音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②

2026年9月のSuno以外のAI音楽・音楽ニュースを解説。オープン音楽生成AI「YuE2」が無料公開された一方、UMGはAI楽曲を大量に配信するDistroKidを提訴しつつ、ElevenLabsとは戦略的合意を結ぶなど、業界は駆け引きの段階にある。オーストラリアはAIで全自動生成した曲をチャートから除外した。楽天ミュージックのチャット検索、ヤマハの自動採譜、欧米の原盤市場の成長、Spotifyの動画化、「リーチから定着へ」というマーケティングの変化も紹介した。
詳しくは15分の動画で解説しました。
https://www.youtube.com/watch?v=HetxAkaiknk
0:00 🎙️ 導入:AI音楽ニュース9月分・後編 0:55 🆓 音楽生成AI「YuE2」無料公開 1:35 ⚖️ UMGがDistroKidを提訴、AIスロップ問題 3:05 🤝 UMGとElevenLabsが戦略的合意 4:23 🇦🇺 オーストラリア、AI生成曲をヒットチャートから除外 5:45 🛒 楽天MusicにエージェントAIを搭載 6:31 ⌚ Apple Watchで周囲の曲を自動認識 7:25 ☁️ SoundCloudで楽曲の直販が可能に 8:35 🎹 ヤマハ「ピアノシートコンバーター」で楽譜を自動生成 9:52 🇪🇺 EUの録音原盤市場が過去最高を更新 10:35 🇺🇸 米国の録音原盤市場が半期60億ドルに迫る 11:15 👨👩👧 Spotify、子ども・家族向け音楽をおすすめ学習から除外可能に 12:05 🎬 Spotify、Geniusと組んで動画配信を拡大 12:35 🛠️ Spotifyのプロフィールに誤った曲が表示される問題を改善 13:08 🪲 科学論文タイトルで最も引用されるのはビートルズ 13:30 📊 Spotify日本チャートの歌詞をテーマ別に分類 14:12 📉 プレイリスト&アルゴリズムマーケティングの終焉 14:35 👋 まとめ・Substackのご案内
音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②
「AIは布の記憶の夢を見るか?」
の応援ソングを作ってみました
イーンスパイアの横田です。
https://www.enspire.co.jp

というMVコンテストが10/30まで
作品を募集しています。詳細こちら↓
https://koromolab.site/event.html
僕は審査員で応募できないけど、
応援ソングを作ってみました。
たった一枚の布で / Milia
https://www.youtube.com/watch?v=ULKoVvkYvdg
一枚の布だけで / KeiVi
https://www.youtube.com/watch?v=G-4Opeo9u2Q
さて、本題です。
直近1ヶ月にあった音楽生成AIの
Suno以外に関するニュース16件を
取り上げて詳しく解説しました。
音楽生成AI「Suno」に関する
ニュースは以下のブログ記事で
https://yokotashurin.com/etc/ai-music202609-1.html
↑で、詳しく解説しています。

音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②
UMGの訴訟と提携、AI楽譜化、市場拡大、9月の音楽界
昨日のSunoニュース特集の続き。今日はSuno以外のAI音楽・音楽ニュースを直近1か月分まとめて解説。訴訟と提携を使い分けるレコード会社、AIでチャットのように曲を探す時代、そして伸び続ける音楽市場まで、全体像を上から順に追います。
開発:Multimodal Art Projection(m-a-p)
配信代行(ディストリビューター)大手。AI音楽が最も通りやすいと言われ人気。
- 訴えの柱:欺瞞的取引慣行+著作権侵害
- 低品質な“AIスロップ”でストリーミングを汚染したと主張
- 争点はAIそのものではなく正規リリースのように流通させた点
- 請求:最大 $150,000/1作品
見ている
テキスト to 音声合成のAI企業と、ライセンス供与+製品開発で合意。
- ライセンス済み音楽を土台にAI音楽を作れる
- ファン参加型の新プラットフォームを開発へ
- 著作権クリアな音楽を出力できる
Lofi Chillは月平均約380曲=毎月フルアルバム20〜30枚分に相当。UMG調査の侵害録音は約2,000件。
世界的な流れの一つ。テキストからポン出ししただけのAI曲は対象外。ただしAI利用そのものは禁止ではない。
主要な創作要素をAIが作った録音。プロンプトから全部生成したもの
人間が作曲・リード歌唱・主要楽器を担い、AIが一部の表現を補助
AIマスタリング、ステム分離、リバーブ、AIドラムマシン など
実質的に人間が作った録音
ストリーム・チャート操作がない
著作権・関連権を遵守
↑ チャート適格の3条件。2026年8月31日付チャートから適用。
「Rakuten AI for Music」を搭載。「こんな曲を聴きたい」とチャットで話すと候補が出る。
カテゴリー
検索
キーワード
検索
チャット
検索
あらゆるインターフェイスで、このステージ移行が進行中。ここは押さえておきたい。
Shazam買収で得た曲名認識をApple Watchにも搭載。Google Pixelの「Now Playing」と同様の機能。
便利
流れている曲がすぐ分かる
プライバシー
曲以外の音も“聞いて”いる=盗聴の懸念
対象:Series 12/Ultra 4(S11チップ)。UMGやソニー等レコード会社の反応も含め、条件づくりが今後の課題。
月5回まで楽譜化
全機能を開放
やキー・長さも選べる
占める比率
増加額でEUが中国を約400万ユーロ上回る。
子ども・家族向け音楽の再生履歴をおすすめに反映させない設定が可能に。
- 再生はできるが学習させない
- 対象は13歳以下向けの音楽
- 1アカウントを親子で使う家庭向け
人気動画シリーズ「Open Mic」「Verified」をSpotifyで展開。音楽配信からYouTube型の動画配信へ。
ビデオポッドキャスト同様、音楽も動画がメインに。音楽領域ではYouTubeとかなりバッティング。
自分の曲が他アーティストのプロフィールに出る問題の修正ガイド(独立系音楽家向け)。
最重要:リリースを削除しない! まずSpotify for Artistsで報告し、紐付けを直す。
完全一致
The Long and Winding Road
曲名、曲名をもじった例、歌詞そのもの、歌詞をもじった例まで。さすが万人に受けるアーティスト。
これまでSpotifyで重要だったプレイリストは“目的”ではなく“入口”に。発見されるだけでなく、ファンとして残ってもらうことへ。
リーチ
コンバージョン
リテンション
ライフタイムバリュー
DSPのプレイリスト掲載・月間リスナー数・TikTokのバイラル=リーチ重視
保存・フォロー・リピート・ライブ動員など、関係性で測る定着重視
📣 AI音楽・音楽の話題はSubstackでも発信中。詳しくはブログやリンク先から。来月以降もこの形でお届け予定。
音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②
- はじめに|Sunoだけ見ていると、音楽の地図を見誤る
- Suno以外の選択肢と、レーベルが仕掛ける「訴える・組む」の二面作戦
- ステップ1:音楽生成AI「YuE2」が無料公開された
- ステップ2:UMGがDistroKidを提訴、「AIスロップ」とは何か
- ステップ3:UMG×ElevenLabsの戦略的合意、敵ではなく「条件次第」
- チャート・検索・デバイス、音楽の「ルールと入口」が書き換わる
- ステップ4:オーストラリアARIAがAI生成曲をチャートから除外
- ステップ5:楽天ミュージックに「会話で探す」エージェント型AI
- ステップ6:Apple Watchが「周囲の音」を理解する時代へ
- AIが仕事を置き換え、それでも音楽市場は伸びている
- ステップ7:ヤマハ「Piano Sheet Converter β」で耳コピが約3分に
- ステップ8:SoundCloudが「楽曲直販」へ、Bandcampとの競合
- ステップ9:EUの録音原盤市場が中国を上回る伸び
- ステップ10:米国の録音原盤市場は上半期で60億ドルに迫る
- Spotifyの進化と「リーチから定着へ」という結論
- ステップ11:子ども・家族向け音楽を「おすすめ学習」から除外
- ステップ12:SpotifyがGeniusと提携し音楽動画を拡大
- ステップ13:Spotifyプロフィールの誤表示を直す修正ガイド
- ステップ14:科学論文タイトルで最も引用されるのはビートルズ
- ステップ15:Spotify日本チャート1,163曲の歌詞を「意味の近さ」で可視化
- ステップ16:プレイリスト&アルゴリズム・マーケティングの終焉
- おわりに|「作れる」の次は「どう届け、どう残るか」
- まとめ
- よくある質問(Q&A)
はじめに|Sunoだけ見ていると、音楽の地図を見誤る
こんにちは、横田秀珠です。皆さんは普段、音楽をどこで聴いていますか? 通勤中のSpotify、家事をしながらのYouTube、あるいはお店で流れてきた曲をスマホで調べる、という方も多いと思います。実はその「聴き方」「探し方」「作り方」の全部が、今まさに同時に変わっています。
昨日の配信では、音楽生成AI「Suno」のニュースだけで15分を丸々使ってしまいました。それだけSunoの動きは激しいのですが、Sunoだけを見ていると、音楽業界全体の地図を見誤ってしまいます。レーベルはAIを訴えながら別のAI企業と手を組み、チャートはAI曲の線引きを始め、ヤマハは耳コピを約3分に縮め、Spotifyは「動画」と「定着」へ舵を切っています。
今日はその「Suno以外」のAI音楽・音楽ニュースを、2026年9月分としてまとめて解説します。コーヒーでも片手に、気楽に読み進めてください。
Suno以外の選択肢と、レーベルが仕掛ける「訴える・組む」の二面作戦
今日は2026年9月23日(水)です。今日もネットビジネスに関する情報を生中継で15分間お届けする「15縦」の内容を、ブログとしてじっくり書き起こしていきます。
昨日に引き続き、音楽生成AIに関する直近1ヶ月のニュースのまとめです。昨日はSunoに関するニュースだけで15分間の解説になってしまったので、今日はその続きとして、Suno以外に関するAI音楽のニュースや、音楽そのものに関するニュースを紹介していきます。今回もたくさんのスライドを用意していますので、1枚ずつ順番に、分かりやすく噛み砕いてお伝えしていきますね。
まず「起」のパートでは、Suno以外の音楽生成AIの選択肢と、大手レーベルであるユニバーサルミュージックグループ(UMG)が見せている「訴える」と「組む」の二面作戦を取り上げます。この3本は一見バラバラのニュースですが、並べて読むとAI音楽をめぐる力関係が非常によく見えてきます。
ステップ1:音楽生成AI「YuE2」が無料公開された
1つ目のニュースは、音楽生成AI「YuE2」の無料公開です。名前がちょっと難しいのですが、「ユエ」と読むそうです。
Sunoと同じように、テキストを入れて歌詞を生成し、そこから曲を作る。こうした仕組みの音楽生成AIは実はいろいろなモデルが存在していて、YuEもその1つです。正直にお伝えすると、僕はまだ試せていません。試す余裕がなかったんですね。YuE2は2026年9月10日に公開されました。名前に「2」とついている通り、当然「1」があったわけで、それがバージョンアップして「2」が出た、というニュースです。
スライドの内容をもとに、YuE2の基本情報を整理しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発 | Multimodal Art Projection(m-a-p):オープンな音楽生成AIの研究・開発を行うコミュニティ |
| モデル名 | YuE2-3B(Suno v5に匹敵するオープンな音楽生成モデルを目指して開発) |
| 公開日 | 2026年9月10日 |
| 公開先 | GitHub(multimodal-art-projection/YuE)、Hugging Face(m-a-p/YuE2-3B)、公式デモサイト(map-yue2.github.io) |
| キャッチコピー | Suno v5/v6級を狙う「楽譜で操れる」オープン音楽生成 |
YuE2の大きな特徴は、テキストだけでなく「楽譜」でも操れるところです。音楽生成の流れは次の4段階になっています。
- テキスト/歌詞:たとえば歌詞のイメージに加えて、スタイル「Jazz-Funk」、雰囲気「しっとりと、都会的に」、言語「日本語」のように指定します。
- ABC楽譜プラン(シンボリック・プランニング):ABC記法という文字ベースの楽譜で、メロディやコードの計画を立てます。計画モードは「full(メロディ+コードを計画)」「melody(メロディのみを計画)」「off(楽譜計画なし)」の3つ。外部のABC楽譜を与えて、生成・再生成することも可能です。
- AI生成(YuE2-3B):テキストと楽譜の情報をもとに、高品質な楽曲を生成します。
- ボーカル+伴奏:ボーカル付きのフル楽曲(48kHzステレオ)を出力。日本語を含む多言語に対応しています。
主な機能としては、「歌詞+スタイルからの楽曲生成」「ABC楽譜によるシンボリック・プランニング(メロディ・コードの明示的な制御)」「外部ABC楽譜で生成・再生成」「ゼロショット・カバー生成(既存曲の新しい歌い方で)」「楽譜の編集(コード変更、テンポ・構成・歌詞変更)」「エージェントによる編集支援」が挙げられています。公式デモでは、Metal、Jazz-Funk、Dance-Punk、Flamenco、Easy Listeningのほか、ポップス、ロック、エレクトロニックなど多彩なスタイルの生成例が公開されています。
性能面では、WildSongBench(192プロンプト)での比較で、Suno v5/v6と競争力のある性能を示したとされています。SongBench Average(自動評価)では「YuE2 best-of-8」が6.9632。ここで補足しておくと、「1回の生成」は1つのプロンプトから1候補の楽曲を生成する方式、「best-of-8」は8つの候補を生成して、その中から評価上最良のものを選択する別の評価手順です。スライドにも注記がある通り、これは自動評価指標による結果であって、人間の主観評価で普遍的にSunoを上回ることを意味するものではありません。ここは冷静に見ておきたいポイントです。
また、オープンモデルなので自分の環境でローカル実行できます。推奨環境はBF16に対応したNVIDIA GPU、24GB VRAM、出力は48kHzステレオ。開発チームの検証では、214.85秒の楽曲を71.04秒で生成し、VRAM使用量のピークは14.08GiB(NVIDIA GeForce RTX 4090)だったそうです。
そして大事なのがライセンス・利用上の注意です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 無料=商用利用自由ではない | 無料公開であっても、商用利用が自由という意味ではありません |
| モデルの重み | CC BY-NC 4.0(非商用) |
| コードや第三者コンポーネント | 別のライセンスである場合があります |
| 商用利用する場合 | 各ライセンスの条件を必ず確認してください |
興味のある方は、ぜひ使ってみるといいと思います。僕がこれをおすすめする理由は、Sunoだけに依存してしまうと、Sunoがダメになった場合に全部が死んでしまうからです。保険の意味でも、別の選択肢を触っておくのは大切です。とはいえ僕自身は今、Sunoに完全に全振りしている状態なんですけどね。もしよかったら、皆さんは使ってみてください。
ステップ2:UMGがDistroKidを提訴、「AIスロップ」とは何か
続いては、UMGがDistroKidを提訴したニュースです。見出しは「ストリーミングを“AIスロップ”で汚染?」。AIスロップとは、AIで大量に作られた低品質なコンテンツを指す言葉です。
まず、DistroKidが何かを説明しておきますね。DistroKidは、いわゆる**ディストリビューター(配信代行)**です。Amazon Music、Apple Music、Instagram、YouTubeなど、いろいろなところに音楽を配信する仕組みを持っているサービスの1つです。同じ種類のサービスとしては、前回紹介したBelieveや、TuneCoreなどがありますね。
そして今言われているのが、DistroKidが一番AI音楽として審査を通りやすい、たくさんのAI音楽を配信できる確率が高い、ということ。だから人気なんです。実は僕も、これからAI音楽を配信していくときにはDistroKidを使おうかなと思っていました。
ところが、そのDistroKidが訴えられました。あまりにAI音楽であれば何でも通してしまうので、低品質なものが音楽市場にどんどん流れ込んでくる。それに対してユニバーサルミュージックグループ(UMG)が「それは嫌だよ」と提訴した、ということが問題になっています。
スライドをもとに、訴訟の中身をもう少し丁寧に見てみましょう。なお、この件は2026年9月15日に提起された訴訟段階の事案で、以下は主にUMGの公開訴状と関連する公式発表に基づく整理です。裁判所の事実認定はまだ行われていません。
何が起きたのか
- 2026年9月15日、UMG Recordings、Capitol Records、Capitol CMGが米デラウェア連邦地裁でDistroKidを提訴
- 訴えの柱は「欺瞞的取引慣行」+「著作権侵害」
- 争点は「AIそのもの」ではなく、AI生成物や侵害物を、人間アーティスト主導の正規リリースのように流通させたとされる点
- 訴状では「明確に開示されたAI生成音楽の流通自体を問題にしているのではない」と説明
UMGの主張(訴状の核心):AIスロップが市場を歪め、正当なアーティストの機会を奪っている
| 主張 | 内容 |
|---|---|
| A:AIスロップの氾濫 | DistroKidはAI生成・SEO最適化・大量投下の低品質トラックを配信し、市場とリスニング体験を汚染していると主張 |
| B:人間アーティストのように見せる誤認 | 「本物のアーティスト主導リリース」のような印象を与え、消費者・DSP・権利者を誤認させていると主張 |
| C:著作権侵害の継続 | 権利がないと認識した後も、同一音源を他サービスへ流通し続けたと主張 |
| D:収益と露出の希薄化 | 有限のストリーミング収益パイとリスナー注意をAIスパムや侵害物が奪い、正当なアーティストの収益・発見機会を圧迫すると主張 |
問題の構図は、「AIスロップ・侵害コンテンツの大量アップロード」→「検索・レコメンドの汚染」→「リスナーがそちらに流れる」→「正当なアーティストの収益・露出が減少」→「結果:音楽エコシステムの健全性が損なわれる」という流れです。
**訴状で挙げられた具体例(UMG側が訴状で提示した事例・数字)**も衝撃的です。
| 事例 | 内容 |
|---|---|
| DistroKidの自己主張として引用 | 音楽を「他社より10〜20倍速く」配信し、毎日「数万件」のトラック/アルバムを配信、「新規流通音楽の30〜40%」を占めると主張している、と訴状は引用 |
| Lofi Chill | 12か月で4,562曲リリース(月平均約380曲=毎月フルアルバム20〜30枚分に相当) |
| Chill Flow Radio | 12か月で1,901曲 |
| Mellow Vibes Radio | 12か月で1,615曲 |
| UMG調査 | DistroKid配信の侵害録音を「約2,000件」特定 |
| 訴状添付の例示 | 1,000件 |
法的論点としては、主な請求が「連邦著作権法違反」「17 U.S.C. §1401(a)に基づく保護対象音源への侵害主張」「デラウェア州の不正取引行為防止法違反」。求める救済は「虚偽・誤認を招く表現の差止め」「侵害トラックの削除」「常習的侵害アカウントの終了」「ファイルの差押え・廃棄」「法定損害賠償(1作品あたり最大15万ドル)または実損・利益返還」「弁護士費用等」です。**最大で1作品あたり15万ドル($150,000)**というのは、件数を考えるととてつもない金額になり得ます。
では、なぜこの裁判が大きいのか。スライドでは4つの視点で整理されています。
- AI音楽の線引き:AI利用の全面否定ではなく、「開示・真正性・権利確認」が争点
- 配信代行の責任:流通ゲートキーパーとして、KYC(本人確認)・権利確認・不正検知が問われる
- SEOと検索汚染:「chill」など汎用語を狙う大量投下で、検索結果やおすすめが歪む懸念
- ロイヤリティ分配:ストリーミング収益は有限のため、低品質大量投入は人間クリエイターの取り分を薄める
業界全体の対策も同時に進んでいます。Spotifyは2026年8月11日に「AI Personaバッジ」の導入を発表。AIで作られた人格のアーティスト表示にラベルを付け、原則としてAI Personaは編集・アルゴリズム推薦の対象外になります。IFPI(国際レコード産業連盟)は2026年9月14日に「Streaming Integrity Initiative」を発表し、①権利者・顧客確認(KYC)、②侵害・不正・AIリスクの審査、③検知・調査・是正、④業界間の情報共有、⑤システム強化と測定、の5本柱を掲げています。UMGも同イニシアチブの支持企業の一つです。
実務での読み解きとしては、①訴訟の本丸は「AI生成物の存在」ではなく「偽装・大量投下・権利侵害・不正流通」、②DSP・配信代行・権利者の責任分担が再定義される可能性、③AI生成であっても開示・権利処理・品質管理が重要、④独立アーティストや配信代行各社にもKYCやコンテンツ審査の強化圧力、⑤判決・和解・業界ルール次第で今後のAI音楽流通の標準が変わる可能性、の5点。スライドの結論は、この裁判は「AI音楽はOKかNGか」ではなく、「誰が責任を持って、何を、どんな表示と権利確認で流通させるのか」を問う象徴的事件だ、というものです。
ここで整理しておきたいのが、UMGの戦い方です。Suno側とはAI音楽の著作権で争っている。一方でDistroKidに対しては、AI音楽を世に出していく「流通」の部分で問題にしている。つまりUMGは、作る側と流通させる側の両方に目を光らせているわけです。
僕のように「DistroKidで配信しようかな」と考えていたクリエイターにとっては、ちょっと他人事ではないニュースですよね。ただ、訴状の論点を読む限り、問題視されているのは「AI音楽であること」そのものではなく、大量投下や偽装、権利侵害の部分です。まっとうにAI音楽を作り、表示を正しくして配信する人にとっては、むしろ健全化が進むことでメリットがある、という見方もできます。両方の視点を持っておきたいところです。
ステップ3:UMG×ElevenLabsの戦略的合意、敵ではなく「条件次第」
そして、この話にはまだ続きがあります。UMGがもう1つ登場するのが、UMGとElevenLabsの戦略的合意のニュースです。
ElevenLabsは、テキストを音声に変換する「テキスト to 音声合成」のAIサービスとして有名な会社です。UMGはこのElevenLabsと、なんと戦略的合意を結びました。ライセンス済みの音楽を土台にAI音楽を作ることができる、ということで、ここにはUMGがオッケーを出しているんです。
スライドの内容を整理します。発表は2026年9月10日、ライセンス供与+製品開発の複数年契約で、テーマは「ライセンス済み音楽を土台に、AIで“ファン共同創作”を広げる新構想」です。
| UMGの強み | ElevenLabsの強み |
|---|---|
| 世界的な音楽エンターテインメント企業 | AI音声/AIオーディオの研究開発 |
| 権利管理とライセンスの知見 | 音楽生成/編集の技術基盤 |
| アーティスト/ソングライターとのネットワーク | Music APIを提供 |
| 音楽IPとファン接点 | ElevenMusicを展開 |
中央にあるのが「ライセンス契約+共同製品開発」という戦略的協業で、これはElevenLabsにとってメジャーレーベルとの初契約になります。
今回の合意で何が始まるのか
- UMGとElevenLabsが複数年のライセンス契約と戦略的協業を発表
- ファン向けAI音楽作成プラットフォームをElevenLabsが開始予定
- アーティスト/ソングライター向けのAIオーディオ製品も共同開発
- 公開情報ではプラットフォームは「現在開発中」
新プラットフォームでできることは、「リミックス(楽曲を再構築し新たな魅力を生み出す)」「マッシュアップ(複数の楽曲を組み合わせ新しい表現をつくる)」「既存曲の新しい解釈(おなじみの楽曲に新たな視点を与える)」「パーソナライズされたボーカル体験(自分だけのボーカルで楽曲を楽しむ)」の4つ。参加アーティスト/ソングライターの楽曲をもとに、ファンが共創できる設計になっています。
経営トップの発言要旨も紹介されています。UMGのSir Lucian Graingeは、責任あるAIは発見を促し、アーティストとファンの結びつきを深め、創作コミュニティに新たな収益機会をもたらす、という趣旨を述べています。ElevenLabsのMati Staniszewskiは、UMGの権利管理とElevenLabsのAIを組み合わせ、ファン体験を広げながら、アーティストとソングライターの公正な補償を目指す、という趣旨です。
なぜ重要なのか。スライドでは「無許諾ではなく“許諾ベース”のAI活用」「人間の芸術性を尊重する姿勢」「アーティスト/ソングライターが価値を共有する考え方」「ファンとの関係を深める新しい体験」「新たな収益機会の創出を狙う」の5つが挙げられています。
既存サービスとの違いも押さえておきましょう。新プラットフォームは「ライセンス済み音楽」「参加アーティストとの共創」「ファン体験が中心」。一方、既存のElevenLabs製品は「Music API(企業/開発者向けの音楽モデルAPI)」と「ElevenMusic(オリジナル楽曲の生成・編集アプリ)」で、新プラットフォームは既存製品とは別提供です。今後の流れは、発表(2026年9月10日)→プラットフォーム開発(現在開発中、今後詳細が明らかに)→追加の製品・ファン体験へ拡張、というステップ。未公表/今後の焦点としては、参加アーティスト名、提供開始時期、料金/収益分配の詳細、利用地域や権利範囲が残っています。
さて、ここからが僕の見立てです。おそらくUMG側も分かっているんですよね。Sunoを訴えてはいるけれど、結局こっち側ではElevenLabsとこういう形で組んでいる。つまり、世の中の潮目、動きを今じっと見ているんじゃないかなと思うんです。
この辺りで上手に駆け引きをしている段階だと、僕は見ています。だから、いずれはSunoともうまく和解していくんじゃないかなと思うんですね。裁判を起こして勝つことによって、いい条件で契約をしたい、ということだけなんだと思います。当然、裁判を起こして自分たちが勝つことができれば、いい条件で契約を結ぶことができます。それをやっているんじゃないかな、と。
| 相手 | UMGの姿勢 | 争点・目的 |
|---|---|---|
| Suno | 訴訟で対立 | AI音楽の著作権(学習・生成) |
| DistroKid | 2026年9月15日に提訴 | AI音楽の流通(偽装・大量投下・権利侵害) |
| ElevenLabs | 2026年9月10日に戦略的合意 | ライセンス済み音楽を土台にしたファン共同創作 |
こうして並べると、UMGは「AI反対」ではなく、自分たちの権利がきちんと守られ、対価が得られる条件ならAIと組む、という一貫した姿勢であることが分かります。ElevenLabsのほうでは、UMGに関連する著作権をクリアした状態の音楽を出力できるようになるわけなので、これもさっきのYuE2と同じように、使ってみてもいいかなと思っています。
チャート・検索・デバイス、音楽の「ルールと入口」が書き換わる
「起」ではAI音楽を作る側と流通させる側の攻防を見てきました。「承」では、その音楽がどう評価され、どう探され、どう見つけられるのかという「ルールと入口」の変化を見ていきます。ヒットチャートのルール、音楽サブスクの検索方法、そして腕時計が音を聴くという新しいデバイス体験。どれも、私たちリスナーや作り手の日常に直結する話です。
ステップ4:オーストラリアARIAがAI生成曲をチャートから除外
続いてはオーストラリアの話です。AIで作った曲をヒットチャートから除外することが決まりました。これは世界的に今こういう動きが出ていて、その先陣を切った形です。
スライドのタイトルは「AIで作った曲、ヒットチャートから除外 豪州ARIAの新ルール 人間の創作を守るチャート基準」。そして副題が大事で、**禁止はAI利用そのものではなく、「主要部分をAIが作った録音」**です。
いわゆる「ポン出し」、つまりテキストからAIだけで作った音楽はダメですよ、ということでチャート対象外になります。けれど、人間が作曲し、リード歌唱や主要楽器は人間が演奏していて、AIが一部の表現を補助している、という形であればチャートの対象になります。またAIがマスタリングをしている、ステム分離をしている、リバーブをかけている、ドラムマシンをAIがやっている、といったものも問題ないよ、ということです。全て生成するのはダメ、というルールなんですね。
ARIAの新ルールでは、AI活用を3つに分類しています(FAQに基づく分類と、チャートの対象可否)。
| 分類 | 定義 | 例 | チャート |
|---|---|---|---|
| AI-generated(完全AI生成) | 主要な創作要素を生成AIが作った録音 | AI生成のリードボーカル、主要楽器パート、ほぼ全編プロンプト生成 | 対象外(×) |
| AI-assisted(AI補助) | 人間が作曲・リード歌唱・主要演奏を担当し、AIは一部表現を補助 | 人間のリード歌唱+AIバックボーカル | 対象(○) |
| AI in production(制作工程でのAI活用) | 制作工程でのAI活用 | AIマスタリング、ステム分離、リバーブ、AIドラムマシン、演奏者が弾くAI由来の音色パッチ等 | 対象(○) |
チャートの適格条件は、次の3つを満たすことです。
- 実質的に人間が作った録音であること(主要な創作要素は人間が担当していること)
- ストリーム/チャート操作の懸念がないこと(不正な再生操作など、チャートの公正性を損なう行為がないこと)
- 著作権・関連権など適用法令を遵守していること
2つ目は、AIによってストリームやチャートの操作ができるようになってしまったので、そういうことをやっているものはダメですよ、という意味ですね。3つ目は、著作権や関連権を遵守しているなら問題ないよ、という条件です。なおARIAは、IFPIの基準のうち「AIサービスが正式に許諾され合法であること」については、ライセンス状況が流動的なため、現時点ではチャート適格性に直接適用していない、とFAQで説明しています。
これまでの経緯は次の通りです。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年7月10日 | IFPIが「AI-Generated」「AI-Assisted」のラベル標準を発表 |
| 2026年7月30日 | IFPIが世界的なチャート原則を公表 |
| 2026年8月25日 | ARIAが生成AIを使った録音のチャート適格性ルールを発表 |
| 2026年8月28日 | 新基準を公開・適用開始(2026年8月31日付チャートから適用) |
注目された事例として、豪州のDJ Josh FawazによるMadonna「Like a Prayer」のリワークが紹介されています。2026年7月に豪州のラジオ全国エアプレイチャートで1位、ARIA Top 20 Australian Singlesで4位(最高2位)、Dance Singlesでも上位にランクイン。その後Spotify上で生成AIボーカルとAIドラムのクレジットが追加され、AI利用をめぐって豪州の音楽業界を中心に大きな議論を呼びました。こうした事例が、今回のルール整備の背景にあるわけです。
何が変わるのか、ポイントを整理すると、①AI音楽の排除ではない(AIの利用そのものを禁止するものではなく、人間が主体の創作は引き続きチャートの対象)、②重要なのは「人間主体かどうか」(主要部分をAIが作った録音は対象外、人間の創作を評価するチャートへ)、③透明性と公正さの強化(チャート操作の防止や著作権の順守など、より信頼できる音楽チャートを目指す)、④ARIA Awardsも同じ考え方(チャート対象外の録音はARIA Awardsも対象外、場合によっては認定やNo.1アワードの撤回もあり得る)の4点です。
Suno側も、こうした基準がクリアになってくれば、かなり状況が整理されてくると思います。今はまだ揉めていますし、僕はSunoのV6モデルがこれから評価されていくかなと思っているのですが、世界ではこうしたルールづくりが進んでいる、ということは押さえておきましょう。
僕のようにSunoで曲を作っている立場からすると、「ポン出しはチャート対象外」というのは厳しく感じる面もあります。一方で、人間が歌う、人間が主要な演奏をする、AIは補助に回る、という作り方なら対象になるわけです。AIを使うか使わないかではなく、人間がどこを担うか。この視点は、これからAI音楽を仕事にしていく人にとって大きなヒントになると思います。
ステップ5:楽天ミュージックに「会話で探す」エージェント型AI
続いては、楽天ミュージックにエージェント型AI搭載のニュースです。楽天が出している音楽聴き放題サービスで、先ほどのApple MusicやAmazon Musicと同じような形のものに「楽天ミュージック(Rakuten Music)」があります。
この中で、AIに「こんな曲を聴きたいんだけど」とチャットで話しかけると、候補が出てくるようになりました。いわゆるキーワード検索やカテゴリー検索ではなく、チャット検索が導入されたということです。
スライドの内容を整理します。楽天グループは2026年9月16日、定額制音楽聴き放題サービス「Rakuten Music」のスマートフォンアプリに、エージェント型AIツール「Rakuten AI for Music」を搭載したと発表しました。AIとの自然な対話を通じて、楽曲・アーティスト・アルバム・プレイリストを検索できるようになっています。
何ができるのか
- 自然言語で検索:「○○の曲を探したい」「今の気分に合う音楽を聞きたい」などでOK
- 検索対象:アーティスト/楽曲/アルバム/プレイリスト
- ランキング・話題のアーティスト・楽曲トレンドも反映
- 気分や興味に合わせて、おすすめを提案
使い方の流れ(4ステップ)
- ホーム画面の「AIに聞いてみる」欄、または専用タブへ
- 自然な言葉で質問(例:「今の気分に合う音楽を聞きたい」)
- AIが候補を提案
- 結果ページへ遷移して、そのまま再生(楽曲検索時は、その楽曲を含むアルバムページへ遷移)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | Rakuten Musicの有料プラン利用者 |
| 対象外 | バンドルプラン |
| 提供箇所 | スマートフォンアプリ |
| Android版 | 一部ユーザーから順次配信、今後拡大予定 |
| iOS版 | アプリで利用可能 |
ポイントは3つ。「キーワード検索→会話型検索へ(難しいキーワードは不要、自然な会話で見つかる)」「“探す”だけでなく“出会う”体験を強化(気分や興味に合わせて新しい音楽との出会いを提案)」「検索から再生までシームレス(提案された楽曲をすぐに再生でき、スムーズに楽しめる)」です。
今後の進化としては、楽天はユーザーの利用状況や音楽の好みも反映しながら精度を高め、よりパーソナライズされた音楽体験の提供を目指すとしています。また「Rakuten AI」構想の一環として、AIエージェントを楽天エコシステムのゲートウェイに位置付けています。サービス背景としては、定額制の音楽聴き放題サービスで約1億曲規模の楽曲を配信。有料プラン例はスタンダード980円/楽天カード・モバイル会員780円/学生480円/ライト500円で、バンドルプランは最大10時間まで無料(AI機能は対象外)です。スライドの解説にある通り、これは音楽サブスクの検索を「入力型」から「相談型」へ進化させる取り組みで、特に「何を聴くか決まっていない」ユーザーにとって、発見性の向上が大きな価値になります。
ここで押さえておいてほしいのは、あらゆるインターフェイスが、カテゴリー検索→キーワード検索→チャット検索という形で大きくステージが変わっているということです。
| 段階 | 探し方 | 例 |
|---|---|---|
| 第1段階 | カテゴリー検索 | 「J-POP」「ロック」などのジャンルから選ぶ |
| 第2段階 | キーワード検索 | 曲名やアーティスト名を入力する |
| 第3段階 | チャット検索(会話型) | 「今の気分に合う曲を聴きたい」とAIに相談する |
これは音楽に限らず、ECでも、地図でも、検索エンジンでも同じ流れです。僕がセミナーでもよくお伝えしている変化ですが、音楽サブスクにもこの波がしっかり来た、というニュースですね。
ステップ6:Apple Watchが「周囲の音」を理解する時代へ
続いては、Apple Watchが周囲の音を理解する時代へというニュースです。
AppleはShazamを買収したことで、いわゆる「何聴いてるの?」ということですね、音楽を流すとどの曲かを当てることができるアプリを手に入れました。これをApple Watchにも搭載するということです。Google Pixelを持っている方はお分かりのように、Pixelでは既に画面に、今流れている曲が出てきますよね。それと同じようなことがApple Watchでもできるようになる、ということなんです。
ところが一方で、これができるということは、曲を聴ける状態になっているのであれば、当然、曲以外のものも聴いていることになります。極端に言えば盗聴していると言えなくもないので、この辺りはどうなの、ということが問題になっています。
スライドの内容を整理します。タイトルは「Apple Watchが“周囲の音を理解する”時代へ Shazam統合×Audio Intelligence|便利さとプライバシーをどう両立?」。対象はApple Watch Series 12/Ultra 4で、S11チップで実現する新しい体験です。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| ①Sound Recognition(サウンド認識) | サイレン、アラーム、ドアベル、赤ちゃんの泣き声など重要な音の発生源を特定し、通知 |
| ②Live Rewind(ライブ早戻し) | 直前の15秒間の会話をテキストに書き起こし、聞き逃した一言を振り返れる |
| ③Siri Recap(Siriリキャップ) | 1日の会話の概要や要点をまとめ、後からタイトル付きで確認できる(打ち合わせの内容、家族との会話、やることリストなど) |
| ④Shazam(音楽認識) | 周囲で流れる音楽を検出し、曲名・アーティストをSmart Stackに表示。気になった曲をすぐに再生・保存 |
Audio Intelligenceとは、S11チップによって実現した、常時オンのマイクとAIで周囲の音を理解する機能群です。Shazamはその一部で、4つの機能が連携して動作します。S11チップにより、高度なオンデバイス処理と、Secure Enclaveによるセキュアな処理を実現しているとのことです。
なぜ物議を醸しているのか(プライバシーの懸念)。常時オンのマイクとAIの組み合わせにより、日常の生活音や会話が常に機械の解釈にさらされるため、プライバシーの観点から懸念の声が上がっています。便利さの裏で「いつ・どこまで聞かれているのか」という心理的・制度的な不安が議論を呼んでいます。具体的には「生活音が常に解析される?」「会話のプライバシーは?」「データの使われ方は?」「法規制は追いつくのか?」といった点です。
**Appleのプライバシー対策(公式の説明に基づく)**も紹介されています。各機能はオプトイン(ユーザーが有効化)で提供、S11内のSecure Enclaveで音声処理を隔離、Appleは生の音声録音を作成・保存しないと説明、ミュージック検出自体は端末上で動作し録音・保存しない、Shazam照合時は音声フィンガープリントとIPアドレス等をAppleへ送信、リクエストは端末で生成されるランダムIDに関連付けられApple Accountとは直接紐づけない、という内容です。
他社との比較も押さえておきましょう。
| 項目 | Google Pixel「Now Playing」 | Apple WatchのShazam |
|---|---|---|
| 照合方法 | 基本的に端末内の楽曲DBで照合(オフラインでも動作) | アクティブなインターネット接続が必要 |
| 送信するもの | 端末で特定できない場合はクラウド検索を行うことがあり、その場合も短いデジタル音声フィンガープリントのみを送信し、生音声や会話は送らないとGoogleが説明 | 聴き取った音の一部(音声フィンガープリント)をAppleへ送信して楽曲を特定 |
| 録音・保存 | ― | 端末上でミュージック検出自体は動作し、録音・保存しない |
| ID管理 | ― | リクエストは端末生成のランダムIDに関連付けられ、Apple Accountとは直接紐づけない |
スライドの「重要なポイント」にある通り、「Pixelは完全オフライン」vs「Shazamは生音声を常にアップロード」という比較は単純化しすぎで、正確ではありません。両者は仕組みが異なり、いずれもプライバシーに配慮した設計を採用しています。利用環境や設定によって挙動が変わる点に注意が必要です。
そして音楽業界への意味。店・街・動画・イベントで流れる曲→即認識→Apple Music等で再生・保存・購買へ。あらゆる場面の音楽が、より多くの人に届く時代の入口です。スライドの言葉を借りれば、腕時計が音の世界の水先案内人になる、というイメージですね。
Google Pixelに搭載されているNow Playing機能と同じものが、今回Apple Watchに入ってくる。そうなると、レコード会社、先ほどのUMGやソニーグループなどが反対してくる、というのも分かるのではないでしょうか。どこで何の曲が流れているかを巨大プラットフォームが把握できるようになるわけですからね。だから、この辺の条件をどうするかがこれからの課題かなと思っています。便利さとプライバシー、そして権利者との関係。この3つのバランスをどう取るのかに注目です。
AIが仕事を置き換え、それでも音楽市場は伸びている
ここで話の流れが少し変わります。「起」と「承」では、AI音楽をめぐる対立やルールづくりを見てきました。すると「AIが来たら音楽業界は縮んでしまうのでは?」と思う方もいるかもしれません。ところが実際には、AIが一部の仕事を置き換える一方で、音楽市場そのものは伸びている。この一見矛盾する2つの現実を、「転」のパートで見ていきます。
ステップ7:ヤマハ「Piano Sheet Converter β」で耳コピが約3分に
これ、ネットでも話題になっていますよね。ヤマハが今出している**「Piano Sheet Converter」ベータ版**です。あなたの好きな音楽を、ピアノで弾けるように楽譜にしてくれる、というツールです。
音源ファイルを読み込むだけで、約3分でピアノ譜を自動生成します。まだベータ版なので無料で使えます。精度もベータ版なので確実ではないのですが、いろいろな人がアップしているものを見る限りでは、ちゃんと曲になっているので、これは面白いですね。
いわゆる耳コピをして、今まで楽譜を起こしていた人たちが要らなくなる。それが無料でできる、ということになります。
スライドの内容を整理します。「なんでもピアノの楽譜になる? Piano Sheet Converter β」は、ヤマハが2026年9月に公開したオープンβ版のデスクトップアプリです。
こんな悩みに応えるツールとして紹介されています。「弾きたい曲なのに市販の楽譜がない…」「耳コピに何時間もかかってしまう…」「自分のレベルに合った難易度の楽譜がほしい…」「頭の中のメロディや自分の演奏を譜面として残したい…」。
使い方の3ステップ
- 音源を読み込む:好きな音源ファイル(MP3、WAV、M4Aなど)をドラッグ&ドロップ
- 自動楽譜化:AIが音源を解析し、約3分でピアノ譜に
- 編集・エクスポート:アプリ内で試聴・編集が可能。仕上げてPDF/MIDI/MusicXMLで書き出し
選べる生成条件は、①難易度(4段階:入門・初級・中級・上級)、②調(キー:おまかせ・簡単キー・原曲キー)、③長さ(フル・1コーラス)、④スタイル(ソロ譜・伴奏譜)。目的に合わせて、自分だけの楽譜を生成できます。
こんな用途におすすめ、として挙げられているのが「市販譜がない曲をピアノで弾きたい」「耳コピの時短に」「自分の演奏レベルに合わせたアレンジに」「頭の中の演奏や録音を譜面として残す」「作曲・編曲のアイデア出しに」です。
ただし、スライドには現在のβ版では、ポップス曲の精度が最も高いとも書かれています。「どんな音源でも完全に正確な楽譜ができる」わけではなく、「なんでもピアノ譜」はキャッチーな表現ですが、実際は音源や編成によって精度に差があります。ポップスを中心に標準的な楽曲で高い精度が期待でき、複雑な編成の曲などは誤りが含まれる場合があります。
料金の比較も出ています。今のところ、こんな感じです。
| プラン | FREE(無料) | BASIC(月額) | ADVANCED(月額) |
|---|---|---|---|
| 料金 | ¥0 | ¥890 | ¥1,980 → β期間中は¥0 |
| 楽譜化回数 | 5回/月 | 40回/月 | 無制限 |
| 保存ファイル数 | 5ファイル | 50ファイル | 100ファイル |
| 試聴 | ○ | ○ | ○ |
| 編集 | ― | ○ | ○ |
| 書き出し形式 | ― | PDF/MIDI/MusicXML |
0円のFREEプランで、月5回までなら楽譜化が無料でできます。これはまあまあですよね。Freeプランは登録不要で、すぐに利用開始できます。さらに、β期間限定でADVANCED機能が無料開放されています。通常は月額1,980円のADVANCED機能が、β期間中は0円。β期間は2026年10月末まで予定(変更の可能性あり)とのことです。
対応OSはWindows 10/11(64bit)とmacOS 13 Ventura以降。正式版はWindows/macOSが2026年秋予定、iOS/Androidが2027年春予定です。
重要な注意事項もあります。生成された楽譜の商用利用はできません(私的利用の範囲でご利用ください)。EEAおよびその他のGDPR適用地域では、現時点で利用できません。生成される楽譜の精度は音源や編成によって異なり、すべての音源で完全に正確な楽譜が得られるものではありません。本サービスの内容・仕様・提供期間は、予告なく変更される可能性があります。スライドの結論は「耳コピ数時間→約3分。採譜の“たたき台”を一気に作るツールとして強力です」。
これが面白いなと思っているのは、自分で耳コピして譜面にし、YouTubeで宣伝して楽譜を販売している人たちがいるんですね。この人たちの仕事は、全部なくなってしまうかもしれない、ということです。人間が今まで耳コピしてやっていたことが、AIで代替できるようになってきたわけです。
ただ、両面から見ておきたいのは、スライドにある通り生成された楽譜は商用利用ができない点と、複雑な編成では誤りが含まれる点です。ですから、「AIで作ったたたき台」を、人間の耳と経験で仕上げる、という形で価値を出す道は残ります。「作業」はAIに置き換わり、「品質保証」や「アレンジの妙」は人間に残る。これはAI時代のあらゆる仕事に共通するパターンだと僕は思っています。
ステップ8:SoundCloudが「楽曲直販」へ、Bandcampとの競合
ここで、今回の配信では時間の都合で触れきれなかったスライドも1枚、補足として紹介しておきます。SoundCloudが「楽曲直販」へ進化したというニュースです。
SoundCloudは「発見する場所」から「収益につながる場所」へ拡張しようとしています。プロフィールや楽曲ページからそのまま購入できるベータ機能を導入し、ダウンロード販売の導線を内製化し始めました。
何が発表されたのか
- SoundCloudが「Paid Downloads(有料ダウンロード)」のベータ版を導入
- 一部の対象アーティストから開始
- ファンはアプリ/プラットフォーム内で購入完結
- 購入後はWAVまたはMP3をダウンロード可能
購入フローは「楽曲を見つける」→「Buyをタップ」→「決済」→「Collectionに追加・ダウンロード」の4ステップ。購入後は端末に保存可能、オフライン再生にも対応、価格に加えて税金等が加算される場合もあります。
アーティスト側の仕組みとしては、販売できるのは「米国の対象Artist Proクリエイター」「対象トラックであること」「SoundCloudの収益化要件を満たすこと」「対応地域/権利条件を満たすこと」。設定方法は「Artist Studio on webで設定」「“Sell track”を選択」「価格設定」「任意で追加支援額(追加contribution)も設定可能」です。収益面のポイントは、販売収益は「適用される手数料・税金」を除きアーティスト100%。SoundCloud内で完結する直接収益導線で、外部販売サイトへ送客しなくてよく、ストリーミング収益に加わる新たな収入源になります。
なぜこの機能が必要だったのか(SoundCloud発表ベース)。外部の販売サイトへのリンクを掲載しているアーティストが25万人以上、これまでに外部で販売された楽曲数が240万曲以上、楽曲購入のため外部サイトへ移動するユーザーが年間50万人以上、「すでに他プラットフォームで販売中or今後ダウンロード販売したい」と答えたアーティストが28%。つまり需要は既に存在していて、SoundCloudは外部送客を自社内販売へ取り込みたい、ということです。
| 比較項目 | SoundCloud | Bandcamp |
|---|---|---|
| 基本ポジション | 発見・再生・コミュニティ中心の音楽プラットフォーム | 直販・コミュニティ中心のオンライン音楽ストア |
| 販売体験 | プロフィール/楽曲ページからそのまま購入 | 作品ページ/アーティストページで購入 |
| 販売できるもの | 現時点では有料ダウンロード曲が中心 | デジタル音源、レコード、CD、カセット、Tシャツ等 |
| 収益配分の見え方 | 有料ダウンロードは100%受け取り(税・適用手数料除く) | 平均82%がアーティスト/レーベルへ |
| 成熟度 | 新ベータ機能 | 長年の直販実績を持つ成熟市場 |
Bandcampの強みは「直販の本命」であること。アーティストとファンを直接つなぐ音楽コミュニティで、ファンは累計18億ドルをアーティストへ支払い、過去1年で2.25億ドルを消費、平均82%がアーティスト/レーベルへ渡っています。販売されたアイテム数(累計・公式データ)は、デジタルアルバム15.7M、トラック11.4M、レコード1.6M、CD850k、カセット250k、Tシャツ50kです。
今回のインパクトは、アーティストにとっては「見つけてもらう場」と「買ってもらう場」が近づき収益導線が短くなること、ファンにとっては聴く→気に入る→買うまでを同じ体験内で完結できること。競争の焦点は、SoundCloudの発見力とBandcampの直販の深さで、今後は「誰がより直接支援を集めやすいか」が勝負になります。今後の注目ポイントは、①ベータ版が米国外やより多くのアーティストへ広がるか、②アルバム販売やグッズ販売まで拡張するか、③既存のFan Support、Merch、Vinylとどう連動するか、④Bandcampの優位性に対してどこまで迫れるか。SoundCloudのCEOは、アーティストは「ひとつの場所・ひとつのプラットフォーム」でファンを増やし、コミュニティを築き、直接支援を得られるべきだ、という趣旨のコメントを出しています。
この話は、このあと紹介する「プレイリスト&アルゴリズム・マーケティングの終焉」ともつながってきます。再生回数ではなく、ファンから直接支援される関係。これが次の時代のキーワードになりそうです。
ステップ9:EUの録音原盤市場が中国を上回る伸び
続いては、EUの録音原盤市場が、中国を上回る伸びを達成したというニュースです。
まず「原盤権」について説明しておきますね。原盤権とは、音楽などを録音・編集して完成した音源(マスター音源)そのものに対して発生する権利で、法律上は「レコード製作者の権利」という著作隣接権の一種として定められています。作詞・作曲の著作権とは別に、「録音された音源」そのものに対する権利がある、ということですね。その原盤による売上が伸びていますよ、という非常にいいニュースです。
スライドの内容を整理します。IFPI「Music in the EU 2026」で見る欧州音楽市場の現在地、2025年のデータです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| EUの録音原盤売上(2025年) | 60億ユーロ(約1兆2741億円) |
| 前年比 | +5.1% |
| 世界売上に占めるEUの比率 | 21.3% |
| 世界Top20市場のうちEU加盟国 | 9市場(合計51億ユーロ) |
| 売上の増加額(2024年→2025年)EU | +2億9,300万ユーロ |
| 売上の増加額(2024年→2025年)中国 | +2億8,900万ユーロ |
増加額ではEUが中国を約400万ユーロ上回った、ということです。なお、これは成長率の比較ではなく、売上の増加額の比較です。
なぜ伸びたのか。成長の4つの要因は、①有料ストリーミングの加入者が大幅に増加、②ストリーミングの価格引き上げ、③東欧・南欧など複数市場で2桁成長、④国内アーティストの強さ(EU加盟国のアーティストが支持を集める)です。
成長の内訳(売上の増加額 2024年→2025年)は、有料ストリーミングが+2億2,000万ユーロ、広告付きストリーミングが+4,800万ユーロ、物理メディア(アナログレコードを含む)が+5,800万ユーロ。ストリーミングはEUの録音原盤売上の約66%を占めています。
高成長を記録した主なEU加盟国(前年比成長率 2025年)は、ルーマニア+16.1%、スロバキア・バルト諸国+15.9%、ハンガリー+15.5%、スロベニア+14.2%、ポーランド・スペイン+13.7%、ブルガリア+13.2%、ギリシャ+12.7%、イタリア+10.7%です。
有料ストリーミングの普及率(総人口に対するストリーミング契約者数の割合)は、EUが27%、英国が47%、米国が54%。EUはまだまだ伸びしろが大きいということです。Top10に占める国内アーティスト曲の割合(2025年末・平均)は、EU加盟国が53.5%、その他の国・地域が46.8%で、他のEU加盟国アーティストを含めると+5.2%。次の注目点は、低い有料ストリーミング普及率(EU 27%)が今後の成長余地であること、物理メディアでEU勢が強くTop10のビニール市場の半数がEUであること、スペインのビニール市場がTop10内で+44.9%成長していることです。
IFPIの政策的メッセージ(事実データではなく、IFPIの提言)としては、「既存法の実効的な実施」「権利保護」「責任あるAI」「透明性」が挙げられています。結論は、EUはすでに巨大市場だが、普及率の低さが次の成長余地、ということです。
さっきのSunoの話にもつながるのですが、ポイントは原盤権がどうなるかなんですよね。AI音楽を作ったときに、それがいわゆる「自分が持っているもの」になるのかどうか。今の場合、Sunoでは有料版にすると自分のものにすることができるのですが、こういう権利の扱いがこれから問題になってくるかなと思います。
ただ、音楽市場はこれだけ伸びているわけです。これを踏まえると、レコード会社があまり反対ばかりしているのもいけないのかな?というムードは出てきている、ということですね。
ステップ10:米国の録音原盤市場は上半期で60億ドルに迫る
続いては、アメリカの録音原盤市場が、上半期で60億ドルに迫るというニュースです。こちらも成長しています。
全米レコード協会(RIAA)によると、2026年上半期(1〜6月)の米録音原盤市場は卸売ベースで59億7,490万ドル。前年同期比6.9%増となり、主要収益源の多角化が進みました。
| 指標 | 数値 | 前年比 |
|---|---|---|
| 総売上高 | 59億7,490万ドル | +6.9% |
| ストリーミング比率 | 82%(48億9,070万ドル) | ― |
| フィジカル売上 | 7億3,150万ドル | +25.9% |
| シンク売上 | 2億3,180万ドル | +18.2% |
ストリーミングが伸びていることはもちろんですが、実はフィジカル、いわゆる物理的なCDのようなものも伸びています。そしてシンクも大幅に成長と書かれています。シンクとは何かというと、たとえば何かの映像などに曲が使われた場合の収入のことです。いわゆる著作権収入のようなものですね。こちらも伸びているということなので、これもいいことかなと思っています。
市場構成の内訳(2026年上半期・卸売ベース)は、プレミアム有料サブスク31億1,260万ドル(約52%)、無料ストリーミング8億9,960万ドル(約15%)、その他ストリーミング6億3,940万ドル(約11%)、フィジカル7億3,150万ドル(約12%)、その他(シンク・ダウンロードなど)約6%。市場の82%をストリーミングが占有しています。
ストリーミングの詳細を見ると、ストリーミング収入は48億9,070万ドル(+4.7%)。内訳は、プレミアム有料サブスク31億1,260万ドル(+7.8%、契約数1億1,110万件で+5.5%)、非プレミアム有料サブスク2億3,910万ドル(-9.0%)、無料ストリーミング8億9,960万ドル(+3.7%)、その他ストリーミング6億3,940万ドル(-2.1%)。値上げ効果もあり、有料サブスク収入の伸びが契約数の伸びを上回りました。
フィジカル市場が急伸していて、特にCDの伸びが目立ちます。
| 種類 | 売上 | 出荷・販売 |
|---|---|---|
| アナログレコード | 5億4,380万ドル(+17.7%) | 出荷2,650万枚(+20.9%) |
| CD | 1億7,110万ドル(+58.6%) | 出荷1,750万枚(+45.7%) |
| その他物理メディア | 1,650万ドル(+44.9%) | 販売160万個(+73.4%) |
一方、減少した分野もあります。ダウンロード売上は1億2,100万ドル(-12.7%)、非プレミアム有料サブスクは-9.0%、その他ストリーミングは-2.1%。旧来型のデジタル販売は縮小が続いています。
この統計から見えることは4つ。①市場の中心は依然ストリーミングだが、成長率ではフィジカルとシンクが目立つ。②有料サブスクは「会員数の拡大」だけでなく「単価上昇」でも収益を押し上げた。③CD・レコード・シンクが伸び、複数の収益出口を持つ構造が定着しつつある。④「聴くのは配信、推すのはフィジカル」という消費行動がより鮮明になっている。なお数値は卸売ベースで、四捨五入により合計が一致しない場合があります(出典:RIAA「2026 Mid-Year Recorded Music Revenue Report」2026年9月1日発表)。
EUも米国も、全体的にAI音楽を含め、音楽市場は盛り上がっているわけです。だからこそ、AIとどう折り合いをつけるか。これが今の音楽業界の最大のテーマかなと思っています。パイ全体が大きくなっているなら、AIを締め出すことだけに力を注ぐよりも、先ほどのUMG×ElevenLabsのように「ルールを決めて一緒に稼ぐ」方向に進むのが自然ではないか。僕はそう見ています。
Spotifyの進化と「リーチから定着へ」という結論
最後の「結」では、世界最大級の音楽ストリーミングサービスであるSpotifyの細かな変化を中心に、音楽の「データ」と「マーケティング」の話で締めくくります。ここまで見てきた「作る」「流通させる」「評価される」「探される」という流れが、最終的にどうやってファンに届き、どうやってファンに残るのかという一点に集約されていきます。
ステップ11:子ども・家族向け音楽を「おすすめ学習」から除外
続いていきましょう。Spotifyが、子ども・家族向け音楽を「おすすめ学習」から除外できるようになりました。
Spotifyには、プレイリストなどにいろいろな設定があります。これまでは、子ども向け音楽の再生履歴がそのまま自分のおすすめに反映されていました。これを「学習しない」という設定にできるようになった、ということです。家族それぞれで、ちょうどいい音楽体験をしよう、という狙いがあるそうです。
スライドの内容を整理します。2026年9月15日発表、モバイルで全ユーザーへ順次提供です。
何が変わったのか
- Spotifyは新しい設定「Include kids and family music in taste profile(子ども・家族向け音楽をテイストプロファイルに含める)」を提供開始
- これをオフにすると、子ども・家族向け音楽の再生履歴が「おすすめ」「リスニング傾向」「Spotifyまとめ(Wrapped)」に反映されにくくなる
- 対象はモバイル端末のFree/Premiumユーザー
- 世界展開で順次ロールアウト
**このアップデートのポイント(3つの要約)**は、①子ども向け楽曲の再生履歴が、自分向けのおすすめやWrappedに影響しにくくなる、②設定はワンタップで切替可能、③検索・再生・プレイリスト作成は今まで通り可能、の3つです。
| 設定 | 動き | 影響先 |
|---|---|---|
| ON(初期状態) | 子ども向け音楽の再生履歴が、テイストプロファイルに反映される | Discover Weekly、Daily Mix、Home(おすすめ)、Wrappedに影響 |
| OFF | 再生はできるが、おすすめ学習・リスニング傾向に反映しない | 上記への影響を除外 |
つまり**「再生はできる、でも“学習させない”設定」**ということですね。
なぜ注目されるのか。親が車内や家庭で童謡・アニメ曲を流すと、自分のおすすめが「子ども曲だらけ」になる問題がありました。年末のWrappedでトップ曲・トップアーティストが子ども向けコンテンツに偏る悩みも多かったそうです。従来も「特定の曲・プレイリストをテイストプロファイルから除外」する機能はありましたが、1つずつ手動で除外する必要があり、手間が大きかった。今回は「カテゴリ丸ごと一括除外」できるのが大きな進化です。
「子ども・家族向け音楽」の例としては、アニメ映画・実写映画のサウンドトラック、家族向けテレビ番組の主題歌・楽曲、家族向けエンタメブランドやキャラクターの楽曲、人気曲のファミリー向けカバー、童謡・子守唄、みんなで歌える楽曲・教育ソング・アクティビティ音楽、家族向けのノベルティ曲・パロディ曲が挙げられています。含まれない場合があるものは、ホワイトノイズ/ブラウンノイズ/睡眠音、自然音・環境音、Lo-fi/インスト/勉強用音楽、一般的なノンエクスプリシット曲、ポッドキャスト/オーディオブック(将来対応の可能性あり)です。
設定方法(モバイル)は、①左上のプロフィール画像をタップ、②「設定とプライバシー」を開く、③「Content and display」を選ぶ、④「Include kids and family music in taste profile」をオフ。反映まで最大48時間で、Discover Weeklyなど一部の週次プレイリストは次回更新時に反映されます。
メリットは、自分の音楽の好みに近いおすすめを維持しやすい、Wrappedが「本当に自分が聴いた傾向」に近づく、家族でSpotifyを使っても趣味が混ざりにくい、子どもの好きな曲を気兼ねなく再生できる、の4つ。注意点として、初期状態では「含める」設定がオン、設定を切っても子ども向け楽曲を再生できなくなるわけではない、あくまでおすすめへの影響を外す機能、という3点があります。
関連するファミリー機能として、Spotifyは**13歳以下(または地域相当年齢)の子ども向けに「Managed accounts」**も展開しています。子ども専用の音楽体験を用意しつつ、保護者がコントロールでき、子ども自身のライブラリや年末Wrappedも持てます。今回の新設定は、親のアカウント側の「おすすめ汚染」対策として相性が良い、という位置づけです。13歳以下という年齢は、このManaged accountsの対象年齢のことですね。
正直に言うと、僕はこういう聴き方をしないので、これの良さは全然分からないんです(笑)。1つのアカウントを親子で共有したり、車の中で子どもの曲を流したりしているから、こういうことが起きるんでしょうね。そういう悩みに応える機能が、今回入ってきたということです。スライドのまとめにある通り、Spotifyは「再生履歴を残す」だけでなく、「何を好みとして学習させるか」をユーザーが選べる段階に入りました。音楽サブスクが「家族インフラ」化した時代を象徴する機能と言えます。
ステップ12:SpotifyがGeniusと提携し音楽動画を拡大
続いて、SpotifyがGeniusと提携し、音楽動画シリーズの配信を拡大するというニュースです。
いよいよSpotifyが、音楽配信サービスから、YouTubeのような動画配信サービスになろうとしています。僕らがやっているポッドキャストのほうも、今はビデオポッドキャストが中心になりつつありますが、音楽のほうも動画がメインになってくるような感じがしています。もちろん音楽以外の動画はYouTubeにいっぱいあるわけですが、音楽に関してはかなりバッティングしてきますね。
スライドの内容を整理します。2026年9月11日発表、「Open Mic」と「Verified」をSpotify上で展開します。Spotifyは歌詞・音楽知識データベース大手のGeniusと提携し、Spotify上でGeniusの人気動画シリーズを見られるようにして、音楽の「聴く体験」を「知る・深める体験」へ拡張します。
| シリーズ | 内容 |
|---|---|
| Open Mic(アーティストの生の音楽を、もっと近くで) | アーティストの生演奏・ライブパフォーマンス企画。Spotifyでフルエピソードを初配信。毎週木曜11:00 ETに新作公開。先行例:Rapsody「Pick A Side」。過去回の一部も視聴可能 |
| Verified(あの曲の“意味”を、アーティストの言葉で) | アーティスト本人が歌詞の意味や制作背景を解説。旧作バックログと新作をSpotifyで拡充。毎週水曜・金曜11:00 ETに新作公開。歌詞・テーマ・創作意図を深掘り。スーパーファン向けの強い訴求力 |
ポイント早わかりは、①SpotifyがGeniusの動画シリーズ配信を拡大、②「Open Mic」のフル動画をSpotifyで初配信、③「Verified」は旧作アーカイブ+新作を追加、④2シリーズ累計再生は37億回超、⑤音楽そのものだけでなく「意味」や「物語」が価値化、の5つ。数字で見ると、シリーズ開始は2016年、2シリーズ累計再生回数は37億回超、先行導入の成功を受けて段階的に拡大、発見→視聴→理解を一つの場で提供する「Spotify内で完結」の仕組みです。
なぜ重要なのか。Spotify側の狙いは、音楽配信から動画体験へ拡張、滞在時間の増加、スーパーファン向け価値の強化。Genius側の狙いは、視聴者接点の拡大、ブランド認知と再生数の拡大、新たな流通チャネルの獲得。アーティストの利点は、曲の背景や世界観を自分の言葉で伝えられること、発見性とファン理解が深まること。ファンの利点は、曲の背景・裏話をSpotify内で理解でき、「ただ聴く」から「物語を味わう」へ移れることです。
業界インパクトとしては、ストリーミング時代は曲そのものだけでなく「意味」や「背景ストーリー」が競争力になる、曲の周辺情報はもはや付録ではなく本編になりつつある、という指摘がされています。日本市場への示唆として、歌詞サイト文化やライナーノーツ文化との親和性が高いこと、日本でも「解説型コンテンツ」の動画化余地が大きいこと、楽曲発見とファン育成の新しい導線になり得ることが挙げられています。これまでとこれからを時系列で見ると、2016年にOpen Mic/Verified開始、先行導入で一部地域・一部コンテンツを導入して手応えを得て、2026年9月11日にSpotifyとの提携拡大を発表、という流れです。
僕自身、AI音楽ラジオをビデオポッドキャストで配信しているので、この「音声から動画へ」という流れは肌で感じています。音楽も、曲だけを置いておく時代から、曲の背景を語る動画とセットで届ける時代になっていくのでしょうね。
ステップ13:Spotifyプロフィールの誤表示を直す修正ガイド
続いて、**「Spotifyプロフィールに間違った曲が表示? 独立系音楽家向け修正ガイド2026」**です。
Spotifyもいろいろなことを今改善してきているんだと思うのですが、自分の曲が他のアーティストのプロフィールに表示されてしまっている、ということが起きます。こういったものを修正できるようになった、ということですね。これはいいことではないでしょうか。これからAI音楽を配信していく人にとっても、実はかなり実用的な情報です。
よくある3つの症状
- 自分の曲が別のアーティストのプロフィールにある
- 他のアーティストの曲が自分のプロフィールにある
- 自分のカタログが複数のプロフィールに分割されている(同じアーティストなのに楽曲がバラバラに…)
そして最重要:リリースを削除しない! 多くの場合、原因は乗っ取りではなく、アーティストプロフィールへのマッピング(紐づけ)の誤りです。リリースを削除して再アップロードすると、リリースの重複、リンク切れ、リスナーの混乱など、新しい問題を引き起こす可能性があります。まずは紐付け(マッピング)の修正を優先しましょう。
修正の手順(Rebel Music Distributionのガイドに基づく、実用的な4ステップ)
- 必要な情報を確認する:誤ったアーティストプロフィールのURL、正しいアーティストプロフィールのURL、対象のリリースのURLを控えておく
- Spotify for Artistsで報告:「コンテンツの不一致(content mismatch)」フォームから報告。自分の曲が他のアーティストのプロフィールにある、他のアーティストの曲が自分のプロフィールにある、自分のカタログが複数のプロフィールに分割されている、といったケースで報告でき、未公開コンテンツの確認(公開前の不一致報告も可能)もできる
- ディストリビューターに連絡:問題が配信に紐付けられたアーティスト情報に起因する場合は、ディストリビューターにも連絡。配信時にartist IDを指定できるディストリビューター(Spotifyの推奨・提携)なら、将来の取り違えリスクの低減にもつながる
- 修正後に全DSPで確認:修正の連絡後、メールでの通知を待ち(通常数日以内)、その後主要なDSPで表示を確認。楽曲が再生できるか、アートワークは正しいか、アーティスト名は正しいか、タイトルは正しいか、フィーチャリング表記は正しいか。Spotify以外のDSPも忘れずに
Spotifyは、問題の修正後にメールで通知してくれます(通常数日以内)。
報告テンプレート例として、①アーティスト名(あなたの名前)、②リリースタイトル(対象の作品名)、③UPC(ある場合、必要に応じてISRCも)、④対象となるリリースのURL、⑤誤ったSpotifyアーティストプロフィールのURL、⑥正しいSpotifyアーティストプロフィールのURL、⑦簡単な修正依頼文、を揃えてSpotify for Artistsまたはディストリビューターに連絡しましょう。
| なぜ起きる?(主な原因) | 予防チェック |
|---|---|
| 同名・類似名のアーティストが存在する | アーティスト名の表記を毎回統一する(スペル・大文字小文字・記号・表記ルール) |
| アーティスト名の表記ゆれ(大文字・小文字・記号・スペル違いなど) | 配信ワークフローで、既存のSpotify artist ID/プロフィールを選べる場合は必ず確認して紐付ける |
| 初回リリース時にSpotify側で新しいプロフィールが自動生成される(その後、Spotify for Artistsでclaimする必要がある) | 公開前にSpotify for Artistsで未公開コンテンツを確認(公開前の不一致報告も可能) |
| 他のディストリビューターからの移行時のデータ不整合/既存のリリースが誤って別のプロフィールに紐付けられた | リリース当日は、主要DSPで再生・アートワーク・アーティスト名・タイトル・フィーチャリング表記などを必ず点検する |
覚えておくこととして、他のアーティストの曲が自分のプロフィールに表示されていても、それだけで不正アクセスやロイヤリティの横取りの証拠とは限りません。プロフィールの表示上のマッピングと、配信・会計の情報は別の問題です。疑わしい場合は、UPCやISRCを添えてディストリビューターに確認しましょう。
AI音楽は、AIシンガーの名前が似ていたり、同じようなアーティスト名が大量に生まれたりしやすい世界です。だからこそ、この「表記統一」と「artist IDの紐付け」は、配信前に必ず押さえておきたいポイントですね。
ステップ14:科学論文タイトルで最も引用されるのはビートルズ
続いてはちょっと面白いニュースです。科学論文のタイトルで最も多く引用される音楽アーティストは、ビートルズだったそうです。
音楽の中でも、曲名そのもの、曲名をもじった例、歌詞そのもの、歌詞をもじった例などが論文タイトルでたくさん使われていて、その最多がビートルズだということ。さすがビートルズですね。万人に受けるアーティストということになります。
スライドの内容を整理します。PLOS One(2026)の研究で、オランダのデルフト工科大学などの研究チームが、科学論文タイトルに現れるビートルズ由来の曲名・歌詞・言葉遊びを調査しました。完全一致の引用が2,237件、もじり・言葉遊びが963件、合計3,200件を確認し、ビートルズは「科学論文タイトルで最も多く言及される音楽アーティスト」と結論づけています。
| 内訳 | 件数 |
|---|---|
| 曲名そのまま | 2,048件 |
| 曲名をもじった例 | 555件 |
| 歌詞そのまま | 189件 |
| 歌詞をもじった例 | 408件 |
| 合計 | 3,200件(完全一致2,237件=69.9%、もじり・言葉遊び963件=30.1%) |
最も多く使われた曲名は「The Long and Winding Road」で798件。長く困難で試行錯誤の多い研究プロセスをたとえる表現として、特に好まれたそうです。論文タイトルの例として「Seizure prediction: The long and winding road」が紹介されています。
特定分野だけの現象ではないのもポイントです。上位10曲に由来する論文タイトル1,584件は、Scopusの全27分野にまたがって確認されました。特に多かったのはMedicine(医学)とSocial Sciences(社会科学)。一方で、Computer Science、Economics、Environmental Science、Arts & Humanitiesにも広く分布していました。
他の大物アーティストとの比較(上位10曲)では、Beatlesが1,584件、Elvis Presleyが196件、Michael Jacksonが65件。研究チームはこの差を根拠に、ビートルズが科学論文タイトルで最も多く言及される音楽アーティストだと判断しました。
そのまま引用するだけでなく、もじりも多彩です。「The Long and Winding Road」→「The lung and winding road」、「All You Need Is Love」→「All you need is sleep」「All you need is NAD+?」、「Lucy in the Sky with Diamonds」→「Lucy in the Sky without diamonds」、「Happiness Is a Warm Gun」→「Happiness is a warm theorem」といった具合に、難解な研究内容にユーモアを加え、読者の目を引く工夫として機能しています。
僕が特に面白いと思ったのは、**AI研究にも「間接的な影響」**がある点です。「All You Need Is Love」の流れを汲むフレーズが、2017年のAI論文「Attention Is All You Need」につながり、そこから「○○ Is All You Need」型のタイトルが急増しました。この型のタイトルは305件で、2017年以前は14件のみ。コンピューター科学では「Attention Is All You Need」を経由して、ビートルズ由来の言い回しが大量に増殖したと考えられています。今の生成AIブームの土台となった論文タイトルに、ビートルズの影がある。これは面白いですよね。
また、1990年代以降に増加していて、論文100万本あたりのビートルズ参照は、1995〜2005年ごろに約10件から約30件へと約3倍に増加しました。論文総数の増加を考慮しても、ビートルズ参照の伸びはそれ以上だったそうです。1995〜1996年の「The Beatles Anthology」で再び注目が高まり、ビートルズを聴いて育った世代が研究者になったことも背景と考えられています。
なぜここまで強いのか。①誰もが知る曲名・フレーズが多く、比喩として使いやすい、②短く覚えやすく、論文タイトルのフックになる、③ポップカルチャーと学術をつなぎ、難しい研究を親しみやすく見せられる、の3点です。調べ方は、ScopusとGoogle Scholarを活用→ビートルズの曲名・歌詞リストを作成→自動検索+LLMによるスクリーニング→最後は人手で検証、という流れでした。まとめると、ビートルズは「音楽史の伝説」であるだけでなく、「科学のタイトル表現」にも深く入り込んでいた、ということです。
ステップ15:Spotify日本チャート1,163曲の歌詞を「意味の近さ」で可視化
続いては、2023年以降のSpotify日本チャート131組・1,163曲の歌詞を「意味の近さ」で可視化した分析です。これは、音楽を作るときにとても参考になると思います。
対象は、2023年〜2026年9月のSpotify日本ウィークリーチャート掲載曲のうち、歌詞を取得でき、同一アーティストで3曲以上ある131組・1,163曲(日本語849曲、韓国語156曲、英語158曲)。LLMで歌詞の「誰に・何を・どんな姿勢で歌っているか」を分析し、歌詞を文体や言語の情報を落とした内容表現に変換して、意味の近さで分類しています。その結果、6つの圏に整理されました。
| 圏 | 組数 | 主な特徴 | 代表アーティスト |
|---|---|---|---|
| 自信と誇示 | 10組 | 主題:自己肯定・自分らしさ53%、情動:高揚91%、恋愛の歌の割合0.14(6圏で最低)。恋人への告白ではなく「私はこうだ」という宣言 | Stray Kids、LE SSERAFIM、IVE、aespa、BLACKPINK、BABYMONSTER、(G)I-DLE、XG、JENNIE、HANA |
| 仲間と挑戦 | 17組 | 13組が男性グループ。主題:挑戦・成長・夢の追求23%。姿勢:肯定73%、情動:高揚79%。「私はすごい」ではなく「一緒に行こう」「大丈夫」 | 嵐、BE:FIRST、JO1、Snow Man、King & Prince、timelesz、SixTONES、Da-iCE、BLOOM、BTS、SEVENTEEN、RIIZEなど |
| 恋の駆け引き | 32組 | 6圏で最も言語が混在。主題:恋の充足・二人の時間26%、恋の始まり・片想い24%。相手:恋人70%。恋が始まる瞬間や続く時間の楽しさ | NewJeans、ILLIT、TXT、ENHYPEN、ZEROBASEONE、TWICE、Jung Kook、Bruno Mars、Ed Sheeran、西野カナ、imase、anoなど |
| 別れと未練 | 30組 | 24組が日本語。主題:別れ・未練37%、情動:悲しみ38%、縦軸の値-0.23(唯一のマイナス)、恋愛の歌の割合0.71、再生数シェア23%。終わった恋を思い返し、ただ引きずる歌 | back number、あいみょん、マカロニえんぴつ、優里、宇多田ヒカル、Saucy Dog、aiko、Taylor Swift、Charlie Puthなど |
| 葛藤と前進 | 37組 | 36組が日本語。主題:葛藤・不安・迷い16%、自己肯定14%、恋の充足14%など。恋愛の歌の割合0.26、再生数シェア53%。迷いや痛みを言葉にし、それでも前進する歌 | Mrs. GREEN APPLE、Official髭男dism、King Gnu、RADWIMPS、YOASOBI、Vaundy、米津玄師、Ado、藤井風、Number_iなど |
| 感謝と誓い | 5組 | 主題:恋の充足・二人の時間55%、姿勢:肯定86%、時間:未来16%(6圏で最高)、再生数シェア1.5%。結婚式や記念日に流したい「続けていく」歌 | 平井大、NiziU、GReeeeN、コレサワ、川崎鷹也 |
自信と誇示、仲間と挑戦、恋の駆け引き、別れと未練、葛藤と前進、感謝と誓い。こういったカテゴリーの曲が多い、ということです。曲名やアーティスト名も出ているので、曲を作るときの参考になるのではないかと思います。
全体構造は2つの軸で整理されています。1つ目は「恋愛かどうか」で、恋愛系(始まり・充足・別れ)が41%、恋以外が59%。2つ目は「肯定か葛藤か」で、上側が肯定・高揚(明るい・前向き)、中央が両方を抱える、下側が悲しみ・葛藤(悩み・苦しみ)です。言語別の主題(上位)は、韓国語が自己肯定26%・恋の始まり19%、英語が自己肯定21%・恋の充足18%、日本語が恋の充足16%・別れ15%・挑戦12%・葛藤12%。
歌い手の形態で見る棲み分けも面白いです。女性グループは自信と誇示、男性グループは仲間と挑戦、ソロ・バンドは別れや葛藤に集中していて、歌詞の主題は「言語やジャンル」より「誰が歌うか」の形態に強く結びつく、とされています。一言でわかる傾向としては、自己誇示=女性グループ、仲間と挑戦=男性グループ、恋の始まり=韓国語、恋の終わり=日本語と英語。結論は、日本のチャート歌詞は「恋愛かどうか」と「肯定か葛藤か」で大きく分かれ、そこに「歌い手の形態」の役割分担が重なる、ということです。
こういう大きな塊がある、ということがよく分かります。ヒット曲というと恋愛ソングだと思いがちですが、実は恋以外が59%。そうでないものもたくさんある、ということがこれで分かりますね。特に再生数シェア53%を占める「葛藤と前進」の圏は、日本のポップスの主流です。僕は毎日Sunoで曲を作っていますが、テーマ選びに迷ったときには、このマップのどの圏を狙うのかを意識するだけで、曲の方向性がぐっと定まると思います。
ステップ16:プレイリスト&アルゴリズム・マーケティングの終焉
そして最後です。「プレイリスト&アルゴリズム・マーケティングの終焉」。副題は「リーチから定着へ」です。
これまで、Spotifyなどではプレイリストが非常に重要でした。ところが今、このように変わってきている、ということが書かれています。
大前提として押さえておきたいのは、プレイリストやアルゴリズム自体が消えるのではなく、それだけに依存するマーケティングの終焉だ、ということです。これからは、発見を入口に、能動的なリスナー(スーパーリスナー)に変え、長く続く関係性=キャリアの土台をつくる時代です。
| 観点 | これまでの成功指標(リーチ重視の10年) | これからの成功指標(定着・関係性重視へ) |
|---|---|---|
| 考え方 | 発見(手段)とキャリア形成(目的)が混同されてきた | 受動的なリスナーを、能動的なリスナー(スーパーリスナー)に |
| 指標① | DSPのプレイリスト掲載(「大きなプレイリストに入ることがゴールに」) | 保存・ライブラリ追加(「また聴きたい」の意思表示) |
| 指標② | 月間リスナー数の多さ(「数字の大きさ=成功」) | フォロー・ファン化(アーティストの継続的な情報を受け取る) |
| 指標③ | TikTokのバイラル(「一夜のバズで注目を集める」) | リピート視聴・カタログ深掘り(新曲だけでなく過去作も聴く) |
| 指標④ | アルゴリズムへの最適化(「15秒・サビ頭・トレンド型の楽曲設計」) | メール/YouTube/自社サイト/コミュニティ参加(チーム運営のファンページやサブアカウント=フィンスタ) |
| 指標⑤ | 瞬間的なリーチ(「広く、早く、たくさんの人に」) | ライブ来場・グッズ購入、共有・口コミ、継続的な再訪(30日・90日・6か月後もアクティブに) |
これまでのやり方の結果として、一時的な注目で終わりライブ動員につながらない、楽曲の均質化で作り手も聴き手も疲弊、数字は大きくてもファンとの関係が浅い、という問題が起きていました。バズは一夜の花火で、翌月のライブにはつながらない、というわけです。
新しい考え方では、プレイリストは目的ではなく、入口。ファンは「数」ではなく「戻ってくる人」の集合で、キャリアは「戻ってくる人」の集合です。流れとしては、発見(リーチ:プレイリスト、アルゴリズム、SNS・メディア)→転換(コンバージョン:保存・フォロー、能動的に聴く、カタログ深掘り)→定着(リテンション:リピート視聴、コミュニティ参加、継続的な接点)→収益化(ライフタイムバリュー:ライブ来場、グッズ購入、共有・口コミ)。つまり「知ってもらう(入口)→興味から関係へ→戻ってくるファンに→共に成長する長期的な関係へ」、英語で言えばREACH→CONVERSION→RETENTION→REVENUE、「届く→好きになる→戻ってくる→支え続ける」です。
Spotifyが明かす「スーパーリスナー」の力も数字で示されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| スーパーリスナーの割合(月間リスナーに占める) | 約2% |
| 月間再生数への貢献 | 18%以上 |
| Spotify経由のチケット販売 | 50% |
| 楽曲のシェア | 他のリスナーより9倍 |
| 1人あたりの再生貢献 | スーパーリスナー1人=プログラムド・リスナー約20人分 |
| 継続率(2025〜2026年データ、6か月後もアクティブ) | スーパーリスナー約2/3、ライトリスナー約1/3 |
Spotifyの月間アクティブリスナーは、能動的に聴く層で、その中にライト(ときどき聴く)・モデレート(定期的に聴く)・スーパーリスナー(熱心に聴く)が含まれます。一方、プログラムド・リスナーは、編集/個人プレイリスト、Discover Weekly、Radio、Autoplay、AI DJなどの受動的な接点が中心です。スライドには、リーチは所有ではない(どれだけ届いても、ファンは自分のものではない)、トラフィックは聴衆ではない(再生数は、真の聴き手とは限らない)、インプレッションは関係ではない(表示されたことは、関係性を意味しない)、という3つの言葉も紹介されています。
Forbes 2026の論点としては、業界の潮流は「パフォーマンス」から「存在感」へ。リーチよりコミュニティ、最適化より本物らしさ。具体的には、コミュニティ重視、本物らしさを優先、パフォーマンスから存在感へ(バズる瞬間より長く愛される存在に)、物理メディアの活況(CD・レコードの再評価)、長編コンテンツの復権(ショートの反動でアルバムやドキュメンタリーが再注目)、ファンページ/サブアカウント(チーム運営のコミュニティで独自の世界観を構築)が挙げられています。Forbes 2026の別記事の論点では、巨大なデジタル指標があってもチケットが売れない、必要なのはVisibility(可視性)ではなくConnection(つながり)、継続的なリリースで関係を育てる、1対1のコミュニティ対応・直接コミュニケーションが重要、巨大な数字より実際に支えてくれるコアなファンとの関係構築を、という指摘がされています。
そして、これから追うべき実践KPI 8は、①保存率(楽曲の保存・ライブラリ追加の割合)、②フォロー転換率(リスナーからフォロワーへの転換率)、③能動リスナー比率(月間アクティブの中で能動的に聴く人の割合)、④リピート率(楽曲・アーティストを繰り返し聴く割合)、⑤カタログ回遊(新曲以外の楽曲も聴かれている割合)、⑥コミュニティ参加(ファンページ・サブアカウント・メルマガ等の参加率)、⑦ライブ/グッズ転換(ストリーミングからチケット・グッズ購入への転換率)、⑧30日/90日/6か月リテンション(時間軸での継続的なアクティブ率)です。スライドの締めの言葉は「広く届くより、深く残る。アルゴリズムで見つけてもらい、関係性で戻ってきてもらう」。
この話は、先ほどのRIAAのデータ「聴くのは配信、推すのはフィジカル」や、SoundCloudの直販、Spotify×Geniusの「物語」戦略とも、全部つながっていますよね。AIで曲がいくらでも作れる時代だからこそ、「数」ではなく「関係」が価値になる。ぜひスライドも含めて、見ておいていただければと思います。
ということで、今月もたくさん音楽に関するニュースがあったので、解説させていただきました。来月以降もこんな形で続けていこうと思っています。Substackのほうでも、AI音楽に関することや音楽に関することを発信していますので、もしよろしければそちらもご覧ください。詳しくはブログやリンク先からどうぞ。
おわりに|「作れる」の次は「どう届け、どう残るか」
2026年9月のSuno以外のAI音楽・音楽ニュースを振り返ると、1本の線が見えてきます。YuE2のように作る手段は増え、UMGはDistroKidを訴えながらElevenLabsと組み、ARIAは「主要部分をAIが作った録音」をチャートから外しました。問われているのはAIの是非ではなく、誰が責任を持ち、どんな表示と権利確認で流通させるのか、という点です。
一方で、ヤマハの自動採譜のように人間の作業はAIに置き換わりつつも、EUと米国の録音原盤市場は伸び、CDやシンクまで成長しています。楽天の会話型検索、Apple Watchの音楽認識、SpotifyとGeniusの動画連携は、音楽の「入口」を増やしました。
そして最後にたどり着くのが「リーチから定着へ」。曲をいくらでも作れる時代だからこそ、戻ってきてくれるファンとの関係が価値になります。Sunoに全振りしている僕自身も、作ることの先にある届け方を、これからも一緒に考えていきたいと思います。
まとめ
- YuE2(2026年9月10日公開):Suno v5/v6級を狙うオープン音楽生成AI。ABC楽譜で操れるのが特徴。モデルの重みはCC BY-NC 4.0(非商用)で、無料=商用利用自由ではない。Suno依存の保険として触っておく価値あり
- UMG×DistroKid(2026年9月15日提訴):争点はAIそのものではなく、偽装・大量投下・権利侵害・不正流通。最大1作品15万ドルの法定損害賠償を請求
- UMG×ElevenLabs(2026年9月10日発表):ライセンス済み音楽を土台にしたファン共同創作プラットフォームを開発中。UMGは「訴える」と「組む」を使い分け、条件交渉の段階にあると見られる
- ARIAの新ルール(2026年8月31日付チャートから適用):AI-generatedはチャート対象外、AI-assistedとAI in productionは対象。基準は「人間主体かどうか」
- 楽天ミュージック(2026年9月16日):「Rakuten AI for Music」で会話型検索へ。カテゴリー検索→キーワード検索→チャット検索への移行が進む
- Apple Watch:Shazam統合とAudio Intelligenceで周囲の音を理解。便利さとプライバシー、権利者との関係が課題
- ヤマハ Piano Sheet Converter β:音源から約3分でピアノ譜。β期間中(2026年10月末まで予定)はADVANCED機能が無料。ただし生成楽譜の商用利用は不可
- SoundCloud:有料ダウンロード(ベータ)でアーティスト100%(手数料・税金除く)の直販へ。Bandcampと競合
- EU市場:2025年の録音原盤売上60億ユーロ(+5.1%)、増加額で中国を約400万ユーロ上回る。有料ストリーミング普及率27%が伸びしろ
- 米国市場:2026年上半期59億7,490万ドル(+6.9%)。CDが+58.6%、シンクが+18.2%と、フィジカルとシンクが大きく伸長
- Spotify:子ども・家族向け音楽をおすすめ学習から一括除外できる設定、Geniusとの動画シリーズ拡大、プロフィール誤表示の修正ガイド
- データの話題:論文タイトルで最多引用はビートルズ(合計3,200件)。日本チャート歌詞は6つの圏に分かれ、恋以外が59%
- 結論:プレイリストは目的ではなく入口。スーパーリスナー(約2%)が再生の18%以上、チケット販売の50%を担う。「リーチから定着へ」
よくある質問(Q&A)
Q1. YuE2は無料で使えるなら、作った曲を商用配信しても大丈夫ですか?
A. 注意が必要です。YuE2は無料で公開されていますが、モデルの重みはCC BY-NC 4.0(非商用)のライセンスです。さらに、コードや第三者コンポーネントには別のライセンスが適用される場合があります。「無料=商用利用自由」ではないので、配信や販売など商用利用を考えている場合は、各ライセンスの条件を必ず確認してください。まずは試作やアイデア出し、Suno以外の選択肢を知るための「保険」として触ってみるのがおすすめです。
Q2. UMGがDistroKidを訴えたなら、AI音楽の配信はもうできなくなるのですか?
A. そうとは限りません。訴状では「明確に開示されたAI生成音楽の流通自体を問題にしているのではない」と説明されており、争点はAI生成物や侵害物を人間アーティストの正規リリースのように見せかけて流通させたとされる点、大量投下、権利侵害です。また、この件は2026年9月15日に提起された訴訟段階の事案で、裁判所の事実認定はまだ行われていません。今後は、AI音楽であることの開示、権利処理、品質管理がより重視される流れになると考えられます。
Q3. Sunoで作った曲は、オーストラリアのチャートに入ることはできますか?
A. ARIAの新ルールでは、主要な創作要素を生成AIが作った録音(AI-generated)はチャート対象外です。テキストから曲全体を生成する、いわゆる「ポン出し」はこれに該当すると考えられます。一方で、人間が作曲・リード歌唱・主要演奏を担当し、AIが一部表現を補助する「AI-assisted」や、AIマスタリング・ステム分離・リバーブなど制作工程でAIを使う「AI in production」は対象です。ポイントは「人間主体かどうか」です。
Q4. ヤマハのPiano Sheet Converterで作った楽譜を販売してもいいですか?
A. 現時点ではできません。スライドの重要な注意事項にある通り、生成された楽譜は商用利用ができず、私的利用の範囲での利用とされています。また、ポップスなど標準的な楽曲では高い精度が期待できる一方、複雑な編成の曲では誤りが含まれる場合があります。耳コピの「たたき台」を一気に作るツールとして、練習や作曲・編曲のアイデア出しに活用するのが良いでしょう。なお、EEAなどGDPR適用地域では現時点で利用できません。
Q5. 「リーチから定着へ」とは、プレイリスト施策をやめたほうがいいという意味ですか?
A. いいえ、プレイリストやアルゴリズム自体が消えるわけではありません。終わるのは「それだけに依存するマーケティング」です。プレイリストは目的ではなく入口と捉え、見つけてもらった後に、保存・フォロー・リピート・カタログ回遊・コミュニティ参加・ライブやグッズ購入へとつなげることが大切です。Spotifyのデータでは、月間リスナーの約2%のスーパーリスナーが月間再生数の18%以上、Spotify経由のチケット販売の50%を担っています。保存率やフォロー転換率など「関係性」を測るKPIを追いかけましょう。
音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②

🎼 YuE2(ユエ2)
YuE2とは、Multimodal Art Projection(m-a-p)が2026年9月10日に無料公開したオープンソースの音楽生成AIです。歌詞とスタイルを入力すると、ボーカル付きの楽曲を生成します。ABC楽譜でメロディやコードを計画できるため、「楽譜で操れる」点が特徴で、日本語にも対応しています。ただしモデルは非商用ライセンスなので、無料でも商用利用が自由なわけではありません。Suno依存のリスクに備える保険としても注目されています。
📦 DistroKid(ディストリビューター)
DistroKidとは、Apple MusicやAmazon Music、YouTubeなど多くの配信サービスへ楽曲を届ける音楽ディストリビューターです。AI音楽が審査を通りやすいとされ、人気を集めてきました。しかしユニバーサルミュージック(UMG)は、低品質なAI楽曲(AIスロップ)でストリーミングが汚染されているとして、DistroKidを提訴しました。AI音楽を配信する側にとっても、今後の動向が気になる存在です。
🤝 ElevenLabs(イレブンラボ)
ElevenLabsとは、テキストを自然な音声に変換する音声合成AIで知られる企業です。UMGと戦略的合意を結び、ライセンス済みの音楽を土台にAI音楽を作れるようになりました。UMGはSunoを訴える一方で、ElevenLabsとは手を組んでいます。業界は訴訟でより良い契約条件を引き出す駆け引きの段階にあり、いずれSunoとも和解に向かう可能性があります。
📊 AI楽曲のチャート除外
オーストラリアでは、テキストからAIだけで全自動生成した楽曲をヒットチャートの対象外にすることが決まりました。一方で、作曲やリード歌唱、主要な楽器演奏を人間が担い、AIがマスタリングやステム分離、リバーブなど一部を補助する曲は対象になります。実質的に人間が作った録音であることが条件です。チャート操作や著作権の侵害も認められず、同様の動きは世界的に広がっています。
💬 エージェント型AI(チャット検索)
エージェント型AIとは、利用者の要望を理解して自ら提案や操作を行うAIのことです。楽天ミュージックに搭載され、「こんな曲が聴きたい」とチャットで伝えるだけで候補曲が提示されます。これまでのカテゴリー検索やキーワード検索から、対話で探すチャット検索へと、あらゆるサービスの入り口が大きく変わりつつあります。こうした変化を象徴する事例です。
⌚ Now Playing(周囲の音楽認識)
Now Playingとは、Google Pixelに搭載されている、周囲で流れている曲を自動で特定して画面に表示する機能です。AppleはShazamを買収しており、同様の機能をApple Watchにも搭載します。ただし、曲を聞き取れるということは周囲の会話も拾えることを意味し、盗聴の懸念が指摘されています。レコード会社の反発も予想され、利用条件の整備が今後の課題です。
🎹 Piano Sheet Converter(ピアノ・シート・コンバーター)
Piano Sheet Converterとは、ヤマハが公開している、音源ファイルを読み込むだけで約3分でピアノ譜を自動生成するサービスです。現在はベータ版で精度は完璧ではありませんが、無料で使え、ネットでも話題になっています。これまで人間が耳コピで作っていた楽譜をAIが代わりに作れるようになりました。楽譜販売で収益を得ていた人の仕事を奪う可能性もあります。
💿 原盤権(げんばんけん)
原盤権とは、音楽を録音・編集して完成させた音源(マスター音源)そのものに発生する権利です。法律上は「レコード製作者の権利」という著作隣接権の一種として定められています。EUやアメリカでは録音原盤市場が伸びており、音楽市場全体が盛り上がっています。AIで作った楽曲の原盤権を誰が持つのかは、今後の大きな論点になると見られています。
🎬 シンク(シンクロ権収入)
シンクとは、映像作品や広告、ゲームなどに楽曲を使用する際に発生するライセンス収入のことです。映像と音楽を同期(シンクロ)させることが語源です。アメリカの録音原盤市場は上半期で60億ドルに迫り、ストリーミングやCDなどのフィジカルに加えて、シンクも大幅に成長しました。楽曲の使われ方が多様化し、収益源が広がっていることを示しています。
🔁 スーパーリスナー(リーチから定着へ)
スーパーリスナーとは、音楽を受け身で流すのではなく、保存やフォロー、繰り返し再生などで積極的に聴く熱心なファン層のことです。プレイリスト掲載やバズで「広く届ける」だけのマーケティングは終わりつつあります。これからは、発見を入口にファンとの関係性を深め、何度も戻ってきてもらう「定着」が、アーティストの長いキャリアの土台になるとされています。
音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②

音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②
音楽生成AI「YuE2」無料公開|楽譜で操れるオープンモデルの実力と注意点
AI研究コミュニティのMultimodal Art Projection(m-a-p)は2026年9月10日、音楽生成AI「YuE2(ユエ2)」を公開しました。前作「YuE」の後継で、モデル名は「YuE2-3B」。Hugging FaceとGitHubで配布され、誰でもダウンロードして自分のPCで動かせます。開発チームはSuno 5に匹敵するオープンモデルと位置づけており、公開されたベンチマークでは生成品質とテキスト理解力の両面でSuno 5に近い位置にあり、8回生成して最良の1曲を選ぶ「Bo8」条件ではSuno 5を上回る結果も示されています。
最大の特徴は、テキストや歌詞だけでなく「ABC記譜法」で書かれた楽譜を入力できる点です。メロディーやコードといった”骨組み”を先に計画し、それをボーカルと伴奏付きの楽曲に仕上げる設計のため、「サビのメロディーだけ直したい」といった部分修正の発想と相性の良いモデルです。日本語ボーカルの生成例も公式サイトで公開されています。
動作環境は、公式モデルカードではLinuxと24GBクラスのNVIDIA製GPUが推奨で、RTX 4090で約3分半の曲を約71秒で生成できたと報告されています。一方で必ず確認したいのがライセンスです。モデルの重みはCC BY-NC 4.0、つまり非商用限定です。YouTubeの収益化動画やストリーミング配信で売上を得る用途には使えないため、「無料だからSunoの代わりに」と飛びつくのは危険です。
私自身は現在Sunoに制作を全振りしていますが、単一サービスへの依存はリスクでもあります。規約変更や訴訟の行方次第で、制作環境が一夜にして変わる可能性があるからです。YuE2は「保険」兼「研究用」として触っておく価値があります。特に楽譜入力は、作曲経験のある方ほどAIとの共同作業の幅を広げてくれるはずです。
UMG×ElevenLabsが戦略的合意|ライセンス済みAI音楽とSuno再提訴の関係
2026年9月10日、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)と音声AI企業のElevenLabsは、複数年のライセンス契約と戦略的協業を発表しました。ElevenLabsにとってメジャーレーベルとの初の契約で、ライセンス供与と製品の共同開発の両方を含みます。第一弾として、参加アーティストの楽曲をもとに、ファンがリミックスやマッシュアップ、新たな解釈のカバーなどを作れるAI音楽プラットフォームをElevenLabsが立ち上げる計画です。既存の「ElevenMusic」やMusic APIとは別サービスとして提供される予定で、公開時期はまだ明らかにされていません。
ここで押さえたいのは、UMGの”二面戦略”です。UMGは許諾を得たAIとは積極的に手を組む一方、無許諾の学習には強硬な姿勢を崩していません。実際、9月18日にはソニー・ミュージックと共同でSunoを新たに提訴しました。9月上旬に公開されたSunoのv6モデルについても、旧モデルの出力を学習に使っている以上、侵害は続いているという主張です。v6はワーナー、BMG、Believeとのライセンスを背景に公開されたモデルですが、UMGとソニーはこの枠組みに加わっていません。
放送では「UMGは裁判で優位に立ち、有利な条件で契約したいのでは」とお話ししました。これはあくまで私の見立てですが、UMGは2025年にUdioとの訴訟を和解して提携に転じた前例があり、ElevenLabsとの合意も”条件さえ合えば組む”姿勢の表れと読めます。Suno利用者としては、訴訟の行方がモデルや利用規約に直結する点を意識しておきましょう。
一方で、ライセンス済みの音楽を土台にしたAI創作は、権利面の安心感という点で大きな価値があります。ElevenLabsの新プラットフォームが公開されたら、Sunoと並行して試してみる価値は十分にあるでしょう。
AI音楽の配信とチャートはどう変わる?|DistroKid訴訟とARIA新ルール
UMGがDistroKidを提訴|「AIスロップ」問題の本当の争点は”開示”
2026年9月15日、UMGとキャピトル・レコードは、音楽ディストリビューター大手のDistroKidを米デラウェア州の連邦地裁に提訴しました。DistroKidは、SpotifyやApple Music、YouTubeなどへ楽曲をまとめて配信できる代行サービスで、世界の新曲リリースの3〜4割を扱うとも言われる巨大プラットフォームです。
訴状でUMGは、DistroKidが人間のアーティストの作品を届ける配信業者であるかのように振る舞いながら、実際には大量生成されたAI楽曲、いわゆる「AIスロップ」を流し込み、正当なアーティストの収益と聴き手を奪っていると主張しています。例として、12カ月で4,562曲をリリースした「Lofi Chill」というアカウントが挙げられ、特定のチル系プレイリストでは収録曲の大半がSunoで生成されたものだったとする分析も引用されています。約1,000曲について1作品あたり最大15万ドルの法定損害賠償を求めており、単純計算では最大1億5,000万ドル規模になります。
ただし誤解してはいけないのは、UMG自身が「AIと明示された音楽の配信を問題にしているのではない」と訴状で明言している点です。争点は、AI生成であることを隠して人間の作品のように見せかけていること、そして権利侵害の指摘を受けた後も配信を続けたことにあります。
放送で触れたように、DistroKidは「AI音楽が通りやすい」と言われ人気を集めてきました。私もAI音楽の配信先として検討していましたが、今後は配信業者側の審査やAI開示のルールが厳格化する可能性が高いでしょう。なお、UMGは2024年にもTuneCoreとその親会社Believeを提訴し、2026年4月に和解しています。AIクリエイターにとっては、「AI使用を正直に申告する」「大量投稿でプレイリストを埋める手法は避ける」という基本を守ることが、自分の作品と配信アカウントを守る最善策になります。
豪ARIAがAI生成曲をヒットチャートから除外|「実質的に人間が作った」3つの基準
オーストラリアレコード協会(ARIA)は2026年8月、ARIAチャートの運用規程を改定し、完全にAIで生成された楽曲をチャートの対象外にすると発表しました。新ルールは2026年8月31日付のチャート(8月28日公開)から適用されています。
判定は、7月に国際的な音楽業界団体が打ち出したAIラベリング基準をもとに、大きく3つに分類されます。1つ目は「AI-generated(AI生成)」で、テキストのプロンプトだけで作ったような楽曲はチャート対象外です。2つ目は「AI-assisted(AI補助)」で、人間が作曲やリード歌唱、主要楽器の演奏を担い、AIが一部の表現を補う形であれば対象になります。3つ目は制作工程でのAI利用で、マスタリング、ステム分離、リバーブなどの処理や、AIドラムマシンの利用は問題ありません。
チャート入りの条件は、①実質的に人間が作ったものであること、②ストリーム操作やチャート操作の懸念がないこと、③著作権や著作隣接権など関連法令を遵守していること、の3点です。違反が判明した場合は、遡っての除外や順位の修正、ARIAアワードの対象外といった措置もあり得ます。背景には、AIを使ったカバー曲が現地チャートの上位に入った事例がありました。
Sunoで「ポン出し」した曲をそのまま配信するだけでは、今後こうした公式チャートの土俵に上がれない国が増えていくと考えられます。一方で、自分で歌う、演奏する、構成を練るなど、人間の創作が中心にある作品は引き続き評価の対象です。AI音楽で活動する方は、制作過程をスクリーンショットやプロジェクトファイルで記録し、どこまでが人間の創作かを説明できる状態にしておくことを強くおすすめします。
「探す」「聴く」体験を変えるAI|楽天ミュージックとApple Watch
楽天ミュージックにエージェント型AI「Rakuten AI for Music」搭載|チャット検索の時代へ
楽天グループは2026年9月16日、定額制音楽配信サービス「Rakuten Music」のスマートフォンアプリに、エージェント型AIツール「Rakuten AI for Music」を搭載しました。アプリのホーム画面に新設された「AIに聞いてみる」欄や専用タブから、AIと会話しながらアーティスト、楽曲、アルバム、プレイリストを探せます。
例えば「今の気分に合う曲を聴きたい」「雨の日に落ち着ける曲」といった曖昧なリクエストでも、AIが候補を提示してくれるのが特徴です。曲名やアーティスト名が思い出せない、そもそも何を聴きたいのか言葉にできていないというユーザーにとって、探す手間を大きく減らしてくれる機能といえます。楽天は「Rakuten AI」を軸に楽天エコシステムの各サービスをつなぐ構想を進めており、今回の搭載もその一環です。有料プラン会員向けの付加価値として位置づけられているため、利用条件は公式の案内を確認してください。
私がこのニュースで強調したいのは、音楽に限らず、あらゆるサービスの”探し方”が変わっているという点です。カテゴリーから選ぶ時代、キーワードで検索する時代を経て、今は会話で探す「チャット検索」の時代へと大きくステージが移りつつあります。
これはAI音楽のクリエイターにとっても重要な変化です。AIに推薦してもらうには、曲名だけでなく、ジャンル、ムード、聴く場面といった”文脈情報”が伝わるように発信しておく必要があります。配信時のメタデータ、楽曲の説明文、SNSでの紹介文に「どんな気分や場面で聴く曲か」を言葉で添えておくことが、LLMO(大規模言語モデル最適化)の観点からも、これからの楽曲プロモーションの基本になっていくでしょう。
Apple Watchが周囲の音を理解する時代へ|Shazam統合「Audio Intelligence」の便利さとプライバシー
Appleは2026年9月に発表したApple Watch Series 12とApple Watch Ultra 4に、周囲の音を理解する新機能群「Audio Intelligence」を搭載しました。新しいS11チップを活用した4つの機能で構成されています。サイレンや警報、ドアベルなどを検知して通知する「サウンド認識」、周囲で流れている曲を自動で認識して曲名とアーティスト名をスマートスタックに表示する「Shazamによる音楽認識」、直前15秒の会話をテキストで表示する「Live Rewind」、1日の会話を要約する「Siri Recap」です。Live RewindとSiri Recapは、年内に英語からベータ提供される予定です。
Appleは2018年にShazamを買収しており、そのShazamが腕時計に常時組み込まれた形になります。Google Pixelには以前から、周囲の曲をロック画面に表示する「この曲なに?(Now Playing)」機能がありましたが、同様の体験がApple Watchにも広がることになります。
一方で、常にマイクで周囲を聞く仕組みには、盗聴のように感じるというプライバシー面の懸念もあります。Appleは、各機能がオプトイン(初期設定はオフ)であること、音声はS11チップ内の隔離された領域で処理後すぐに破棄されること、Shazamは音声そのものではなく音響指紋だけを送ることなどを説明しています。
放送では「レコード会社が反対してくるのも分かる」とお話ししましたが、現時点で主要レーベルが公式に反対を表明したという報道は確認できていません。これは私の推測として受け止めてください。ただ、どの場所で、どの曲が、どれだけ流れているかというデータが大量に集まることは、音楽業界にとって権利処理とマーケティングの両面で大きな意味を持ちます。店舗BGMを扱う事業者や、実店舗で自作曲を流しているAI音楽クリエイターにとっても、見逃せない変化です。
AIで変わる音楽ビジネスの現場|ヤマハの楽譜AIと世界の音楽市場データ
ヤマハ「Piano Sheet Converter β」|音源から約3分でピアノ譜を自動生成、耳コピ不要の時代へ
ヤマハは2026年9月11日、音源ファイルを読み込むだけでピアノ譜を自動作成するツール「Piano Sheet Converter」のβ版を公開しました。MP3やWAVなどの音源を読み込むと、一般的な楽曲であれば約3分で楽譜化が完了し、生成された楽譜はピアノの音色で再生して確認できます。
楽譜化の際は、難易度を「入門・初級・中級・上級」の4段階から選べるほか、調を「おまかせ・簡単キー・原曲キー」、長さを「フル・1コーラス」、スタイルを「ソロ譜・伴奏譜」から指定できます。同じ曲でも、初心者向けのやさしい譜面と上級者向けの本格的な譜面を作り分けられるのは、ピアノ学習者にとって大きな魅力です。
料金は、登録不要で月5回まで楽譜化できる「Free」と、月額1,980円の「ADVANCED」が基本です。ADVANCEDでは楽譜化が無制限になり、アプリ内での楽譜編集や、PDF・MIDI・MusicXML形式での書き出しにも対応します。現在はβ期間限定でADVANCEDの機能が無料開放されているため、試すなら今が好機です。対応OSはWindowsとmacOSです。
これまで耳コピで楽譜を起こすには、経験者でも数時間から数日かかることがありました。耳コピした譜面をYouTubeで宣伝しながら販売してきた人たちにとっては、ビジネスモデルを揺るがすニュースです。人間が担ってきた作業をAIが代替する、典型的な事例といえるでしょう。
AI音楽クリエイターにとっては、Sunoで作った自作曲をピアノ譜にして生演奏に展開したり、ピアノアレンジ動画を作ったりと、活用の幅が広がります。ただし、他人の楽曲を楽譜化して販売・公開する場合は、著作権者の許諾が必要になる点には十分注意してください。
EU・米国の録音原盤市場が成長|IFPI・RIAAの最新データと原盤権の基礎知識
音楽市場全体の数字を見ると、AI音楽をめぐる対立とは裏腹に、録音原盤ビジネスは堅調に成長しています。
まず欧州です。IFPIが9月に公表した「Music in the EU 2026」によると、EUの2025年の録音原盤売上は約60億ユーロで、前年比5.1%増でした。話題になったのは、前年からの増加額が約2億9,300万ユーロと、中国の増加額(約2億8,900万ユーロ)をわずかに上回った点です。ただし伸び率で見ると、中国は20%を超える成長を記録しています。EUの有料ストリーミング普及率はまだ米国の約半分にとどまっており、「中国を上回った」のはあくまで”増加額”の話。むしろ成長余地がまだ大きい市場だと読むのが正確です。
次に米国です。米国レコード協会(RIAA)が9月1日に公表した2026年上半期レポートでは、卸売ベースの売上が約60億ドル(前年同期比6.9%増)に達しました。ストリーミングが約49億ドルで全体の82%を占める一方、フィジカルが25.9%増と大きく伸び、特にCDは58.6%増、アナログレコードも17.7%増でした。映画・テレビ・広告などに楽曲を使う際のライセンス収入である「シンク」も、18.2%増の約2億3,200万ドルとなっています。
ここで原盤権について整理しておきましょう。原盤権とは、録音・編集して完成させた音源(マスター音源)そのものに生じる権利で、日本の法律上は「レコード製作者の権利」という著作隣接権の一種として定められています。Sunoは有料プランで生成した楽曲を商用利用できる仕組みをとっていますが、AIだけで生成した音源にどこまで法的保護が及ぶかは、各国でまだ議論が続いている論点です。
市場が伸びているからこそ、レコード会社も「反対するだけでなく、どう折り合いをつけるか」を探る段階に入っています。AI音楽クリエイターも、ストリーミングだけでなく、CDやシンクのような多様な収益源を視野に入れておくとよいでしょう。
Spotifyの変化とヒット曲分析から学ぶ|AI時代の曲作りと音楽マーケティング
Spotifyの最新アップデート|子ども向け音楽の学習除外・Genius動画連携・プロフィール誤表示の修正
Spotifyからは、9月に立て続けにアップデートが発表されました。
1つ目は、9月15日から提供が始まった、子ども・家族向け音楽を「おすすめ学習」から除外できる設定です。親が子どものためにアニメ映画の曲や童謡を繰り返し再生すると、その履歴が自分のDiscover WeeklyやDaily Mix、年末のWrappedにまで反映されてしまう悩みがありました。新設の「Include kids and family music in taste profile」をオフにすると、再生や検索、プレイリスト作成はそのままに、推薦への影響だけを止められます。過去の再生にも遡って適用され、無料・有料を問わず全世界のモバイル版で順次提供されます。なお、13歳以下の子ども向けには、保護者が管理できる「Managed Accounts」という別の仕組みも用意されています。
2つ目は、歌詞・音楽情報サイトGeniusとの提携です。9月11日、Geniusの人気ライブ動画シリーズ「Open Mic」のフルエピソードがSpotifyで初めて視聴可能になり、アーティストが自ら歌詞を解説する「Verified」も新旧エピソードが拡充されました。両シリーズは2016年に始まり、累計37億回以上再生されています。Spotifyはポッドキャストのビデオ化に続き、音楽領域でも動画を強化しており、YouTubeとの競合が一段と鮮明になってきました。
3つ目は、自分の曲が他のアーティストのプロフィールに表示される、あるいは他人の曲が自分のページに紛れ込むといった誤表示への対処です。インディーアーティスト向けの修正ガイドでは、リリースを削除せず、まずSpotify for Artistsから報告し、ディストリビューター経由でアーティストIDの紐付けを直す手順が推奨されています。同名アーティストが多いAI音楽では起こりやすいトラブルなので、配信時にアーティストIDを正しく指定することが予防の第一歩です。
ビートルズ論文・歌詞マップ・プレイリスト戦略の終焉|ヒットの法則をAI音楽制作に活かす
最後に、曲作りと発信のヒントになる3つの話題をまとめます。
1つ目は、科学論文のタイトルで最も多く言及されている音楽アーティストがビートルズだった、という研究です。オランダのデルフト工科大学などのチームが9月9日に学術誌PLOS Oneで発表したもので、学術データベースなどからビートルズの曲名や歌詞をそのまま使った例が2,237件、もじった例が963件見つかりました。最多は「The Long and Winding Road」の798件で、AIの基盤技術を生んだ2017年の論文「Attention Is All You Need」も「All You Need Is Love」のもじりの例として紹介されています。これは”引用数”ではなく”タイトルでの言及数”の調査です。耳に残るフレーズは、分野を越えて何十年も使われ続けるという好例といえます。
2つ目は、2023年以降のSpotify日本チャートに入った131組・1,163曲の歌詞を、LLMで意味の近さに基づいてマップ化した分析です。「自信と誇示」「仲間と挑戦」「恋の駆け引き」「別れと未練」「葛藤と前進」「感謝と誓い」といったテーマの塊が見えてきます。ヒット曲=恋愛ソングと思いがちですが、実際にはそれ以外のテーマも大きな割合を占めています。Sunoで作詞するとき、自分の曲がどの塊に属するのか、あえて手薄な領域を狙うのかを考える材料になります。
3つ目は「プレイリスト&アルゴリズム・マーケティングの終焉」という論考です。これまではプレイリストに入ってリーチを稼ぐことが成功法則でしたが、今は”聴かれた回数”よりも、フォロー、保存、繰り返し再生といった”定着”が重視される方向へ変わりつつあります。先述のDistroKid訴訟で問題視された大量投稿型の手法とは正反対に、少数でも熱量の高いファン、いわゆるスーパーリスナーを育てることこそが、AI音楽の時代に最も重要な戦略になっていくでしょう。
ファクトチェック・修正一覧(放送原稿・スライドとの照合)
| # | 放送・スライドの内容 | 確認結果・記事での扱い |
|---|---|---|
| 1 | YuE2は「Suno v5/v6級」(スライド) | 開発チームの比較対象はSuno 5。v6との比較は公表されていないため「Suno 5に匹敵」と記載 |
| 2 | YuE2は無料で使える | 無料公開だがライセンスはCC BY-NC 4.0(非商用限定)。収益化用途には使えない旨を追記 |
| 3 | 「Beliebe」とTuneCore | 正しくは「Believe」。TuneCoreの親会社。UMGは2024年に両社を提訴し2026年4月に和解 |
| 4 | DistroKidは「AI音楽が一番通りやすい」 | 業界内の評判であり公式情報ではない。UMGの訴状は「AIと明示された音楽の配信は対象外」と明言しており、争点は開示と権利侵害 |
| 5 | UMGはSunoを訴えており、いずれ和解するのでは | 2024年の訴訟は継続中。加えて9月18日にUMG・ソニーがv6を対象に新たに提訴。和解見通しは話者の推測として明記 |
| 6 | オーストラリアのチャート除外(9月のニュースとして紹介) | ARIAの発表は8月、適用は8月31日付チャートから。時期を修正 |
| 7 | Apple Watchの音楽認識にレコード会社(UMG・ソニー)が反対 | 主要レーベルの公式な反対表明は確認できず。推測である旨を明記。各機能はオプトイン方式 |
| 8 | EUの原盤市場が「中国上回る伸び」 | 上回ったのは前年からの増加額。伸び率では中国(20.1%)が大きく上回るため補足 |
| 9 | シンク=「著作権収入みたいなもの」 | 映画・TV・広告等で楽曲を使用する際のライセンス収入と定義を修正 |
| 10 | Spotify子ども向け設定の「対象が13歳以下」 | 設定は全ユーザー(主に保護者)向け。13歳以下向けは別機能「Managed Accounts」 |
| 11 | ビートルズは論文タイトルで「最も多く引用される」 | 調査はタイトル内の曲名・歌詞の言及(参照)数。論文の被引用数ではない |
| 12 | Piano Sheet Converterの料金(スライドはFREE/BASIC/ADVANCEDの3プラン) | 窓の杜の報道ではFreeとADVANCED(月額1,980円)の2プラン。記事は報道ベースで記載。公開前に公式サイトで要確認 |
| 13 | Spotify日本チャート歌詞マップ(131組・1,163曲) | 一次出典をWeb上で特定できず。スライド記載に基づく記述のため、公開時は出典リンクの追記を推奨 |
| 14 | SoundCloud「楽曲直販」スライド | 放送で言及がなかったため本記事では扱わない |
参考情報・出典一覧
音楽生成AI「Suno」AI音楽ニュース2026年9月分(AI音楽ラジオ)②















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