強めに」「ドラムを強調して」とチャットで指示するだけでアレンジを変更できる
- 結果として、ポン出しする人より「どうアレンジすれば良くなるか」を言語化できる人が強い時代になった
- L’Arc〜en〜Cielのkenのギターが好きで、偶然kenっぽい曲が2曲ほどできた。ギターソロだけの曲は歴代でも上位でバズっている
- インディーズ時代の限定1000枚シングルに入っていた『夜想花』を数万円(5万〜7万程度)で購入したが、後にベストアルバムや『DUNE』のボーナストラックに収録された
- ken、tetsu、hydeはそれぞれ作曲の個性が違い、聴けば誰の曲か分かる。その個性を学ばせれば「AI作曲家」が作れる
- 自分で作詞している人は、自分の作詞を学習させて「AI作詞家」を作る機能もすでにSunoに存在する
- 「やっぱりマカロニサラダって美味しいよね」のような脈絡のない締めは、AIには書けない。AIに出させた後、人間くささをどう足すかが勝負
- AI音楽ラジオを一緒にやっていた「ともみん」は元シンガーソングライターで、人間ならではの歌詞を書く
- 良い曲だけを残していくと自分の曲が可愛くなり、今聴いている曲の9割が自分の曲という状態になる
- みんながAI音楽を作るようになると、ヒット曲の再生ボリュームが静かに食われ、全体が分散していく
- 自分が告白する曲と、それに対する「私も好きです」というアンサーソングを作り、自己陶酔する使い方が今のマイブーム
- 落ち込んだ時に「こう言われたら頑張れる」曲を作り、モチベーション維持に使うこともできる
- 1日2曲、男性ボーカルと女性ボーカルのセットで制作している
- 作詞も作曲もAI任せにすると初回再生の展開が読めず、自分が作ったのに結末が分からないという独特の体験ができる
- 今の状況はYouTuber誕生前と酷似。Facebookのいいね数ランキングやTwitterのフォロワー数ランキングの上位に素人がいた時期と同じ
- HIKAKINが2011年に始めたように、有名人参入前に始めた人は、その後の分母拡大の恩恵を受けて残る
- 誰が最初にプライドを捨てて「Sunoで作りました」と言うかに注目。米津玄師、Ado、Ayase、そして本命はユーミン
- ユーミンはすでにAIを活用し、荒井由実のAIと松任谷由実が一緒に歌うといった取り組みを行っている
- 海外ではInstagramで3000万フォロワー規模のラッパーがAI制作をカミングアウトする動きが出ている
- 収益化はYouTube経由などで可能。将来的にSunoだけでApple MusicやAmazon Musicのように聴かれるようになれば最強
- 2026年9月3日、Sunoは自社で用意した音源をもとに学習したモデルへ切り替える。訴訟リスクへの対応であり、著作権がクリアになる
- モデル変更の話は昨年の暮れから出ており、8〜9ヶ月かけて開発しGOを出した以上、クオリティは落ちない可能性が高い
- 逆に権利者は自分の楽曲を学習させて「AI〇〇」を作れる。hide AI、tetsu AI、YOSHIKI AI、秋元康AIといった展開が想定される
- 宇多田ヒカルと甲本ヒロトのコラボのように、今後はAI同士のコラボ=AIアベンジャーズが起きる。自作AI「Milia」に歌わせることも、他所へコラボに行くことも可能
- 自分の曲と声を登録すれば、自分の声で新曲を歌わせる配信もできる。アバターデビューも射程に入る
- 山下達郎はレコーディングとライブの音を同じにし、アコースティックバージョンもやらない。それでも人はライブに行く
- 結論は「人間は人間に惹かれる」。AI音楽が好きな人も、作っている人が好きだからフォローしている
よくある質問
Q1. 楽譜も読めず楽器も弾けないのですが、本当に作曲できますか?
A. できます。実際、僕自身が楽譜を読めず、楽器も弾けません。やり方は、口で「タラタラタラー」とメロディを歌って、それを「これをギターソロにして」と伝えるだけです。サビだけを歌ってメロディを作ることもできますし、「デーンデーンデーン」とベースラインを口ずさんで、そこから曲を組み立てることもできます。ワンフレーズ、1コーラス思いついただけで、そこから膨らませて1曲になります。ただし正直に言うと、楽器が弾ける人には勝てません。ギターを持って「チャラーン」と鳴らした瞬間に「あ、これいいかも」と気づく偶然の発見が、僕らにはないからです。それでも、始めるのに音楽的な素養は必要ない、というのは間違いありません。ポイントは、キーボードで打つのをやめて、まず喋ってみること。そして喋るだけでなくメロディを乗せること。この2段階を踏むだけで、出てくる曲が驚くほど変わります。ラージランゲージモデルは前を受けて続きを想像するので、最初に自分のオリジナルを置けるかどうかが、曲全体の性格を決めます。
Q2. Suno Studio 2.0では具体的に何ができるようになったのですか?
A. 一番大きいのは、できあがった曲に対してチャットで修正指示が出せることです。例えば間奏のギターソロを聴いて「ちょっと弱いな」と思ったら、「この部分、もうちょっとギター強めにして」「ドラムをもっと強調して」と言葉で伝えるだけで直ります。これはレコーディングスタジオでプロデューサーがバンドメンバーに指示を出しているのとまったく同じ構造です。「いや、そうじゃなくて、例えばラルクのみたいに」と伝えれば、「ああ、そういうことですね」と直してくれる。曲全体を捨てて作り直す必要がなく、途中から作り直せるのが決定的な違いです。結果として、プロンプトを投げて出たものをそのまま使う「ポン出し」の人より、アレンジの良し悪しを言語化できる人が強くなりました。そして重要なのは、この「言語化」に演奏技術は必要ないということです。必要なのは、音楽をたくさん聴いてきた蓄積と、それを言葉にする語彙です。これまで単なる趣味だった「聴いてきた時間」が、そのままアウトプットの精度に変換される時代になった、と言い換えてもいいと思います。
Q3. 2026年9月3日に何が起きるのですか?
A. Sunoの学習モデルが切り替わります。これまでは、いわばYouTubeなどにある楽曲を学習してAI音楽を作れるようにしていた面があり、著作権的に問題があると指摘され、訴訟も起きていました。そこで「それをやめます」ということで、自社で用意した音源をもとに学習したモデルに切り替えるのが9月3日です。焦点は、これでクオリティが保てるのか、一気に落ちるのかという点にあります。僕の見立ては「落ちない」です。理由は、昨年の暮れからこの話が出ており、8〜9ヶ月かけて開発した上で、クオリティを保てると判断したからGOしているはずだからです。切り替え後は著作権面が完全にクリアになる一方、権利者が自分の楽曲を学習させて「AI〇〇」を作る道も開けます。ビジネス的に見ると、この日は技術のアップデート日ではなく、「堂々と仕事で使えるようになる日」です。企業案件や自治体の仕事で必ず聞かれてきた「学習元は大丈夫なんですか」という問いに、正面から答えられるようになります。だからこそ、前後で同じ指示を投げて聴き比べ、自分の耳で判断を持っておくことをおすすめします。
Q4. AIに書けない歌詞というのは、具体的にどういうものですか?
A. 象徴的な例が「マカロニサラダ」です。すごくいい感じの曲の最後に「やっぱりマカロニサラダって美味しいよね」といった脈絡のない締めが来る。こういう歌詞をAIは書けません。ラージランゲージモデルの中に、その曲の流れでマカロニサラダは存在しないからです。AIは文脈に沿っていい感じに締めてしまう。ところが人間は、自分の実体験や、定番では考えられないもの、自分だけが持っているものを最後にポンと入れてくる。これが「人間っぽさ」の正体です。だから今の戦い方は、AIが作曲したものに人間がちょっと手を加えて人間っぽさを足すこと。これをやるだけで、ポン出しの人よりクオリティが一段上になります。探し方のコツは、テーマから言葉を選ぶのではなく、自分が実際に見たもの、食べたもの、感じたことを先に置いてみることです。曲の流れから浮いていても構いません。むしろ浮いているほうが生々しくなります。あなたにとっての「マカロニサラダ」は何か。それを1曲に1つ入れられるようになると、AIが出す平均点の高さに、人間にしか出せない引っかかりが加わります。
Q5. 今からAI音楽を始めても、もう遅くないですか?
A. まったく遅くありません。むしろ今がチャンスです。根拠は、僕みたいな人間が国内の総再生回数ランキングで12位にいること自体がおかしい、という点にあります。本当に才能のある人が参入してきたら一瞬で抜かれます。これは、Facebookのいいね数ランキングやTwitterのフォロワー数ランキングの上位に、よく分からないお店や素人が並んでいた時期とまったく同じ構図です。そして今、それらの上位は芸能人や有名企業に置き換わっています。ただしYouTubeを思い出してください。HIKAKINやはじめしゃちょーは、芸能人や有名企業が参入する前に始めていたから頭角を現し、その後に有名人が入って分母が増えたことで、さらに伸びて今も抜かれていません。米津玄師さん、Adoさん、Ayaseさん、そしてユーミンさんのような方が「Sunoで作っています」と公言する前に始められるかどうか。今の音楽生成AIは、YouTuberの夜明け前と同じ位置にいます。しかも、有名人の参入は脅威であると同時に追い風でもあります。分母が増えれば、先行者の再生回数も一緒に伸びるからです。実際、僕のフォロワーは一生懸命やって1600ぐらいですが、この時期に聴いてくれている人がいるという事実は、後から効いてきます。問われているのは順位ではなく、タイミングです。

🎵 Suno
AIで作詞・作曲・歌唱までを一括生成できる音楽生成サービスです。テキストや音声で「こんな曲がほしい」と伝えるだけで、イントロからサビ、間奏のギターソロまで含んだ完成品が出てきます。SNSと同じくフォロワー機能やランキングがあり、国内総再生回数といった指標で順位が公開されます。現在は無名の個人でも上位に食い込める段階にあり、参入の早さがそのまま優位性になる状況が続いています。
🎛️ Suno Studio 2.0
Sunoの最新版で、生成した曲を後から部分的に作り直せるのが最大の特徴です。「間奏のギターソロが弱い」と感じたら、その箇所だけをチャットで「もっと強めに」「ドラムを強調して」と指示すれば直ります。レコーディング現場でプロデューサーが演奏者に注文を出す作業を、AI相手に言葉だけで行えるということです。結果として、ポン出しするより「どう直せば良くなるか」を言語化できる人が強くなります。
🎤 鼻歌作曲
楽器が弾けず楽譜も読めない人でも、口で「タラタラター」とメロディを口ずさみ、それをAIに渡して曲に仕上げる作り方です。キーボードで文章を打つより声のほうが気持ちが乗りやすく、さらにメロディまで乗せると感情が濃く反映されます。ワンフレーズやサビだけ思いつけば、AIがそこから連想して一曲丸ごと膨らませてくれるため、最初に何を投げるかが仕上がりを大きく左右します。
🧠 AI作曲家・AI作詞家
自分が作った曲や書いた詞をAIに学習させ、その人らしさを再現する専用モデルを作る機能です。バンドでも作曲者ごとに個性があり、聴けば誰の曲か分かるように、その個性そのものをモデル化できます。作曲モデルと作詞モデルを掛け合わせれば、自分のスタイルを保ったまま量産できます。他人の曲を無断で学習させれば違法ですが、自分の著作物なら合法的に活用できる点が重要です。
🥗 マカロニサラダ
AIには書けない人間らしさの象徴として語られた例えです。きれいにまとまった曲の最後に、脈絡なく「マカロニサラダが美味しかった」と差し込むような歌詞は、大規模言語モデルの確率的な流れからは絶対に出てきません。AIは常に定番の外し方をしますが、自分の実体験に根ざした唐突さは人間にしか出せません。AIが作ったものに人間が最後のエッセンスを足せる人が、一段上の作品を作れます。
📅 9月3日のモデル切り替え
これまでのAI音楽は、ネット上の楽曲を無断で学習していたため著作権上の問題を抱え、訴訟にも発展していました。そこで自社で用意した音源のみを学習した新モデルへ切り替えるのが9月3日です。クオリティを保てるかどうかが分岐点ですが、開発に長期間かけている以上、大きく落ちないと見られています。切り替え後は権利面がクリアになり、AI音楽の商用利用が一気に現実的になります。
🦸 AIアベンジャーズ
権利者が公認したAIモデル同士を組み合わせ、夢のセッションを実現する構想です。ギターはあのギタリストのAI、ベースは別のバンドのAI、ドラムはまた別、ボーカルはさらに別、といった編成が合法的に組めるようになります。故人となったミュージシャンの音や声も、権利を持つ側が登録すれば新曲として蘇らせられます。使用料が権利者に還元される仕組みとして成立する可能性が高い領域です。
💌 アンサーソング
自分が誰かに伝えたい気持ちを曲にし、次にその相手が答える曲をAIに作らせるという遊び方です。言ってほしい言葉を自分で仕込んでいるにもかかわらず、実際に歌われると心を動かされてしまうところが面白い点です。落ち込んだときに励ましてくれる曲を自分用に作るなど、モチベーション管理の道具としても機能します。疑似恋愛的でありながら、音楽の新しい実用性を示す使い方です。
💿 自作曲9割現象
AIで曲を作り続けると、聴く音楽の大半が自分の作った曲になる現象です。納得いくまで生成し直し、気に入らないものは捨てるので、手元には自分好みの曲しか残りません。当然かわいく思えて繰り返し聴くようになり、有名アーティストを聴く時間が消えていきます。これが広がると、ヒット曲に集中していた再生時間が個人の自作曲へ分散し、音楽産業全体の構造が変わる可能性があります。
📈 YouTuber黎明期
今のAI音楽の状況を表す比喩です。SNS初期には無名の店や素人がランキング上位にいましたが、やがて芸能人や大企業が参入して一瞬で追い抜かれました。ただしYouTubeでは、有名人参入前から続けていた個人が地位を守り、参入によって増えた利用者の恩恵まで受けています。音楽生成AIも同じ構図で、有名ミュージシャンがプライドを捨てて参入する前の今が、先行者になれる貴重な期間です。

音楽生成AIコンサルタントSunoPよこたんが「AI音楽」をLIVEで語る|2026年9月3日でAI音楽は激変する
音楽生成AIコンサルタントSunoPよこたんが語る「AI音楽」の現在地
国内総再生回数12位の実践者が、いまLIVEで語る理由
音楽生成AIコンサルタント・SunoPよこたんは、Sunoの国内ランキングで総再生回数12位、1曲あたりの再生回数で国内37位という自己最高位を記録したと本人が公表しています。楽譜も読めず楽器も弾けない立場から、実演者としてこの位置まで登り詰めたという事実そのものが、AI音楽という領域の特異性を象徴しています。
そのよこたんが2026年8月21日16時から約1時間、「9月3日でAI音楽は激変する」というテーマでライブ配信を行います。なぜ今なのか。理由は明確で、Sunoが2026年8月10日にダウンロードポリシーと利用規約の変更を発表し、その適用開始日が9月3日に設定されているからです。これは単なる仕様変更ではありません。旧モデルの終了、新モデルへの全面移行、商用利用条件の明確化までを含む包括的な転換であり、日常的にSunoを使っているユーザーほど制作フローへの影響が大きい内容になっています。 TechnoEdgeNote
AI音楽を「趣味の遊び」として眺めていた層と、実際に毎日曲を作り再生回数を積み上げてきた層とでは、この変更の意味の受け取り方がまったく違います。前者にとっては「ふーん」で済む話でも、後者にとっては積み上げてきた声質やスタイルが一度リセットされかねない事態です。ライブ配信が価値を持つのは、この温度差を埋める一次情報が、まだどこにも整理されていないからにほかなりません。
9時間の偶然録音から生まれた「AI音楽の本音トーク」
このライブ配信の内容には、少し変わった出自があります。よこたんは福井県で開催したInstagramセミナーの録音・録画をそのまま止め忘れ、その後の懇親会まで含めて約9時間分が記録されていたのです。本人は飲み会の最中に「今日はいいAI音楽の話をしたから録音しておけばよかった」と後悔していたところ、ホテルに戻って確認すると全部残っていた——という経緯が語られています。
この偶然が示唆するのは、コンテンツ制作における「一次情報のストック習慣」の重要性です。セミナー本編よりも、その後の懇親会での本音のやり取りのほうが、しばしば密度の高い情報を含みます。構成を意識せずに話された内容には、スライドには載せない実感値や、失敗談、業界内の温度感が混ざり込むからです。PLAUD NOTEのようなAIボイスレコーダーを常時運用しておく価値は、まさにこの「取り逃がしたくない偶発的な一次情報」を確保できる点にあります。
そして重要なのは、9時間の録音がそのまま公開されたわけではないことです。1時間分の会話をスライドに構造化し、15分のダイジェスト配信に圧縮し、さらに1時間の本編ライブへ展開する——この「録る→構造化する→複数フォーマットに展開する」という流れは、AI音楽に限らずあらゆる情報発信に応用できる型です。素材はAIで扱いやすい形に変換できる時代になった以上、ボトルネックは「そもそも記録が残っているか」に移っています。
鼻歌からプロデュース目線へ──AI音楽の作り方が変わった
メロディを口ずさんでサビとギターリフを作る「口ずさみ起点」の作曲法
よこたんが最近多用しているのが、自分でメロディを口ずさみ、それを起点にサビやギターのリフを作る手法です。以前は「今日こんなことを曲にしたい」という内容を音声入力してテキストとして投げていましたが、キーボードで打つより喋ったほうが感情が乗り、さらにメロディまで乗せたほうがもっと乗る——という実感から辿り着いたやり方だといいます。「タラタラタラー」と口で言って「これをギターソロにして」と指示する、あるいはサビだけを歌ってメロディを作らせる。楽器が弾けなくても、頭の中で鳴っている音を外に出す手段としては十分に機能します。
この手法が効く理由は、音楽生成AIが言語モデルと同じく「与えられた冒頭から続きを予測して生成する」構造を持つためです。最初に投入するフレーズの質が、その後の展開全体を規定します。だからこそ、既存曲の記憶から逆算して組み立てるより、自分の口から出た偶発的なメロディを起点にしたほうが、既視感の薄い展開が生まれやすくなります。
環境面でも入力のハードルは下がり続けています。Sunoはスマートフォンのメモアプリの内容を直接アップロードして歌詞に変換したり、ボイスメモをそのままアップロードして作成フォームに音声クリップとして挿入したりできる機能をiOS版に追加しています。思いついた瞬間に鼻歌を残し、そのまま曲にする——という導線が、アプリ内で完結しつつあるということです。 Suno
Suno Studio 2.0のチャットバーが変えた「プロデューサー的AI活用」
制作の主戦場を大きく動かしたのが、2026年8月13日にリリースされたSuno Studio 2.0です。ブラウザベースの生成型DAWが全面刷新され、タイムライン上でのMIDIのインポート・録音・編集、楽器やボーカルを生成できるチャットバー、サイドチェインコンプやコンボリューションリバーブを含むオーディオエフェクト、ウェーブテーブルシンセ、タイピングキーボードで演奏できるMusical Typingが搭載されました。 SunoSuno
注目すべきはチャットバーの挙動です。チャットバーはプロジェクトの状態と全トラックの音声を読み取ったうえで、平易な指示に対して動作します。タイムライン上にオーディオやMIDIクリップを生成し、シンセプリセットやカスタムプラグインを設計し、パラメータを設定済みのエフェクトチェーンを追加し、セクションを並べ替え、トラックの名称変更や色分けまで行います。「ギターソロが弱いからもっと強めに」「ドラムを強調して」といった、レコーディング現場でプロデューサーがメンバーに投げる種類の指示が、そのままAIに通るということです。 AI Musicpreneur
ここで競争のルールが変わります。プロンプトを投げて完成品を「ポン出し」する能力ではなく、出てきたものに対して「どこをどう直せばもっと良くなるか」を言語化できる能力が価値を持つ。つまり楽器経験者や、大量に音楽を聴いてきた人間が有利になる構造です。よこたん自身、そうした層が本格参入してくれば現在の12位という位置は危ういと語っています。なおStudioは月額24ドル(年払い)のPremierプランに含まれ、8ドルのProプランと無料プランでは利用できません。 AI Musicpreneur
AI作曲家・AI作詞家をつくる──Custom Modelsと「kenっぽさ」の正体
Custom ModelsとVoicesで「自分の個性」をモデルに学習させる
よこたんがこの話題の入口に置いたのが、L’Arc〜en〜Cielのギタリスト・kenのギターサウンドです。「Floods of tears/夜想花」は1992年11月25日にNight Gallery Recordsから発売されたL’Arc〜en〜Cielのインディーズシングルで、バンド名義でのCD作品としては初、かつインディーズ期唯一のシングル作品でした。1,000枚の数量限定で発売され、事前予約分だけで完売しており、当時数万円を出して入手したというエピソードが語られています。その「夜想花」は、2004年4月21日発売の『DUNE 10th Anniversary Edition』にボーナストラックとして収録されました。 Wikipedia + 2
なぜこの話がAI音楽につながるのか。kenの曲、tetsuの曲、hydeの曲は、聴けば作曲者が判別できるほど個性が違う。ならばその個性を学習させれば「AI作曲家」が作れるはずだ——という発想です。そしてこれは既に実装されています。Sunoは2026年3月26日にV5.5をリリースし、Pro・Premier加入者向けにVoices(一貫したアーティストアイデンティティのための声のクローン)、Custom Models(自分の音楽スタイルライブラリでAIをファインチューン)、My Taste(好みのプロファイリング)という3つのパーソナライゼーション機能を導入しました。 Bibigpt
Custom Modelsは自作曲をモデルに学習させ「あなたを理解する小型モデル」を作る機能で、スタイルの揃った楽曲を10〜60曲程度アップロードすることが推奨されています。作曲だけでなく作詞についても同様のアプローチが可能で、自分が書いた歌詞を学習させれば「AI作詞家」が作れます。ただし前提として、学習させるのは自分が権利を持つ楽曲である必要があります。 Suno
AIが書けない「マカロニサラダ」──人間らしさが最後の差別化になる
一方で、AIが決定的に苦手とする領域も明確になってきています。よこたんが繰り返し例に挙げるのが「マカロニサラダ」です。美しく展開してきた曲の最後に、脈絡なく「マカロニサラダが美味しかった」と置く——こうした歌詞をAIは書きません。書けないのではなく、確率的に選ばれないのです。言語モデルは文脈上ありそうな続きを選ぶ設計である以上、その曲の流れに対して統計的に遠い語彙は出てきません。
しかし人間は書きます。実体験、生活の細部、その場の匂い。定番から外れたその一語が、聴き手の記憶に引っかかる。AI音楽ラジオを共にやってきたシンガーソングライターの「ともみん」は、まさにこの人間らしさを歌詞に載せるのが上手いと評価されています。
ここから導かれる実務上の結論はシンプルです。AIに出させた後、人間がどこにエッセンスを差し込めるかが品質の分岐点になる。ポン出しした曲をそのまま公開する層と、最後にひと手間を加える層とでは、出来上がりが一段違ってきます。これはSEOにおけるE-E-A-T——とりわけExperience(実体験)が評価される構造とまったく同じ論理です。誰でも生成できる情報が飽和した領域では、生成できないものだけが差別化要因として残ります。楽器経験、作詞経験、そして生活の記憶。AI音楽において人間側に残された資産は、意外なほど古典的なものです。
2026年9月3日にAI音楽は激変する──新モデル移行とダウンロード制限
旧モデル全廃とダウンロード上限(無料7回/Pro20回/Premier60回)
9月3日の変更点を正確に押さえておきましょう。2026年9月3日から、SunoのProプランは月20曲、Premierは月60曲までのダウンロードに制限され、無料ユーザーは生涯7回の試用ダウンロードとなります。Studio 2.0からのエクスポートはPremier加入者に限り無制限で、実質的にStudioがダウンロード上限の唯一の抜け道になっている構図です。 RouteNoteAI Musicpreneur
見落とされがちな点が2つあります。第一に、この上限は遡及適用され、新規作品だけでなく既にライブラリにある作品すべてが対象になります。未使用分の繰り越しはなく、追加購入は可能とされていますが価格は未発表です。第二に、曲が削除されるわけではなく、Suno上での再生は引き続き可能で、変わるのは他プラットフォームへ持ち出せるかどうかだけという点です。同一曲の再ダウンロードは追加カウントされず、MP3とWAVを別々に取得しても基本的に同じ1曲として扱われます。 Mubert + 2
そしてモデル側。音楽業界とのパートナーシップのもとで開発された新世代モデル群が近く登場し、そのローンチ時に旧モデルはすべて引退します。既存の楽曲はライブラリに残って再生・共有は可能ですが、同じモデルで新規生成することはできなくなります。 TechnoEdge
ここは正確に区別してください。 9月3日に確定しているのは新利用規約とダウンロード上限の適用であり、新モデルのローンチ日そのものが9月3日と公表されているわけではありません。Sunoは音楽業界と共同開発した最初の音楽モデルを2026年中にロールアウトし始めるとしていますが、正式名称・具体的な公開日・価格・提供順序・機能セットはいずれも未確定です。「9月3日にモデルが切り替わる」という言い方は現時点では踏み込みすぎで、「9月3日に新ルールが始まり、モデル移行が近い」が正しい理解です。 Jack Righteous
WMG・BMG提携で変わる著作権の前提と「AI〇〇」の可能性
学習データをめぐる状況も、この1年で大きく動きました。Warner Music Groupは2025年11月にSunoとの提携を発表し、従前の訴訟も和解。アーティストと作詞作曲家は、自らの名前・肖像・声・楽曲がAI生成музыкにどう使われるかを完全にコントロールできるとされ、2026年に新しい高性能なライセンス済みモデルを投入し、その時点で現行モデルは廃止されると announced されました。 Music Business Worldwide
さらに2026年8月12日、SunoはBMGとライセンス契約を締結。BMGの原盤レパートリーのライセンス料を支払い、過去モデルの学習にBMG楽曲を使用した分もカバーされます。アーティストと作詞作曲家は、AIの入力・出力に自分の音楽が使われることにオプトインする必要があります。一方で、最大の権利者であるUniversal Music GroupとSony Music Groupは、過去モデルの学習における著作権侵害を主張して米国で係争中です。つまり「完全にクリーンになった」わけではなく、権利処理済みの領域が段階的に拡大している段階です。 ForbesMusic Business Worldwide
この変化は、権利者側に新しい市場を開きます。自分が権利を持つカタログを学習させ、「AI〇〇」として提供する構図です。実例はすでにあります。松任谷由実は2022年、”松任谷由実 with 荒井由実”名義で「Call me back」を発表。1980年のオリジナルトラックを元に歌詞を書き下ろし、現在の松任谷由実と最新のAIで再現された荒井由実のボーカルによる初のデュエットを実現し、同年の紅白歌合戦でもAI荒井由実との共演が行われました。権利者本人の許諾のもとであれば、こうした企画は完全に成立します。故人のギターサウンドやボーカルを合法的にモデル化し、ライセンス提供する——いわば「AIアベンジャーズ」の前提条件が、いま整いつつあるということです。 Real SoundITmedia
AI音楽のビジネス可能性──YouTuber黎明期との共通点
「自分の曲しか聴かなくなる」現象と、リスニングの分散化
よこたんが語る現象の中で、最も示唆的なのがこれです。自分が1年間に聴く曲の9割が、自分の作った曲になった。 良い曲が出るまでガチャを回し、気に入らないものはボツにする。残るのは自分が良いと判断したものだけ。当然、自分の曲が可愛くなる。結果として、ラルクを聴いていた時間が消えた——という話です。
これが個人の特殊な習性で終わらないことは、データが示しています。Deezerでは2025年1月時点で1日あたり約1万曲(新規アップロードの約10%)だった完全AI生成楽曲が、2025年9月に28%、2025年11月に約5万曲・34%、2026年4月に約7万5000曲・44%超、そして2026年6月には1日9万曲以上・50%超に達しました。同じ期間、人間が制作した楽曲のアップロード数は1日約9万曲から約9万5000曲へとほとんど増えていません。 MusicallyMusically
ところが再生側の数字はまったく別の顔をしています。AI生成音楽の再生回数は全体のわずか1〜3%に留まり、しかもAI再生の85%はDeezerの検知システムによって不正と判定され、収益分配の対象から除外されています。 Musically
この乖離をどう読むか。「聴かれるAI音楽」が増えているのではなく、「作る人」が爆発的に増えている、というのが実態に近い。よこたんの「自分の曲を聴くようになる」という証言は、この構造とぴったり符合します。ヒット曲に集中していた聴取時間が、一人ひとりの自作曲へと細かく分散していく。AI音楽時代に起きるのは、勝者総取りではなく総量の拡散だという読みには、相応の根拠があります。
「結局、人間が好き」という結論と、収益化のリアル
では今から参入して間に合うのか。よこたんはFacebookとTwitterの初期を引き合いに出します。いいね数ランキングやフォロワー数ランキングの上位に、よく分からない店や素人が並んでいた時代。しかし最終的に上位は芸能人と有名企業に置き換わりました。ただしYouTubeだけは違った。HIKAKINやはじめしゃちょーは、企業や芸能人が参入する前に頭角を現していたため、分母が拡大したときにその恩恵を最も受ける側に回れたからです。「AI音楽はYouTubeに近い」——これが現状認識です。
一方、収益化には冷静な確認が必要です。Suno AIで作成した楽曲は有料プラン契約時に主要な音楽配信サービスへ登録して収益化が可能ですが、プラットフォームごとにAI生成コンテンツの規定が異なり、DistroKidやTuneCore等のディストリビューターを経由するのが一般的です。2025年7月時点で、完全にAI生成された音声はYouTubeのContent IDの対象外です。Sunoの楽曲をYouTubeにアップロードして自分の動画を収益化することはできますが、第三者による使用に対してContent IDで権利主張することはできません。9月3日以降のダウンロード上限も踏まえれば、戦い方は明確に「量から質」へ移ります。外に出す1曲を、生成する前に決める判断力そのものがコストになる時代です。 AIsmileyHookGenius
そして最後に残るのは、意外なほど古典的な結論です。山下達郎はレコーディングとライブで同じ音しか出さない。それでも人は本人を観に行く。AIが作った曲を人間が「演奏してみた」「歌ってみた」で再現し、そのライブに観客が集まる。AI音楽のファンも、結局はAI音楽を作っている人をフォローしている。ツールが何であれ、人が人に惹かれるという構造だけは動いていません。ここを見誤らないことが、AI音楽をビジネスにするうえでの最初の前提になります。
出典一覧
原稿との相違点(3件を修正して執筆)
- 「9月3日にモデルが切り替わる」 → 9月3日に確定しているのは新利用規約とダウンロード上限の適用です。新モデルのローンチ日は公表されておらず、「2026年中にロールアウト開始」とされているのみ。旧モデル廃止は「新モデル公開のタイミング」であって9月3日ではありません。本文で明示的に区別しました。
- 「夜想花はベストアルバム(2枚組)に収録された」(
15縦.txt) → 正しくは**『DUNE 10th Anniversary Edition』(2004年4月21日)のボーナストラック**です。16縦.txtの記述のほうが正確でした。 - 「配布シングル/カップリング」 → 「Floods of tears/夜想花」は両A面の8cmシングルで、無料配布ではなく1,000枚限定販売(予約のみで完売)です。
なお、特定の実在アーティストが「AIを使っている/使いそうだ」という推測部分は、事実確認ができないため記事には採用せず、本人・権利者公認で公表済みの松任谷由実の事例に差し替えています。
音楽生成AIコンサルタントSunoPよこたん「AI音楽」をLIVEで語る
















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