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生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)

生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)
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ターゲットは「30代・会社員・既婚」のように、属性で集団を分ける考え方です。ペルソナは、暮らしや趣味、悩みまで具体化した1人の人物像です。同じチラシを見て来た人でも決め手は人によって違います。ただ、ABテストで案を増やすほど手間とコストがかかるため、これまでは案を絞るしかありませんでした。生成AIを使えば、ペルソナを何十通りにも広げて運用できます。雑誌の編集方針や広告の出し方を参考に、AIの仮説を実際のお客様の反応で確かめ続けることが大切です。

詳しくは15分の動画で解説しました。
https://www.youtube.com/watch?v=TS0Mv7d0Y_I

0:00 📱 導入・今日のテーマ発表 0:40 🖥️ 3枚のスライドをAIで30枚に再構成 1:30 📰 同じチラシでも来店理由は人それぞれ 2:15 🎯 ターゲットとペルソナの違い 2:50 👤 山田花子さんの暮らしから伝え方を考える 3:19 🗣️ お客様の声で決め手を聞く 3:50 📋 ペルソナはプロフィール・生活・悩みで整理 4:24 🆚 ABテストで従来案と改善案を比較 5:00 ⚖️ 正しく比べるには条件を揃える 5:33 📊 分割しすぎると母数が減り誤差が出る 6:05 🔄 ペルソナで仮説、ABテストで検証(PDCA) 6:20 🕰️ 4つの時代でマーケティングはどう変わったか 7:20 📮 アナログ時代のABテストとクーポンコード 8:15 🌐 ネット時代のABテストとランディングページ 9:00 📚 雑誌編集者に学ぶ「1人の暮らし」の考え方 9:46 💬 SNS時代は共感・関心からつながる 10:48 🤖 生成AI時代は複数のペルソナに展開できる 11:15 ⭕ AIに100人考えさせて〇△×で整理 12:20 🧪 AIでもABテストの基本は同じ 12:54 ⚙️ 横展開には運用設計とフローが必要 13:20 🔰 初心者は1人を決めて2案で試す 13:45 ✅ まとめ:顧客理解は深く、施策は広く 14:20 🎓 AI時代のマーケティング講座の必要性・締め

生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)

AIによる省力化と効率化と
自動化の違いを曲にした。
イーンスパイアの横田です。
https://www.enspire.co.jp/

MVも頑張りすぎましたw

省力化 効率化 自動化
https://www.youtube.com/watch?v=PK511v8uSes

3つの変化 / Milia – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ew9lNyM5Ka4

さて、本題です。

五感を意識したマーケティング戦略(ニーズ+ウォンツと4P+1P)
https://yokotashurin.com/etc/5kan-marketing.html
に続く第2弾です。アナログ時代、ネット時代、
SNS時代を経て生成AI時代で何が変わったか?

生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)

ターゲットとペルソナ グラレコ
📝 マーケティング講義 #2
ターゲットとペルソナの違いとAIで広がるペルソナ横展開
🎯 ターゲット👩 ペルソナ 🅰️🅱️ ABテスト📚 雑誌の編集長 🚗 クラウンの広告🐦 47都道府県アカウント 🤖 AIで100ペルソナ
1🎯 ターゲットとペルソナ、何が違う?

ターゲットは「届けたい集団」、ペルソナは「具体的なひとりの人物像」。

👥ターゲット=属性で分類
👨‍💼👩‍💼🧑‍💼
👩‍🦰👨👩‍💼

例:30代会社員既婚

条件に合うことだけ考えて、チラシや商品を作る。
セミナーや本で必ず出てくる言葉。

🔍ペルソナ=ひとりのユーザー
👩
山田花子さん
32歳・会社員・既婚
夫・幼稚園児の息子の3人家族
マーケティング部のリーダー的ポジション
東京都在住
💡 集団の範囲を決め、1人の暮らしまで具体化する
2📌 同じチラシなのに「来た理由」はバラバラ

「30代・会社員・既婚」向けのイベントチラシ。来場者に「なぜ来たんですか?」と聞くと、決め手はチラシの隅にちょこっと書いたことだった。

🧸 右下の「キッズスペースあり」

山田花子さん(32歳)。幼稚園児の息子連れでも安心だから。

🐟 2匹目のドジョウを狙え!

🅿️ 左下の「P2台あり」

30代会社員の男性。車社会、電車は面倒、車で行けるなら便利。

🐟🐟 3匹目のドジョウを狙え!

🍶 「お酒プレゼント」

お酒好きなら「いいな」と思って来るかも。(受講者の回答から)

🐟🐟🐟 4匹目…?

⚠️ 3人ともターゲット条件には全員合っている。でも決め手はターゲット設定の外側にあった。
本当はターゲットに合わせるなら「キッズスペースあり」は書いてはいけない。隙間があったから“ついで”に書いただけ。
💡 属性が同じでも、求める価値は同じとは限らない
3⚔️ 社内で意見が二分 → ABテストへ
🙆 キッズスペースを大きく!派

30代既婚なら小さい子どもがいる人も多いはず。打ち出せばもっと来る。

🙅 従来のままがいい!派(デザイン担当)

何かを大きくすると、物理的に何かが小さくなる。今まで来てた人が減ったら、たった1人のためにマイナスになる。

⬇️ やってみなきゃ分からない…「じゃあ街を2つに分けてABテストしよう」

🌐 1,000人がアクセス → 500人ずつ振り分け
A:従来のデザイン
500人 → 問い合わせ 5人
1.0%
5 ÷ 500 = 100人に1人
VS
WIN! B:テストデザイン
500人 → 問い合わせ 10人
2.0%
10 ÷ 500
🎯 CV=問い合わせなどの目標行動
📊 CVR=何%の人が成約(目標行動)してくれたか
✅ 次回からBを採用して1,000人に販促。
※スライド補足:この件数だけで今後も必ずBが勝つとは断定できない
💡 担当者の好みではなく、お客様の反応で確かめる
4🌀 A・B・C・D…案は無限に増えていく
🅰️ 従来版
家族で楽しむまちのイベント
🅱️ キッズ
キッズスペースあります!
©️ 駐車場
P 駐車場を大きく
🇩 プレゼント
来場でお酒プレゼント!

➡️ E、F、G … 「もういい加減にしろ」😩

📄×N
案の数だけチラシ制作
手間もコストも増える
30,000÷5
3万人の街を5分割すると
1つ成功・4つ失敗の恐れ
2案
上司「せめて2つに絞れ」
企業のあるある
🤔 でも本当は、売上・集客を考えるなら全部やった方がいい。一番人が集まりそうな案を「お酒はちょっとね」と外したら本末転倒。
💡 理屈は分かる。でも「誰がやるの?」問題が立ちはだかる
5🎯 だから「ペルソナ」— 全部の条件を掛け合わせる
👶 小さい子
🚗 車移動
🍶 お酒好き
💼 30代会社員既婚
🎯

案を増やすのが大変なら、一番可能性が高い1つに絞った方がいいという考え方。

  • 30代会社員・既婚 + 小さい子 + 車移動 + お酒プレゼント
  • 全部が重なる人にしか届かない=ターゲットは狭くなる
  • その代わり魅力的なことしか書いていないから刺さりやすい
  • 生活習慣・趣味・思考まで考えて販促するのが今の主流
💡 漠然と広くではなく、1人に深く刺す
6⏳ 4つの時代でマーケティングはどう変わった?

変化の軸は「届く範囲・分かる反応・作れる量」。古い手法が消えたのではなく、選択肢が積み重なっている。

🏪① アナログ

紙・店頭。地元に広く浅く告知し、反応が取れるものをやる。→ ターゲット中心

💻② ネット

ウェブ・検索。絞っても先にたくさんの人がいる。→ ペルソナが効果的に

📱③ SNS

投稿・人のつながり。人という切り口で、インフルエンサー・アンバサダーを活用

🤖④ 生成AI

発想・制作の支援。さらに細かく、複数の人物像へ横展開できる

💡 時代が変わっても、中心は「誰に、どんな価値を届けるか」
7⚖️ 時間は有限 — ターゲットとペルソナは良し悪し
👥 ターゲット(ゆるく設定)
  • 細かく考えない
  • 代わりにチラシ制作など他に時間を割ける
👩 ペルソナ(細かく設定)
  • 考えることがいっぱい
  • 1人作るだけで大変。2人目・3人目は大変すぎて、やらない
🕐 人間は24時間365日しかない。何かに時間をかけると、何かの時間が減る。
⬇️
ところが AI時代は… 1つ作れば「同じことを他のペルソナでやって」ができる!
🧑‍🏫
1個やってしまうと、これと同じことを他のペルソナでやってね、っていうことはAIできるんですね。2個3個できるんですね。— 横田秀珠
8📚 ペルソナの考え方は「女性誌コーナー」で分かる
20代独身
20代既婚
30代
40代
50代
ハルメク📈
主婦向け
…20〜30誌
🗂️ 隙間なく埋まっている

年代・性別、さらに既婚/独身で分かれる。同じターゲットで2誌目を出すと奪い合いになるから、後発は先行誌が狙っていない所を狙う → 結果、隙間なく埋まった。

📈 今伸びているのは「ハルメク」

若い人は雑誌を読まないが、50〜60代のアナログ世代は読む。老後の暮らし・年金生活・スマホの便利な使い方…我々は買わなくても、その人たちには刺さる。

✏️ 編集長はペルソナを分かっている。読者層から離れた企画は「部数が落ちる」とボツ。
🍳 食事・👨‍👩‍👦 家族・🏠 住まい・✈️ 旅行・💼 仕事…1人が生きていく上で役立つ情報が漏れなく入っていると、その雑誌を買うメリットがある。
💡 自分のお客様は「どの雑誌を読んでいる人?」と考え、まず1冊買ってみる
9🚗 雑誌の広告も同じ — クラウンの例

スポンサーも「自社の商品を買ってくれそうな人が読む雑誌」に広告を出す。

⛳ ゴルフ雑誌 × 軽自動車?

❌ 出さない

ゴルフバッグが入らない。大人4人も乗れない。ゴルフ場に軽で来る人はいない。

⛳ ゴルフ雑誌 × クラウン

⭕ ゴルフバッグがトランクに4つ入る!

大人4人で接待も含めゴルフ場へ。全員のバッグが入るのが売り。

💄 女性誌 × ピンクのクラウン

⭕ 女性でも可愛く乗れます

「ゴルフできます」とは書かない。

🧳ゴルフに出かける人荷室の使いやすさ
🛒毎日の買い物に使う人日常の便利さ
🎨見た目を楽しみたい人デザインの魅力
💡 商品は同じでも、相手の用途に合わせて魅力を伝える
10📱 SNS運用に応用 — ベビーチェアの例
😣 毎回「椅子買いませんか?」

売り込み色が強く、フォローされにくい。

😊 その人の暮らしに役立つ情報も発信

子どもの食事の工夫・椅子の使い方・サイズの選び方…椅子の情報も学べて、自分に役立つアカウント。

👀役立つ投稿を見る椅子に興味なくても
➡
➕フォローこのアカウント面白い
➡
🪑椅子の情報が流れる「この椅子欲しかった!」
📖 雑誌を読んでいたらたまたま車の広告が目に入って「いいな」と買うのと同じ構造。
💡 何を売るかに加えて、「誰に役立つ媒体か」を考える
11🐦 15年前の「47都道府県アカウント」がAIならできる

Twitter(現X)が始まった頃、47都道府県すべてのアカウントを1人で運用した人がいた。

🗻 北海道
30代女性、こんな趣味の人
🍎 青森
60代のちょっと年配の男性
🦀 福井
20代女性、高卒で結婚した人
北青岩宮秋山福茨栃群埼千東神新富石福山長岐静愛三滋京大兵奈和鳥島岡広山徳香愛高福佐長熊大宮鹿沖
×47
リーチする可能性
×47
かかる時間…誰がやる?
🤖
AIなら100倍・1000倍に横展開
📲 Instagram・TikTokのフィードは自分好みに最適化され、興味ないものは出なくなる。
➡️ アカウントが1個なら、そのキャラが好きな人しか集まらない。キャラクターが1つしかないと不利。
🧑‍🏫
47倍リーチするためには47倍時間かかるわけですよ。でもそれをやってる人がいたの、その今から15年前に。これがAIならできるってことです。— 横田秀珠
12🧩 ペルソナを作る項目 — 組み合わせは無限大
項目例
👤 年齢・性別20代・30代・40代…/男性・女性
📍 居住地域何々市ではなく、駅の近く・団地・都会・田舎・海の近く・山の近く
🏠 住居情報持ち家・実家・アパート・マンション
🎓 学歴中卒・高卒・大卒・大学院
💼 職業・年収職業は無限、年収は少ない人から多い人まで
👨‍👩‍👧 家族構成1人・2人・3人・4人…
🎸 趣味無限にある
🎯 まず最大公約数=一番来そう・買ってくれそうな「王道のど真ん中」を1つガツンと決める。
仮に100人中60人が当てはまっても、残り40人は5人・12人・3人・1人…といくつものグループに分かれる。
💡 全部の掛け算だから100や1000どころじゃない。人間には無理、でもAIは考えられる
13🤖 AIに100ペルソナを考えてもらい ○△× で仕分け
○
30人
うちのお客さんにいそう
=今買ってくれている人
△
20人
いるか分からない
=悩んでいる人
×
50人
ちょっとありえない
=別メーカーで買っている
○ 30
△ 20
× 50
📄 今のホームページやチラシには、最初の30人に刺さることしか書いていない。
残り70人は「得意です」「できます」と書いていない、または欲しい商品がないから買えないだけ。
🛠️商品を開発する△×の人が満足する商品
📰刺さるチラシを作るその人向けの打ち出し
📦仕入れて売る開発できないなら

🏬 イオンに行けば何でもあるのに、家具・靴・服の専門店があるのも、絞って専門性を増した方が刺さりやすいから。

⚠️ スライド補足:AIが作った人物像は実在の顧客を確認した結果ではなく検証前の仮説。○が30件でも市場占有率30%という意味ではない。理由を付けて選び、実際の声や購入データで確かめる。
💡 売れない理由を分けると、次にやることが見えてくる
14🔄 ペルソナで仮説を作り、ABテストで確かめる
👩① 顧客理解子連れ参加が不安
➡
💡② 仮説安心が伝われば申込が増える?
➡
🖍️③ 制作キッズスペースを目立たせる
➡
📊④ 検証A・Bの申込率を比べる
➡
🔁⑤ 見直し伝え方や人物像を修正
🗣️ お客様に聞こう「なぜ選んだのですか?」
何を見て知った?/何が決め手?/参加前の不安は?/ほかと比較した?
※1人の声は全員の意見ではなく手がかり
⚙️ 正しく比べるには条件をそろえる
同じ期間・似た対象者を無作為に分ける・同じ媒体・変えるのは1か所だけ
💡 人物像を決めて終わりにせず、反応から学び直す
15🚀 初心者の実践手順:1人を決め、2案で試す
目的を決める例:イベント申込を増やす
顧客の声を集める決め手・不安を聞く
ターゲットを決める届けたい集団を整理
ペルソナを具体化暮らし・悩みを描く
AIで訴求案を作る確認済みの情報を渡す
比較する2案を選ぶ変更点・指標を決める
反応を測る条件をそろえて確認
人物像と発信を見直す学びを次の案へ
🧑‍💻 AIで投稿案が増えても、確認・対応・改善の仕事は残る。アカウント数と成果は単純比例しない。まず1つのアカウントでテーマやシリーズを分けて試す。
💡 小さく始めて、測って直す。その繰り返しが改善につながる
16🏁 まとめ:ペルソナを社員全員の共通認識に
🎯 ターゲット
届けたい集団を決める
👩 ペルソナ
理解を深める人物モデル
🅰️🅱️ ABテスト
仮説を確かめる方法
📚 本屋で「どの雑誌を買う人がうちのお客さん?」
📺 「このドラマを見ながら子どもにご飯をあげてそう」
🎵 「音楽は絶対これを聞いている」🎬 「こういう映画が好きなはず」
➡️ 社員全員がこの共通認識を持つと、相当強い
🧑‍🏫
自分の会社はどういう人が一番メインのターゲットか、っていうのが見えてると相当強くなるんですね。是非こういうペルソナっていう考え方をですね、やってみましょう。— 横田秀珠
💡 AIで可能性を広げ、実際のお客様の反応で磨き続けよう

生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)

  1. はじめに
  2. ターゲットとは何か?同じチラシを見たのに「来た理由」が違う3人のお客様
  3. ABテストの限界と「ペルソナ」という考え方が主流になった理由
  4. 本屋の雑誌コーナーに学ぶペルソナ ― 編集長と広告主はなぜ迷わないのか
  5. AI時代はペルソナを47倍・100倍に横展開できる
  6. おわりに
  7. まとめ
  8. よくある質問(Q&A)

はじめに

皆さん、こんにちは。イーンスパイア株式会社の横田秀珠です。

突然ですが、皆さんはチラシやSNSの投稿を作るとき、「これは誰に向けたものだろう?」と考えたことはありますか? セミナーやマーケティングの本を開くと、必ずと言っていいほど出てくるのが「ターゲット」と「ペルソナ」という2つの言葉です。どちらも「お客様は誰か」を考えるための言葉なのですが、実はこの2つ、似ているようでまったく違う考え方なんですね。

今回は、あるイベントのチラシを例にしながら、「30代・会社員・既婚」というターゲット設定でチラシを作ったら、来てくれたお客様が全員違う理由で来ていた……というお話から始めます。そこからABテスト、ABCテスト、さらには本屋さんの女性誌コーナーやゴルフ雑誌の車の広告、そして15年前のTwitterで47都道府県分のアカウントを1人で運用していた人の話まで、身近な例をたくさん交えてお届けします。

最後には、生成AIの登場によって「ペルソナ」の使い方がどう変わったのか、100人のペルソナをAIに考えてもらったら何が見えてくるのか、というところまでお話しします。読み終わる頃には、自分の会社のお客様がどんな雑誌を読んでいて、どんなドラマを見ているのか、ちょっと想像してみたくなっているはずです。肩の力を抜いて、気軽に読み進めてみてくださいね。


ターゲットとは何か?同じチラシを見たのに「来た理由」が違う3人のお客様

ステップ1:「ターゲット」と「ペルソナ」という2つの言葉

まずですね、マーケティングを学ぶうえで最初に押さえておきたいのが、ターゲットという言葉とペルソナという言葉です。

ターゲットというのは、「自分の会社のターゲットは誰ですか?」とか、「このチラシのターゲットは誰ですか?」といった形で、セミナーや本などで必ずと言っていいほど出てくる言葉です。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

一方のペルソナは、もう少し新しい考え方で、「ひとりのユーザー」をものすごく具体的に描いていくやり方です。この2つの違いを、これから順を追って丁寧にお話ししていきますね。

項目ターゲットペルソナ
ひとことで言うと届けたい「集団」具体的な「ひとりの人物像」
決め方属性で分類する暮らし・悩み・趣味まで描き込む
例30代・会社員・既婚山田花子さん、32歳、会社員、既婚(夫・息子の3人家族)、マーケティング部のリーダーポジション、東京都在住
考える量少ない(ゆるく設定)多い(細かく設定)
届く範囲広く浅く狭く深く

ステップ2:ターゲットとは「属性で分類する」こと

ターゲットというのは、ひとことで言えば属性で分類するということです。

たとえば、「30代の会社員の既婚の人が、私の商品・会社のターゲットです」とか、「このチラシのターゲットです」というような形で決めていくわけですね。年齢、職業、結婚しているかどうか――こうした「属性」でお客様をグループ分けするのがターゲットの考え方です。

そうすると、次に何を考えるかというと、「30代の会社員の既婚の人には、どういうキャッチコピーで、どういう要素を入れていけばいいのか?」ということになります。そして、その条件に合ったことだけを考えてチラシを作ったり、商品開発をしたりする。これをターゲットと言います。

つまり、ターゲットを決めるというのは、「この条件に当てはまる人たちに向けて作りましょう」と、作る側の判断の軸を1本決めることなんですね。

ステップ3:イベントチラシを作って集客してみたら……

では、仮にそのターゲット設定で、あるイベントのチラシを作ったとしましょう。

30代の会社員の既婚者向けにイベントチラシを作って、実際に集客をしてみたところ、あるお客さんがいらっしゃいました。そこで、そのお客さんに「なぜこのイベントに参加したんですか?」と聞いてみたんですね。

すると、こう答えたんです。

「御社のチラシの右下に、ちっちゃく『キッズスペースがあります』と書いてあったので、決めました。それが決め手でした。」

これを聞いた側は、「なるほど。確かに、ちょっとついでに載せたんですよね」と思うわけです。

なぜ「ついで」なのかというと、キッズスペースがあるというのは、ターゲットの設定条件に入っていないからです。ターゲットは「30代・会社員・既婚」ですよね。既婚とは書いてあるけれど、子供がいるとは書いていないし、小さい子供がいるとも書いていない。だから、本当にターゲットに合わせてチラシを作るのであれば、「キッズスペースがあります」というのは、書いてはいけない情報なんですね。

なんですけど、ついでにというか、チラシに隙間があったから書いてしまった。そういうことですよね?

ステップ4:山田花子さんという「ひとりのお客様」

では、このお客さんはどういう人だったかというと――

  • 名前:山田花子さん
  • 年齢:32歳
  • 職業:会社員
  • 結婚:既婚
  • 家族構成:夫(つまり旦那さん)と息子の3人家族
  • 息子さん:まだ幼稚園児で小さい
  • 仕事:マーケティング部に所属していて、リーダー的なポジション

という人だったとします。

この山田花子さんは、ターゲットの属性の条件にちゃんと含まれていますよね。32歳という年齢は30代だし、会社員はもちろん会社員だし、既婚で子供もいるというのも当てはまっています。

ところが、「キッズスペースがあります」という、小さい子供がいるという条件はターゲット設定にはなかった。でも、この人はその一言で来てくれたわけです。

確認項目ターゲット条件山田花子さん一致?
年齢30代32歳○
職業会社員会社員(マーケティング部・リーダー)○
結婚既婚既婚○
子供(条件になし)幼稚園児の息子がいる―
来場の決め手(想定外)チラシ右下の「キッズスペースがあります」―

このように、属性は同じでも、心が動くポイント(決め手)はターゲットの条件の外側にあった、というのがポイントです。お配りしているスライドにも「属性が同じでも、求める価値は同じとは限らない」と書いていますが、まさにそういうことなんですね。

ステップ5:「2匹目のドジョウ」を狙いたくなる

この話を聞いて、ある人がこう思うわけです。

「今まではチラシのデザインをこうやって作ってきたけど、『キッズスペースがあります』っていう、こんなちっちゃい情報で来る人がいるんであれば、もうちょっと大きく載せて打ち出せば、キッズスペースがあるっていうので、もっとたくさんの人が来るんじゃないの?」

こう考えるわけですね。

これを通称、2匹目のドジョウと言います。1匹ドジョウを捕まえたら、きっとこの池にはもう1匹ドジョウがいるはずだから、2匹目のドジョウを狙って対策しましょうね、ということを思うわけです。

ステップ6:デザイナーは「それ、たまたまでしょ」と反対する

ところが、そうすると、このチラシのデザインを作った人が言うわけです。

「いやいや、ダメです。それ、たまたまでしょ。」

デザイナーさんの言い分はこうです。もし「キッズスペースがあります」を大きく打ち出したら、代わりに何かの表現が小さくなる。物理的にですね。チラシの紙面は限られているので、何かを大きくすると、何かが小さくなってしまう。

そうすると、それ以外の部分は30代の会社員の既婚者向けに作っているのに、その要素が弱まってしまって、今まで来ていた人が減ってしまう可能性がある。たった1人のために多くの人が減ってしまったら、結果的にマイナスになってしまうので、それは良くないです――と反対するわけですよ。

でも、もう一方はこう言います。

「いやいや、そうじゃなくて。もしかしたら既婚者の中には、普通、子供がいる人も多いでしょ。30代で既婚者だったら、ちっちゃい子供がいる人も結構いるんじゃないの? だから、これを打ち出した方がもっと来るんじゃないの?」

こうして、意見が二分するわけです。キッズスペースを打ち出した新しいチラシがいいのか、従来の古いチラシがいいのか、ということで二分する。そうすると、これはどっちも、やってみなきゃわからないことですから、「困ったね」ということになります。

立場主張根拠
改善派(2匹目のドジョウ)キッズスペースを大きく打ち出すべき30代既婚なら小さい子供がいる人も多いはず
従来派(デザイナー)元のチラシのままがいい何かを大きくすると何かが小さくなり、今までの来場者が減るかもしれない

ステップ7:街を2つに分けて「ABテスト」をする

「じゃあ、ということで。この街を2つに分けて、ABテストしましょうね」という話になるわけですね。

これをABテストと言います。スライドに書いてある通りなんですが、たとえば1,000人がアクセスしている場合に、500人ずつ違うウェブサイトに誘導して、どっちの方が反応が取れたかを比べるんです。

  • Aの方(従来のデザイン):500人が来て、5人が問い合わせをしてくれた
  • Bの方(テストデザイン):500人が来て、10人が問い合わせをしてくれた

ここで出てくるのがCVRという専門用語です。CVRというのは「コンバージョンレート」の略で、何%の人が成約(問い合わせや申し込みなど、目標の行動)をしてくれたかという割合のことです。

パターン閲覧数問い合わせ数計算式CVR
A:従来のデザイン500人5人5 ÷ 500 × 1001.0%(100人に1人)
B:テストデザイン500人10人10 ÷ 500 × 1002.0%

Aは5人÷500人で1%、つまり100人に1人。Bは10人÷500人で2%です。ということは、Bの方がデザインが良かったから、「じゃあ次回からはBを採用して、1,000人全員に販促しましょうね」――こういうのをABテストと言うんですね。

ちなみにスライドでも補足していますが、ABテストで正しく比べるためには、同じ期間に実施する、似た条件の対象者を無作為に分ける、同じ媒体で配信・掲載する、主に見出しだけを変更するなど、「知りたい違い以外の条件をできるだけそろえる」ことが大切です。平日と休日、駅前と住宅地のように条件がバラバラだと、何が結果に影響したのか分からなくなってしまいます。また、件数が少ないうちは「今後も必ずBが勝つ」とは断定できない、という点も頭に入れておいてください。

さて、ABテストをしましょうということになって、街を2分してAとBに分けてやってみた。そうすると、どっちがいいかが分かりますね。

ステップ8:今度は「駐車場があります」で来た男性が現れる

はい。ところが、です。

この最初に作ったチラシのときに、スライドの右上に描いてある男性、この男性も実はイベントに来てくれていたとしますね。で、この人にも同じように「なんで来てくれたんですか?」と聞いてみたんです。

この人は確かに30代で、会社員で、既婚の人でした。でも、それにプラスして、イベントに来た理由は――今度は右下ではなく、左下の方にちっちゃく「駐車場があります」と書いてあったから、だと。

「今、車社会だから、電車で行くとかだったら面倒くさいけど、車で行けるなら便利だなと思って、このイベントに来ました」と言ったわけです。

ちっちゃく「P2」とか「P2台あり」とか書いてあったぐらいなのに、「駐車場があるんだったらいいと思って来たんです」と言ったとしますね。

そうしたらまた、「じゃあ駐車場を大きく『あります』って打ち出せば、もっと来たかもしれないね」ということになって、今度はこの人の――まあ、ドジョウじゃないにしても――3匹目のドジョウを狙おうとするわけですね。

ステップ9:3者が喧嘩になって「ABCテスト」へ

そうすると、今度は駐車場をもっと大きく打ち出した案に変えようとすると、また2人が文句を言うわけです。

  • 最初の人は「いや、元のままがいい」と言っている
  • 次の人は「いや、キッズスペースを打ち出した方がいい」と言っている
  • そこに「駐車場を出した方がいい」と言う人が加わる

この3者が喧嘩になるわけですよ。そうすると「じゃあどうする?」という話になって、「しょうがないから、Aの従来のやつと、Bのキッズスペースを打ち出したやつと、Cとして駐車場を大きく打ち出したやつで、ABCテストをしましょうね」という話になるわけです。

で、このABCテストをやっていくと、これでまたどれが良いか分かるじゃないですか。

ステップ10:さらに別の理由で来た人が……「お酒のプレゼント」

ところが、また別の1人に聞いてみたら、今度はこの人がまた違う理由で「ここに来ました」と言ったとしますね。

大事なのは、それでも全員、ターゲットとしては30代・会社員・既婚で合っているということです。この3人とも全員ターゲットには合っているんだけど、決め手になった部分が、それ以外の部分なんですね。そして、この人もまた違うことを言ったとします。

じゃあ、たとえば何て言ったと思いますか? 30代の会社員の既婚の人が、やっていそうなこと、持っていそうなこと、イベントに来る理由として考えられそうなこと。何でも言ったら全部正解と言ってもいいんです。別に一番可能性が高いものを当てる必要はなくて、30代の会社員の既婚の人の生活とか、好きなものとか、何でもいいんですけど――

講義中にこう問いかけたところ、「お酒」という答えが返ってきました。

はい、お酒が好きだと。たとえば、チラシに「お酒のサンプルをプレゼント」みたいなことが書いてあったら、お酒好きな人は「いいな」と思って来るかもしれないですよね。この人は確かに30代で会社員だし、お酒を飲んでいい年齢だし、既婚の人でお酒好きな人は普通にいっぱいいると思うから、十分ありえますよね。

そうすると今度は、それを大きく打ち出した方がいいという話になって、ABCDテストになってくるじゃないですか。はい。これ、無限に増えていきますよね。

来場者属性決め手(チラシの小さな記載)打ち出し案テスト
1人目:山田花子さん30代・会社員・既婚右下の「キッズスペースがあります」B:キッズスペースを大きくABテスト
2人目:右上の男性30代・会社員・既婚左下の「P2台あり」(駐車場)C:駐車場を大きくABCテスト
3人目:お酒好きの人30代・会社員・既婚「お酒のサンプルプレゼント」D:プレゼントを大きくABCDテスト
4人目以降……30代・会社員・既婚また別の理由E、F、G……無限に増える

全員がターゲットの条件をきちんと満たしているのに、来た理由はバラバラ。これが「ターゲット」という考え方の、面白いところでもあり、難しいところでもあるんですね。


ABテストの限界と「ペルソナ」という考え方が主流になった理由

ステップ1:理屈では「全部やった方がいい」のは分かる

さて、ここまでの話を整理してみましょう。

チラシの小さな記載で来てくれた人がいる。その可能性があるんだったら、それを大きく打ち出した方が、その人には刺さりやすくなる。だから、「刺さりやすいチラシを作っていけば作っていくほどいいじゃん」という話は、理屈の上では分かると思うんですよ。

なんだけど、それをやるということは、その数だけチラシを作らなきゃいけないし、手間が増えるし、お金もかかるわけですね。チラシを作るコストだったり、印刷するコストだったり、配る手間だったり。

ABCまでは頑張ったとしても、ABCDEFってなってくると、もう「いい加減にしろ」という話になるじゃないですか。理想を突き詰めれば分かるんだけど、さすがにちょっと無理ですよ、ということになるわけです。

スライドにも書いていますが、たとえば対象者1,000人を2案に分ければ1案500人ずつですが、4案に分けると1案250人ずつになってしまいます。案が増えると、制作・配布・集計・分析とやることも増えるし、1案あたりの人数が少なくなると、偶然の差か本当の差かも判断しにくくなるんですね。

案の数1案あたりの人数(対象者1,000人)制作の手間判断のしやすさ
2案(AB)500人2パターン分比較的判断しやすい
3案(ABC)約333人3パターン分やや難しくなる
4案(ABCD)250人4パターン分偶然の差と区別しにくい
6案(ABCDEF)約166人6パターン分「いい加減にしろ」の世界

ステップ2:上司の「せめて2案に絞れ」は企業の“あるある”

たとえば、イベントの企画を考えている上司の人が、こう言うわけですよ。

「気持ちは分かる。分かるんだけど、そこから最低でも2案ぐらいに絞れ。」

本当は1個と言いたいけど、せめて2つぐらいに絞って、と。で、2つに絞るために、また喧嘩をワンワンしながら、「じゃあこれとこれ」と2個を残して、「それでABテストしなさい」という話になるわけです。

こういうのは、普通に企業であるあるです。本当によくある出来事なんですね。

ステップ3:でも絞ってしまうと「本末転倒」になることもある

でも、本当は、売上を上げたいとか、集客をしたいということを考えるのであれば、全部やった方がいいわけですよ。

だって、たとえば「お酒をプレゼント」というのをやったら、それが一番人が集まる可能性もあるよね。今の3つで言うと、「キッズスペースがあります」とか「駐車場があります」よりも、「お酒プレゼント」があった方が、もしかしたら一番人が来る可能性が高いかもしれないじゃないですか。

なんだけど、「いや、お酒はちょっとあれだね」とか言って、「じゃあ、これとこれ」と絞ってしまったら、なんだか本末転倒になっちゃうんですね。一番効果があったかもしれない案を、社内の都合で捨ててしまうわけですから。

ステップ4:「一番確率が高いものに絞る」――これがペルソナの発想

結局、みんなは何を考えるかというと、ABCDテストとかABCDEテストとか、どんどん増やしていくのは大変だから、「その中で一番可能性が高いもの、確率が高いものを1個に絞ってやった方が、むしろいいんじゃね?」という考え方になります。

これが、スライドの右側に書いてあるペルソナという考え方なんですね。

つまり、漠然といろんな人に刺さりそうな「ターゲットは30代・会社員・既婚です」と言うのではなくて、たとえば今の条件を全部満たすとすると、

  • 30代の会社員で
  • 既婚な上に、ちっちゃい子供がいて
  • 車で移動するのが好きで
  • お酒が好き

という人物像を作るわけです。(車で移動するのが好きな人がお酒好き、というのはちょっと良くないですけどね。でも、お酒はプレゼントだから、その場で飲むんじゃないからね。持って帰るだけですから大丈夫です。)

そして、「お酒をプレゼントできます」みたいなことも含めて、全部を掛け合わせたターゲット層を作っていく。そうすると、それらをうまく打ち出したチラシを作れば、もうめちゃくちゃ絞られていくんです。

ステップ5:円の重なりで考えると分かりやすい

分かりますか? こういう円をイメージしてください。

  • 30代・会社員・既婚の人の円
  • 小さい子供がいる人の円
  • 車が好きな人の円
  • お酒が好きな人の円

これらの円が重なっているんだけど、全部が重なっている部分にいる人にしか届かないから、ターゲットはものすごく絞られてしまうんですね。

その代わり、その人にとっては魅力的なことしか書いていないチラシになるから、その人にはかなり刺さりやすくなる。こういうやり方をペルソナと言います。

比較ターゲット型のチラシペルソナ型のチラシ
対象30代・会社員・既婚(広い円)すべての円が重なる部分(狭い)
中身誰にでもそこそこ当てはまる内容その人にとって魅力的なことだけ
刺さり方浅く広く狭く深く、強く刺さる
弱点決め手が埋もれやすい届く人数が少なくなる

ステップ6:その人の生活習慣・趣味・思考まで考える

次のスライドにも書いていますが、ペルソナでは、その人の生活習慣とか趣味とか思考とか、もういろんなことを全て考えて、その人に向けてチラシを作っていきましょう、販促していきましょう、というやり方をします。

スライドでは、ペルソナを「プロフィール・生活・悩み」の3つで整理しています。

分類主な項目目的
プロフィール年齢、性別、居住地域、住居情報(持ち家・賃貸など)、最終学歴、職業、年収、家族構成基本的な属性情報で全体像をつかむ
生活趣味(旅行・映画・料理など)、よく使うSNS(Instagram・X・YouTubeなど)、タイムスケジュール(平日・休日の過ごし方)日常の過ごし方から接点のヒントを得る
悩みと理想現在の悩み(仕事・家事・育児・お金・健康など)、解決してどうなりたいか(理想の生活・実現したいこと)購入や利用のきっかけになるポイントを整理する

山田花子さんで言えば、「休日にイベントへ行きたい。でも、子供が退屈しないかな? 子連れでも参加できるかな?」という不安を抱えているかもしれない。そこが見えると、「親子で参加できます」「キッズスペースあり」「会場での過ごし方をご案内」といった、伝えるべき安心が見つかるわけですね。

これが今、主流のやり方になったんです。

ステップ7:なぜペルソナが主流になったのか ― 街を5分割するリスク

では、なぜこのやり方が主流になったのかというと、今までは、たとえば同じ町で5人から出た5つの意見を参考にして、ABCDEテストをやっていくと、どうなるか。

元々、たとえば3万人の街があったとすると、3万人を5で割って、それぞれでABCDEテストをしなきゃいけなくなりますよね。そうすると、下手をしたら、1個は成功したとしても、残り4つのパターンで失敗する可能性もあるわけですよ。

テストとは言っても、本当は1つのパターンを全員にやればうまくいったかもしれないのに、5分割したことによって、もしかしたらリスクも高くなるじゃないですか。

だから、「せめてABぐらいにしろ」と言うわけですね。細かく分けると1個しかうまくいかない可能性もあるから。今までうまくいっていたものがあるんだったら、半分はそれを残しておけば、少なくとも半分はオッケーだよね、ということもあって、そういうやり方をしてきたんです。

分割の仕方1パターンあたりの人数(3万人の街)成功パターンが1つだった場合
分割しない30,000人当たれば全員に届く/外れれば全滅
AB(2分割)15,000人従来案を残せば半分は安心
ABCDE(5分割)6,000人1つ成功しても、残り4パターン(24,000人分)は失敗の可能性

ステップ8:インターネット時代は「絞っても、その先にたくさんの人がいる」

ところが、今はインターネットの時代になりました。アクセスできる人、リーチできる人と言った方がいいかな、その人数が増えたことによって、より絞って、絞ったとしても、その先にたくさんの人がいるんです。

地元の街だけで考えたら、「ベビーチェアの置き場所に困っている人」なんて数人しかいないかもしれない。でも全国、インターネットの先まで見れば、同じ悩みを持っている人はたくさんいるかもしれないわけです。

だから、ペルソナのようにギュッと絞るやり方の方が、インターネット時代には効果的なんですね。こういうこともあって、ペルソナというやり方が、今は中心になってきています。

ただし、スライドにも注意書きをしていますが、ホームページを公開するだけで全国に届くわけではありません。検索や広告などの集客も必要です。「対象を絞ること」と「届ける地域を広げること」は両立できる、というのがポイントです。

ステップ9:ペルソナの弱点 ― とにかく「時間がかかる」

そうすると、今までのマーケティング手法だと、誰か1人、かなり細かい設定の人物を決めたら、その人に向かってあらゆることを考えて販促をしていきましょう、ということになります。

でも、これって結構大変なわけですよ。考えなきゃいけないことがいっぱいあるから。で、1個やるのも大変なのに、1つペルソナを考えた後に、「じゃあ2人目のペルソナを考えてやっていきましょう」とか、「3人目のペルソナを考えていきましょう」というのは、大変すぎるからやらないんですね。

当たり前なんですけど、人間には24時間365日しかありません。みんな同じように働いていて、何かにかける時間を増やしてしまうと、何か別のことにかける時間が当然減ってしまいます。

だから、ターゲット設定ばっかりに時間をかけていたら、他のことをやる時間はなくなってしまう。今までは漠然と「ターゲット」のようにゆるく設定することで、あまり細かいことを考えない代わりに、他のところに時間を割くことができていました。ところが、ペルソナのようなことをやってしまうと、ここだけで時間を取られてしまって、チラシを作ったり、他のことをやったりする時間が少なくなってしまうんです。

だから、良し悪しなんですよね。どっちがいいかというのは。

観点ターゲットペルソナ
設定にかかる時間短い長い
他の作業(チラシ制作など)に回せる時間多い少なくなる
刺さりやすさ弱め強い
2人目、3人目への展開―大変すぎるので、普通はやらない

スライドでも「ターゲットとペルソナは、組み合わせて使う」と書いています。ターゲットで「届けたい集団の範囲」を決め、ペルソナで「その中の代表的な1人の内容」を具体化し、反応を見て両方を見直していく。どちらか一方が正解というわけではなく、両方の良さを活かすのが大事なんですね。

このやり方が、今までは結構いいと言われてきたんです。

ところが――ここからが大事な話なんです。


本屋の雑誌コーナーに学ぶペルソナ 編集長と広告主はなぜ迷わないのか

ステップ1:AI時代になると「できちゃう」

ここが分かりにくいかもしれないんですけど、大事な話です。

これが今、AI時代になると、できちゃうんですよね。

つまり、1つパターンを作って、1人のペルソナを考えて、「じゃあこれでチラシを作りましょう」とか、「これでInstagramの運用をやっていきましょう!」とか、「これでランディングページを作りましょう」とか、色々やっていくわけです。で、これって1個やるだけでも大変なのに、2個、3個、4個と、さっきのABCテストみたいにやっていくのは、もっと大変になるじゃないですか。

はい。だけど、1個やってしまえば、「これと同じことを、他のペルソナでもやってね」ということがAIにはできるんですね。2個、3個とできる。これが可能になったんです。

作業人間だけでやる場合AIを活用する場合
ペルソナ1人目の設定大変(時間がかかる)人間とAIで相談しながら作る
ペルソナ1人目向けのチラシ・Instagram・LP大変AIが下書きを支援
2人目、3人目、4人目への横展開大変すぎてやらない「同じことを他のペルソナでやって」で展開できる

ステップ2:マーケティングは4つの時代で変わってきた

もっと言えば、マーケティングのやり方は、時代とともにこう変わってきたんです。

① アナログの時代(リアルしかなかった時代) インターネットがなかった頃のマーケティングは、先ほど紹介したように「ターゲット」を決めて、なるべく漠然としたもので、地元に広く浅く、多くの人に告知をして、その中で反応が取れるものをやっていく、というやり方が中心でした。チラシ、DM、店頭――届けられる場所と使える紙面の広さには限りがあります。

② インターネットの時代 次に出てきたインターネット時代になると、今度はより絞っても、その先にたくさんの可能性がある。多くの人にリーチする可能性があるから、ペルソナのような手法が出てきた、とも言えるんですね。

③ SNSの時代 それこそ前回お話ししたSNSの時代になってくると、今度は「人」をターゲットにして、「人」という切り口で、たとえばインフルエンサーとかアンバサダーとか、そういう形で発信していくことができるようになりました。マーケティングの仕方そのものが変わってきているわけです。

④ 生成AIの時代 そして今、AI時代でどうなったかというと、さらに細かくできるようになった。これが可能になったんです。

時代主な接点特徴中心となる考え方
① アナログ紙・店頭(チラシ、DM、クーポン)地域や媒体で届ける/印刷・配布に手間ターゲット(広く浅く)
② ネットウェブ・検索遠方の人にも届く/アクセスや申込を計測できるペルソナ(絞っても先に人がいる)
③ SNS投稿・人とのつながり関心や共感から接点/継続発信が必要人(インフルエンサー・アンバサダー)
④ 生成AI発想・制作の支援複数の人物像に展開/制作案を増やしやすいペルソナの横展開(さらに細かく)

スライドにも書きましたが、古い手法が消えたのではなく、選択肢が積み重なっているんです。そして時代が変わっても、中心にあるのは「誰に、どんな価値を届けるか」ということです。

はい、ということで、じゃあこのペルソナって、どうやって考えたらいいの? という話をしていきたいと思います。

ステップ3:本屋さんの「女性誌コーナー」に行ってみよう

講義の中で、受講してくれていた女性の方に、こんな質問をしてみました。

「たぶん女性だから分かるかなと思うんですけど、本屋さんに行きますよね? ……行かないかもしれないけど。本屋さん、行きます?」

「あ、行きます。たまに行きます。」

本屋さんに行くと、女性誌のコーナーってありますよね? そこには、いろんな雑誌がずらずらっと並んでいると思うんです。いわゆる女性誌と言われているもので、今パッと思いつく雑誌って、どんなものがありますか?

僕が知っているもので言えば、昔で言えばCanCamとかnon-noとか、こういうのがあるでしょ? そういう名前の雑誌が、他にもいっぱいあるじゃないですか。

「女性誌、ちょっと見ないので、あんまり分かんないですけど。」

見ないですよね。だからこそ、これはぜひ、時間があるときに本屋さんに行って見てほしいんです。そうすると、いっぱいあるんですよ。本屋さんの大きさにもよりますけど、たぶん20種類とか30種類ぐらいあるんですね。

「え、そんなにあるんですね。」

そんなにあります。女性誌って、要は「女性誌」とくくっただけで、それだけの種類があるということは、当然、男性誌でもそのぐらいあるんですね。

ステップ4:漫画雑誌も同じ構造になっている

これでも分かりますか? たとえば漫画、読みます? コミックスというか。たとえば女性向けならりぼんとか、マーガレットとかあるじゃないですか。あれもいっぱいあるでしょ。

男性向けのコミック誌だったら、ジャンプとか、マガジンとか、サンデーとか、スピリッツとか、色々あります。同じように、女性向けの漫画雑誌もいくつもあると思うんです。

で、それらをずっと並べていくと、今まで話してきたことと同じになるんですね。

ステップ5:雑誌は「年代 × 性別 × 既婚・独身」で隙間なく分かれている

たとえば、ざっくり言うと、

  • これは20代の人が読むような雑誌
  • これは30代ぐらい
  • これは40代ぐらい
  • これは50代ぐらい

という感じで、大きく言うと年代別と、あとは性別で、男性向け・女性向けに分かれています。

じゃあ、それ以外ではどうかというと、「20代の既婚の人が読んだ方がいい雑誌」と「20代の独身の人が読んだ方がいい雑誌」というふうに、また大きく分かれていくんですね。

「そうですよね。」

たとえば、主婦の人は、やっぱり主婦の情報だけを読めるような雑誌の方がいい。でも、独身の人は、子育てについて書いてあっても関係ないから、そんなことばっかり書いてある雑誌は買わないじゃないですか。だから女性誌も、実はそういうターゲット層によって、雑誌が全部違うんですね。

分け方例読者が求めるもの
年代20代向け/30代向け/40代向け/50代向けその年代の関心ごと
性別女性誌(CanCam、non-no など)/男性誌性別ごとの関心ごと
ライフステージ20代既婚向け/20代独身向け主婦の情報/独身の情報
漫画雑誌りぼん、マーガレット/ジャンプ、マガジン、サンデー、スピリッツ読者層ごとの作品

ステップ6:後から出す雑誌は「狙われていない隙間」を狙う

CanCamとかnon-noとかは分かりやすいと思いますが、こういう雑誌に関しても、誰かが先に雑誌を出したとしますよね。そこに同じターゲットで2つ目の雑誌を作ると、そのターゲット層を奪い合うだけだから、損するじゃないですか。

だから、誰かが1社目の雑誌を作ったとすると、2社目は「1社目が狙っていないところ」を狙うように作るわけですね。で、3社目は、その2社が狙っていないところを狙ったりしていって、どんどんみんながそうやっていく。

もちろん、その中でなくなったり、潰れたり、統合したり、色々あるんですけど、それでもずっと住み分けを続けてきたことによって、今ではだいたい隙間なく埋まっている状態になっているんです。

ステップ7:今、伸びている女性誌「ハルメク」

ちなみに今、女性誌で伸びている雑誌があるんですけど、知っていますか?

「あ、知らないですね。」

絶対知らないと思います。というのも、もう若い人は雑誌なんか読まないわけですよ。

だけど、年配の人は、まだアナログ世代で雑誌を読む人がいるんですね。それで、ハルメクという雑誌があるんですけど、これは50代とか60代の人が読む雑誌で、まだ伸びているんです。

我々は絶対に買わないけど、50代・60代の人にとっては、「老後をどうやって暮らすか」とか、「年金生活はどうする?」とか、そういうテーマがあったら「あ、面白い」と思って買ったりするわけですよ。僕らはそういうことに興味はないけど、その人たちにとっては欲しい情報なんですね。

それこそ「スマートフォンの便利な使い方」みたいな特集が書いてあると買うけど、我々は「そんなの知ってるし」という話だから、そんな特集があっても買わないじゃないですか。そういうものなんです。

ステップ8:「自分が買う雑誌」=雑誌社から見たターゲットがあなた

そうすると、それぞれの雑誌を1冊ずつ眺めてみて、「自分ならどの雑誌を買うかな」と考えたときに、何かに行き着くはずなんですね。

それが、雑誌社側から見たターゲットが、あなたということです。

つまり、自分が雑誌を買おうと思ったときに、全部の雑誌を買おうとは思わないわけですよ。人によってはAがいい人もいれば、Bがいい人もいれば、Cがいい人もいるように、分かれているわけですね。

ということは、これから御社でマーケティングをやっていくうえで考えなきゃいけないのは、「自分のターゲットと言われている人は、どの雑誌を読んでいる人だろう?」ということです。そう考えてみていいんですね。「どんな雑誌を日頃読んでいる人が買うんだろう」と考えて、まず1冊、雑誌を買ってみるんです。

ステップ9:雑誌の編集長は「ペルソナ」をしっかり分かっている

雑誌には当然、編集長がいます。いろんな人が企画を考えて持ってくるけれど、編集長さんが「それはダメ」「それは採用」とか、「じゃあ特集はどうする」とかを決めていくじゃないですか。

そのとき、編集長は自分の読者層が分かっているから、読者層から離れた企画を出してきても「ダメ」と言うわけですよ。「そんなのをやったら部数が落ちちゃうから、みんなが読みたくなるような特集じゃなきゃダメだ」と言うわけですね。

つまり編集長さんは、自分のペルソナのようなものがしっかり分かっているんです。

雑誌が分かりやすいと思うのは、たとえば住宅の雑誌だったら住宅のことだけを書けばいいんだけど、普通の女性誌は、それこそファッションのことから、ダイエットのこと、食べ物から旅行から趣味から、社会的なことまで、いろんなことを1つの雑誌の中で書いていると思うんです。

これがまさに、さっきのペルソナの話なんです。その人の家族のことや健康のことなど、いろんなことがあると思うんだけど、1人の人間が生きていくうえで役立つ情報が漏れなく入っていると、その雑誌を買うメリットがありますよね。

逆に、特集は自分が読みたい記事だけど、他の記事にはまったく興味がなかったら、ちょっと買うメリットがないじゃないですか。ということは、「この特集も読みたいし、この記事も読みたいし、この記事も読みたいし」と、なるべく全部揃っている雑誌を買った方が得するよね。

結局、雑誌はこれをやっているわけです。その人にとってぴったりな記事がどれぐらいあるか、ということで、買う雑誌が決まっているんですね。スライドでは「『何を売るか』に加えて、『誰に役立つ媒体か』を考えよう」とまとめています。

雑誌の作り方ペルソナに置き換えると
編集長が読者層を理解している自社がペルソナを理解している
読者層から離れた企画はボツペルソナに合わない発信はしない
ファッション・ダイエット・食・旅行・趣味・社会…を1冊に1人の暮らしに役立つ情報を丸ごと届ける
読みたい記事が多い雑誌を買う役立つ情報が多いアカウントをフォローする

ステップ10:広告も「どの雑誌に出すか」で決まる

そうすると、ある雑誌を手に取ったとしますね。自分に合いそうな雑誌があったら、それを手に取る。すると、その雑誌には必ず、ページの下の方や、1ページ丸ごとの広告が入っていますよね?

広告は、当然ですけど、全部の雑誌に同じ広告が入っているわけではないんです。広告を出すスポンサー側から見ても、自分の商品を買ってくれそうにない雑誌に広告を出しても、いいことがないからです。

これも同じ話なんですよね。別の会社側から見ても、「どの雑誌に広告を出したら効果があるの?」という話になったら、「じゃあ、うちの会社の商品のターゲットが読みそうな雑誌は何か」という話になるわけですよ。その一番読みそうな雑誌が見つかったら、その雑誌に広告を出せばいいね、という話になるんですね。

ステップ11:ゴルフ雑誌に「軽自動車」の広告は出さない

たとえばの話で言うと、ゴルフ雑誌って読まないと思うんですけど、ゴルフ雑誌に広告を出している会社がありますね。それは車の会社、車を作っているメーカーさんです。トヨタとか日産とかホンダとか三菱とか、こういう会社が広告を出しているんですけど、じゃあ、ゴルフをやっている人の雑誌に車の広告を出そうと思ったときに、まさか軽自動車の広告は出さないでしょ?

「そうですね。」

なんで?

「ゴルフ用品が入りきらない。」

そう、ゴルフバッグが入らないよね。入らないし、普通、ゴルフに行く人ってお金がないといけないのに、その人が軽なんかに乗っているはずがないよね。実際ゴルフ場に行ってみれば分かるけど、軽の車でゴルフに来ている人はいないですよ。もちろんゴルフバッグが入らないという理由もあるけど、それなりに社長さんとか、ステータスがある人がやっているので、当然大きい車になるじゃないですか。

じゃあ、大きい車に乗っている人なら誰でもゴルフをやるかと言ったら、これまた違うんですよね。

ステップ12:トヨタのクラウンは「ゴルフバッグが4つ入る」

今はちょっと世の中が変わっちゃったんですけど、ちょっと前は、トヨタのクラウンという車が、ゴルフの雑誌に広告を載せていたんですね。

それはなんでかと言うと、ゴルフバッグがトランクに4つ入るというのが売りだったんですよ。

クラウンみたいな大きい車は、大人4人が乗れるので、4人が一緒に車に乗って、接待も含めてゴルフ場に行くときに、4人分のゴルフバッグが全部トランクに入らないといけないじゃないですか。軽は、当たり前ですけど無理ですよね。そもそも大人4人が乗れないし、狭すぎるし、4人乗ったら絶対にバッグを入れる場所がない。

となると、当然クラウンさんは、「ゴルフバッグが4つ入りますよ」というコマーシャルを、ゴルフ雑誌の広告に使うわけですね。

ステップ13:ピンクのクラウンは女性誌へ

だけど、たとえば全然違う女性誌に、仮にクラウンが広告を出すとすると、「ゴルフバッグが入ります」という広告にはしないわけですよ。

ちなみに、知らないかもしれないけど、トヨタのクラウンって車が、ピンクの車を出したんですよ。本当に、ピンクの。

「へえ。」

それは、たぶん男性はちょっと乗らないよね。女性向けだよね。となれば、女性誌にそのピンクのクラウンの広告を出す、というのはあるかもしれないですよね。そのときは「女性でも可愛く乗れますよ」というようなことを書くけど、「ゴルフができます」とは書かないじゃないですか。

雑誌は、そんな形でできているんです。同じ商品でも、届ける相手の暮らしによって、伝える魅力は変わるんですね。

媒体読者像同じ車の伝え方軽自動車の広告は?
ゴルフ雑誌社長さんなどステータスのある人、4人で接待ゴルフクラウン「ゴルフバッグがトランクに4つ入る」出さない(バッグが入らない・大人4人乗れない)
女性誌女性ピンクのクラウン「女性でも可愛く乗れる」―
(参考)スライドの例毎日の買い物に使う人/見た目を楽しみたい人荷物の出し入れが楽/好きなデザインや色―

ステップ14:SNS運用でも「ベビーチェアを欲しい人の暮らし」を考える

なぜこの雑誌の話が大事かというと、これから、たとえばSNSを運用していくときに、「その商品を欲しい人は誰か」となったら、当然すぐに思いつきますよね。

たとえば、ベビーチェアが欲しい人というのは、すぐに思いつくと思います。じゃあ、その人がどういう暮らしをしているかが分かると、その女性にとって、他の情報も実は役立つ情報だし、欲しい情報なんですね。

そうすると、毎回毎回「椅子を買いませんか、椅子を買いませんか」と言っているSNSではなくて、椅子の情報も学べるし、自分にとって役立つ情報が色々入っているInstagramアカウントやSNSの方が、売り込み色が強くなくていいわけですよ。だから、みんなそういうものを求めて、そういうアカウントをフォローしようとするわけですね。

さらに、もしかしたら、ベビーチェアにまだ興味のない人が、別の情報を見たことによって「あ、このアカウント面白い」「フォローしようかな」と思っていたら、そこに椅子の情報が流れてきて、「あ、そうだ、この椅子欲しかったんだ」となるかもしれないわけです。

それはさっきの雑誌の話と同じで、その雑誌を読んでいる人は、別に車を買おうと思って雑誌を買ったわけじゃないけど、たまたま自分が好きな雑誌を読んでいたら車の広告が出てきて、「お、いいな」と思って買ってしまうのと同じですよね?

SNSの発信の種類例(ベビーチェア販売の場合)期待できる反応
役立つ情報子供の食事の工夫、食べやすい環境づくり関心を持ってもらう・保存される
商品理解椅子の使い方、調整の仕方、商品の特徴信頼・自分ごととしてイメージ
購入支援サイズの選び方、お手入れ方法購入の不安を減らし、問い合わせへ

こんな感じで、このペルソナという考え方が分かっていると、自分の販促のあり方が見えてくるんですね。そうすると、より細かく「広告をどうしたらいいかな」とか、「ホームページでどういうふうにした方がいいか」ということが考えられるようになるので、まずはこれを1個決めましょうね、ということです。


AI時代はペルソナを47倍・100倍に横展開できる

ステップ1:15年前、47都道府県分のTwitterアカウントを1人で運用した人

そうそう、ついでにこんな話もしておきたいんです。

今から15年ぐらい前のことです。当時はまだTwitterというサービス名で、今はXに名前が変わりましたけど、そのTwitterのサービスが始まった頃の話です。

Twitterは1人でアカウントを複数持つことができるので、うまく使い分けている人がいるじゃないですか。裏アカウントを作ったりとか。まあ、そのぐらいは可愛いものなんですけど、ある人がそれで思いついたんですよ。

どうしたかというと、47都道府県すべてのアカウントを作って、1人で投稿していたんですね。

たとえば――

  • 北海道のアカウントは、北海道に住んでいて、30代の女性で、こういう趣味でこういうものが好きな人
  • 青森のアカウントは、60代のちょっと年配の男性で、こういう感じの人
  • 福井のアカウントは、20代の女性で、高卒で結婚して、こんな感じの人

というように、47都道府県すべてでキャラクターを変えて、そのキャラクターになりきってTwitterでつぶやいている人がいたんです。

アカウントキャラクター設定の例
北海道北海道在住、30代女性、こういう趣味でこういうものが好き
青森60代のちょっと年配の男性
福井20代女性、高卒で結婚
……(全47都道府県)すべて異なるキャラクター

ステップ2:47倍リーチできるけど、47倍時間がかかる

これ、まず47個のキャラクターを考えること自体が、相当大変だと思うんですよ。で、仮にそれを考えたとして、47個のアカウントを全部、毎日その人の気持ちになって、青森の人の気持ちになって、福井の人の気持ちになって、つぶやき続けるのって、結構大変じゃないですか。

でも、それをやったら、それぞれのTwitterアカウントのフォロワーさんは、その人のつぶやきがいいからフォローしてくださっているわけだから、それぞれでファンを増やしていくことができるわけですよね。

アカウントが1個しかなかったら、当たり前ですけど、そのアカウントのフォロワーしか増えません。ということは、47アカウント作ったら、47倍リーチする可能性があるわけです。これは分かりますよね。

だけど、47倍リーチするためには、47倍の時間がかかるわけですよ。さっきのABテストの話と同じで、理屈としてはやった方がいいのは分かるけど、「じゃあ誰がやるの?」という話になるわけです。

47倍の時間がかかるのに、誰がやるのか。そんなの無理だから、「せめて2個ぐらいにしよう」とか、「うちは社員が3人いるから、3人で1個ずつやればいいね」とかになるけど、47人の社員を投入してやるわけにはいかないじゃないですか。だから、普通はやらないんですよね。

でも、それをやっていた人がいたんです。今から15年前に。

そして――これが、AIならできるということなんです。

「確かに。」

ステップ3:AIに「この人になりきって運用してね」と頼める

つまり、今までお話ししてきたことと同じ理屈なんですよね。

「こういう人が考えそうなことで、運用してね」と人間にお願いすると、「はい、分かりました」と言って人間が運用してくれる。それと同じように、AIに「こういう人物像のもとでやってね」と言えば、AIも同じように「分かりました」とやってくれる。それができちゃうんです。

ということは、ペルソナというやり方が、AI時代には横展開できるようになって、倍々どころか、100倍、1000倍とできるようになるわけですね。

時代47アカウント運用実現性
15年前(人間のみ)1人が47キャラクターになりきって投稿極めて大変。普通はやらない
一般企業(人間のみ)社員3人なら3アカウントが限界47人投入は無理
AI時代人物像ごとにAIが下書き・展開を支援100倍、1000倍の横展開も可能に

ステップ4:Instagramのフィードは「自分好み」に最適化されていく

たとえば、Instagram、やっていますよね? 個人的にやっています?

「やってます。」

Instagramをやっていると、フィードに流れてくるものってありますよね。あれって、自分好みにどんどん最適化されていきますよね? 自分が見たいもの、自分が好きなものがどんどん出てくるようになる。

ということは、逆に言うと、自分が興味のないものは、どんどん出てこなくなっているわけですよ。

でも、人によっては、今自分が見たくないと思っているものを、見たい人もいるわけじゃないですか。ということは、自分のお店のアカウントが1個しかなかったら、そのアカウントを好きな人しか集められないけど、アカウントが47個あったら、どれかに刺さる可能性があるでしょ?

「確かに。」

そうすると、「じゃあ47個運用した方がいいじゃん」ということは、理屈では分かる。でも、「誰がやるの?」という話になるじゃないですか。それが、できるようになったんですよ。

ステップ5:これからは「好きなタイプの人」しか広告に出てこなくなる

そうすると、これから怖いのは、自分がSNSをやっていると、自分が好きなタイプの女の子しか出てこない、自分が好きなイケメンの男の子しか広告に出てこない、ということになっていくんですね。

AIがどんどん学習して、「あなたはこういう男性のタイプが好きで、こういう男性のときだけ、いつも『いいね』していますね」ということが分かったら、「じゃあ、そういう男性を使った広告を出している人がいたら、その広告をあなたの画面に優先的に出しますよ」となってくる。そうなると、もう好きなものばっかり出てくるわけですね。TikTokなんかもそうですよね。

ということは、結局、キャラクターが1つしかなかったら不利だよね? という話になるわけです。

「そうですよね。」

なので、世の中の技術の進化によって、マーケティングのやり方が変わってきている、ということなんです。

ステップ6:まずは「最大公約数のペルソナ」を1つ作ってみる

ということで、残り時間が少なくなってきたんですけど、では、ペルソナと言われているものを、まず1つ考えてみようとなったら、どうするか。

たとえば、

  • 性別:男性よりは女性かな
  • 居住地域:全国通販だから、どこでもいいとは思うんですけど、「何々市」というのではなくて、たとえば駅の近くなのか、団地なのか、そういう切り口があるかもしれない
  • 住居情報:持ち家なのか、実家なのか、アパートなのか

といったように考えていきます。こうして、「自分のお店に一番来そうな人」「一番買ってくれていそうな人」――つまり最大公約数の人物像を、1つガツンと決めることができれば、一番王道の、ど真ん中のペルソナを1つ作ることは、頑張ればできそうじゃないですか。

「はい。」

でも、これを作るのも相当大変だと思います。

ステップ7:100人のお客様のうち、残り40人はどうするのか

で、仮に1つ作ったとします。

今、お客さんが仮に100人いたとすると、最大公約数的な、みんなを網羅しているようなペルソナに、仮にですよ――あり得ないと思いますけど――60人ぐらいが当てはまったとしますね。

で、残り40人は当てはまらないんだとすれば、「残り40人は、あといくつのグループに分かれるの?」という話になるわけですよ。

そうすると、「このグループは5人のグループです」「このグループは12人のグループです」「これは3人です」「これは1人しかいません」みたいな感じでワーッと分かれて、全部合わせたら100人になっているわけですね。

じゃあ、その残りのパターンをまた考えようと思ったら、これまた大変じゃないですか。

グループ人数(100人中)ペルソナ
最大公約数(王道のど真ん中)60人(仮)頑張れば1つ作れる
残りのグループA5人別のペルソナが必要
残りのグループB12人別のペルソナが必要
残りのグループC3人別のペルソナが必要
残りのグループD1人別のペルソナが必要
……その他残りさらに細かく分かれる

理屈の上では、さっきの47都道府県が分かりやすいと思うんですけど、自分の商品を買ってくれる人を47パターン作るとか、100パターン作るというのは、理屈では分かるけど、実際にやろうと思った瞬間に「難しいな、できるの?」という話になるわけですね。はい、これは相当難しいです。

なんだけど、AIはできるんですよ。実は、それができるツールを作ったんです。まあ、ツールを作らなくてもできるんですけど、今日はまだAIの話をしていないので、AIの具体的な使い方はまたおいおいお話しします。とにかく、それぞれのパターンを作ることができるんですね。

ステップ8:組み合わせは無限大 ― AIに100パターン考えてもらう

たとえば、「自分の商品を買ってくれるペルソナを100パターン考えて」と言うと、AIは100パターン考えてくれるんですね。100でも200でも1000でも考えてくれます。だって、組み合わせは無限大じゃないですか。

要素選択肢の例
年齢20代、30代、40代……(大きく分けた場合)
性別男性、女性
居住地域都会、田舎、海の近く、山の近く……
住居情報持ち家、実家、マンション……
学歴中卒、高卒、大卒、大学院……
職業無限にある
年収少ない人から多い人まで
家族構成1人、2人、3人、4人……
趣味無限にある

今のは全部掛け算ですから、当然100とか1000どころじゃなくて、もう無限にあるわけですよね。

ステップ9:100人のペルソナに「○・△・×」をつけてみる

で、仮にそこから100人分だけをAIに抽出させたとしますね。

そうしたら、その100人のペルソナの中から順番に、

  • 「あ、このお客さんはうちのお客さんにいそう」→ ○(丸)
  • 「この人は、いるかいないか分からない」→ △(三角)
  • 「この人はちょっとありえない」→ ×(バツ)

というふうに、○・△・×を100人に順番につけていくとしますね。

そうしたら、100人中100人に丸がつくことはないと思うんですよ。仮に、100人中**30人に○がついた。残り20人に△がついた。残り50人に×**がついた、としますね。

評価人数意味
○ うちのお客さんにいそう30人今、自社の商品を買ってくれている人
△ いるかいないか分からない20人悩んでいる人
× ちょっとありえない50人別のところ・別のメーカーで買っている人

ということは、世の中にいる「自社の商品を欲しいと思っている人」の中で、30人しか自分の商品を買っていないということになるわけですね。残り20人は悩んでいる。残り50人は別のところで買っている、別のメーカーのものを買っている――悩んでいる人も含めて、そういうことになります。

ステップ10:今のチラシやホームページは「最初の30人」にしか刺さっていない

ということは、今「自分のお客さん」と思っている人は、自分のホームページやチラシを見て買ってくれたわけだから、そのホームページやチラシの中には、最初の30人に刺さりそうなことしか書いていないんですよ。

だから、その30人は自分に刺さっているから買ってくれる。でも、残りの20人や50人には、「うちはそういうのが得意です」とか、「そんなこともできますよ」とか書いていないから、買ってくれない。もしくは、その人たちが求めている商品そのものが、皆さんのところにないから買えないだけなんですよね?

ということになれば、理屈の上では、

  1. 残りの△20人と×50人が満足するような商品を開発する
  2. もしくは、その人たちに刺さるようなチラシを作る
  3. 自社で開発ができないのであれば、変な話、仕入れてもいいから、その商品を売る

そうすれば、100%取れるということになるわけですね。

スライドでは、この「売れない理由」をもう少し細かく分けて整理しています。

買わない理由状態次にやること
情報が届いていないそもそも存在を知られていない発信場所や届け方を見直す
魅力が伝わっていない良さが分からず、興味を持たれていない説明や具体例を見直す
商品が合っていないニーズや好みが合わず、購入につながらない商品開発・改良・仕入れを検討する

ステップ11:イオンがあるのに、なぜ専門店があるのか

だから、たとえば家具の専門店とか、靴屋さんとか、服屋さんがあるんですね。

つまり、別に靴屋さんや家具の専門店がなくても、「全部イオンでいいじゃん」という話になるわけですよ。イオンに行けば何でもあるじゃん、と思いますよね。

でも結局、それぞれの専門店があるのは、それぞれに絞っていった方が、専門性が増して、刺さりやすくなるからなんですね。これも、今日お話ししたことと同じ話です。

ステップ12:両論併記 ― AIのペルソナは「仮説」であることを忘れずに

ここで、公平のために反対側の視点もお伝えしておきますね。スライドにも注意書きとして入れていますが、AIが作った人物像は、実在する顧客を確認した結果ではなく、検証前の仮説です。

たとえば、○が30件ついたからといって、それがそのまま「市場占有率30%」という意味になるわけではありません。あくまで「自社のお客様の広がりを考えるためのヒント」なんですね。

だからこそ、

  • ○(既存客に似ている) → 実際のお客様の声や購入データで確認する
  • △(可能性はあるが未確認) → 質問・調査・小さな試作で確かめる
  • ×(商品や事業との適合が低い) → 見送り理由を記録しておく

というように、AIで可能性を広げたうえで、実際のお客様の情報で確かめていくことが大切です。また、AIで制作案を増やせるようになっても、ABテストの基本は同じです。作れる量が増えても、検証に必要な人数や期間は必要ですし、投稿・確認・コメント対応・改善といった運用の仕事は残ります。スライドにも「アカウント数と成果は単純比例しません」と書きましたが、まずは1つのアカウントでテーマやシリーズを分けて試す、というように、小さく始めて、測って直すのが現実的な進め方です。

AIでできること人間がやるべきこと
ペルソナを100パターン提案する○△×の判断と、その理由づけ
ペルソナごとのコピー・画像・ページ案を作る事実・表現の確認、ない機能や未確認の効果を書かない
47アカウント分の投稿下書き投稿計画、コメント対応、改善の運用
「この案は伝わりやすいか」の感想(仮説づくりの補助)実際のお客様の行動データでの検証

ステップ13:宿題 ― 本屋さん、ドラマ、音楽、映画で「お客様」を想像しよう

ということで、今日は細かいところまでは話せなかったんですけど、ターゲットの良さとペルソナの良さ、それぞれがあります。ぜひ、自分の会社のペルソナのようなものを考えてみるといいと思います。

そして、本屋さんに行ってみて、どの雑誌を買っている人が自分のお客さんになりそうなのかを考えてみてください。

雑誌だけではありません。テレビドラマはあまり見ないかもしれないけど、たとえば、

  • 「このドラマを、うちのお客さんは見ながら子供にご飯をあげていそう」
  • 「うちのお客さんは、音楽は絶対これを聴いているはずだ」
  • 「こういう映画が好きなはずだ」

といったことが、本当は社員全員の共通認識になると、相当強いです。

つまり、自分の会社はどういう人が一番メインのお客様なのかが見えていると、会社として相当強くなるんですね。ですので、ぜひこのペルソナという考え方を、やってみましょう。

ということで、今日はここまでになります。


おわりに

今回は、「ターゲット」と「ペルソナ」の違いを、イベントチラシの例からお話ししてきました。

「30代・会社員・既婚」というターゲットでチラシを作ったのに、来てくれた山田花子さんはキッズスペース、右上の男性は駐車場、もう1人はお酒のプレゼントと、全員が違う理由で来ていました。そこからABテスト、ABCテスト、ABCDテストと案が増えていき、「せめて2案に絞れ」という企業あるあるが生まれます。だからこそ、一番確率の高い人物像に絞り込む「ペルソナ」が、インターネット時代の主流になりました。

ただ、ペルソナは考えるのに時間がかかるため、2人目、3人目まではなかなか作れませんでした。15年前にTwitterで47都道府県分のキャラクターを1人で運用した人がいましたが、普通は誰もやりません。それが生成AIの登場によって、100人、1000人のペルソナを考え、横展開することができるようになったのです。

とはいえ、AIのペルソナはあくまで仮説です。本屋さんの雑誌コーナーを眺めたり、お客様に「なぜ選んだのですか?」と聞いたりしながら、実際の声で確かめていくことが大切です。まずは1人、自社のど真ん中のペルソナを決めるところから始めてみてください。


まとめ

  • ターゲットとは、「30代・会社員・既婚」のように属性で分類した、届けたい集団のこと
  • 同じターゲットでも、来場の決め手(キッズスペース、駐車場、お酒のプレゼント)は人によってバラバラ
  • 決め手を打ち出すたびにABテスト → ABCテスト → ABCDテストと案が増え、手間とコストが無限に膨らむ
  • CVR=目標行動に至った割合。500人中5人なら1%、500人中10人なら2%
  • 上司の「せめて2案に絞れ」は企業あるあるだが、絞り方次第で本末転倒になることも
  • ペルソナとは、条件を全部掛け合わせたひとりの具体的な人物像。届く人は少ないが、強く刺さる
  • インターネット時代は「絞っても、その先にたくさんの人がいる」ため、ペルソナが主流になった
  • ペルソナの弱点は時間がかかること。人間には24時間365日しかなく、2人目・3人目は普通作らない
  • マーケティングはアナログ → ネット → SNS → 生成AIと変化し、選択肢が積み重なってきた
  • 雑誌(CanCam、non-no、ハルメクなど)は年代・性別・既婚独身で隙間なく住み分け、編集長はペルソナを理解している
  • 広告も読者で決まる。ゴルフ雑誌にはクラウン「ゴルフバッグが4つ入る」、軽自動車の広告は出さない
  • SNSでも「ベビーチェアを買いませんか」の連呼より、暮らしに役立つ情報が詰まったアカウントがフォローされる
  • 15年前の47都道府県アカウントのように、ペルソナの横展開はAIなら100倍・1000倍でできる
  • AIに100人のペルソナを出してもらい**○△×**をつけると、まだ届いていないお客様(△20人、×50人)が見えてくる
  • AIのペルソナは検証前の仮説。実際のお客様の声・データで確かめ、小さく始めて改善しよう
  • 本屋さん、ドラマ、音楽、映画で「うちのお客様」を想像し、社員全員の共通認識にすると会社は強くなる

よくある質問(Q&A)

Q1. ターゲットとペルソナは、結局どちらを使えばいいのですか?

A. どちらか一方が正解というわけではなく、組み合わせて使うのがおすすめです。まずターゲットで「30代・会社員・既婚」のように届けたい集団の範囲を決め、その中から代表的な1人をペルソナとして具体化します。ターゲットは考える時間が少なくて済み、他の作業に時間を回せるのが良さ。ペルソナは考える時間がかかる代わりに、強く刺さる発信ができるのが良さです。反応を見ながら、両方を見直していきましょう。

Q2. ABテストをするときに気をつけることは何ですか?

A. 「知りたい違い以外の条件をできるだけそろえる」ことです。同じ期間に実施する、似た条件の対象者を無作為に分ける、同じ媒体で配信する、変えるのは見出しなど1か所だけにする――といった点に注意してください。また、結果は人数ではなく**CVR(率)**で比べます。500人中5人なら1%、500人中10人なら2%です。ただし件数が少ないうちは、「今後も必ずBが勝つ」とは断定できません。案を増やす前に、人数・時間・費用を確認しましょう。

Q3. 自社のペルソナを考えるヒントはありますか?

A. 一番手軽なのは、本屋さんの雑誌コーナーに行ってみることです。女性誌だけでも20〜30種類ほどあり、年代・性別・既婚か独身かで隙間なく分かれています。「うちのお客様はどの雑誌を読んでいそうか」を考えて、1冊買ってみてください。特集・広告・記事のラインナップから、その人の暮らしが見えてきます。さらに、既存のお客様に「何を見て知りましたか?」「何が決め手でしたか?」と聞いてみると、思い込みではない実際の声で確かめられます。

Q4. AIに100人のペルソナを作ってもらえば、それで十分ですか?

A. いいえ、AIが作ったペルソナは検証前の仮説です。100人に○△×をつけて、○が30件だったとしても、それがそのまま市場占有率30%という意味ではありません。○はお客様の声や購入データで確認し、△は質問・調査・小さな試作で確かめ、×は見送り理由を記録しておきましょう。AIで可能性を広げ、実際のお客様の反応で磨き続けることが大切です。

Q5. AIを使えば、SNSアカウントを47個運用した方がいいのでしょうか?

A. 理屈の上では、アカウントが多いほどリーチの可能性は広がります。Instagramのフィードは自分好みに最適化されるので、キャラクターが1つしかないと不利になる面もあります。ただし、AIで投稿案は増やせても、確認・投稿・コメント対応・改善といった運用の仕事は残りますし、アカウント数と成果は単純には比例しません。まずは1つのアカウントでテーマやシリーズを分けて試し、続けて運用できる仕組みを作ってから広げていくのがおすすめです。

生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)

🎯 ターゲット
ターゲットとは、年齢・性別・職業・既婚かどうかなどの属性で分けた「情報を届けたい集団」のことです。「30代・会社員・既婚」のように広くゆるく決めるので、考える手間が少なく、そのぶん制作などほかの作業に時間を回せます。一方で、同じ属性の人でも行動の理由や決め手はそれぞれ違います。そのため、ターゲットの条件だけでは、一人ひとりに刺さる訴求ポイントまでは見えにくいという弱点があります。

👤 ペルソナ
ペルソナとは、「山田花子さん、32歳、会社員、夫と幼稚園児の息子の3人家族、マーケティング部のリーダー」のように、1人の具体的な人物像として描いた顧客モデルです。プロフィール・生活・悩みを整理し、その人に向けてチラシやSNSを作ります。届く範囲は狭くなりますが、その人にとって魅力的な情報だけが並ぶので刺さりやすくなります。ネット時代に主流になった手法です。

🐟 2匹目のドジョウ
1度うまくいった成功例をもとに、同じやり方でもう一度成果を狙うことです。講義では、チラシの片隅に小さく書いた「キッズスペースあり」が来場の決め手だったと聞き、それを大きく打ち出せばもっと人が来るのではと考える場面で使われました。ただし、何かを大きく載せれば別の要素が小さくなり、今まで来ていた層が減るおそれもあります。そのため、テストで確かめる必要があります。

🆚 ABテスト
ABテストとは、2つの案を同じ条件で比べ、どちらの反応が良いかを確かめる方法です。たとえば1,000人のアクセスを500人ずつ別のページに振り分けて、成果を比べます。紙のチラシでも、街を2つに分けて配れば実施できます。案をABC、ABCDと増やすほど細かく検証できますが、そのぶん制作の手間・費用・時間が膨らみます。分割すると失敗するリスクも高まるため、従来は2案程度に絞るのが一般的でした。

📈 CVR(コンバージョン率)
CVRとは、サイトやチラシを見た人のうち、問い合わせや購入などの成果につながった人の割合です。たとえば500人が見て5人が問い合わせれば1%、10人なら2%です。人数ではなく「率」で比べることで、公平に効果を判断できます。ただし、今回の結果だけで今後も必ず同じ結果になるとは限りません。差の大きさと判断の確かさは分けて考えることが大切です。

📚 雑誌の読者層
女性誌や男性誌は、年代・性別・既婚か独身かなどで細かく分かれていて、すでにある雑誌が狙っていない層をすき間なく埋めるように作られています。編集長は自分の読者像をはっきり持ち、ファッションや健康、旅行など、その人の生活に役立つ情報をまとめて載せています。50〜60代向けの「ハルメク」が今も伸びているのもその例です。自社のお客様がどの雑誌を読んでいそうかを考えることが、ペルソナづくりのヒントになります。

📰 広告媒体の選び方
同じ商品でも、どこに広告を出すかで伝え方は変わります。トヨタのクラウンはゴルフ雑誌では「ゴルフバッグが4つ入る」と打ち出しましたが、女性誌でピンクのクラウンを紹介するなら「可愛く乗れる」と訴えるでしょう。「何を売るか」に加えて「誰の役に立つ媒体か」を考えることが重要です。読者はもともと買う気がなくても、好きな雑誌の中で出会った広告に心を動かされます。

🔁 アルゴリズムによる最適化
InstagramやTikTokは、ユーザーの「いいね」や閲覧の傾向をAIが学習して、好みのものばかりを表示するようになります。逆に、興味のない投稿や広告はどんどん表示されなくなります。そのため、アカウントや表現の切り口が1つしかないと、その切り口を好む人にしか届きません。ユーザーごとに最適化が進むほど、ペルソナの数を増やして多くの切り口を用意することが有利になります。

🤖 AIによるペルソナの横展開
約15年前、47都道府県それぞれに別の人物設定のTwitterアカウントを作り、1人で運用していた人がいました。リーチは47倍になりますが、手間も47倍かかるため、普通は真似できません。生成AIなら、1つのペルソナで作ったチラシやSNS運用、LPのやり方を、別のペルソナにも横展開できます。人の手では数案が限界だったものが、AI時代には100倍、1000倍へと広げられるようになりました。

⭕ ○△×評価
○△×評価とは、AIに100通りのペルソナを考えてもらい、「うちのお客様にいそう=○」「わからない=△」「ありえない=×」と印をつけて整理する方法です。たとえば○が30人なら、今の販促物はその30人にしか刺さっていない可能性があります。△や×の人に向けて伝え方を変えたり、商品を開発・仕入れしたりすれば、まだ届いていないお客様を取り込めます。ただし、AIの案は市場データではないので、実際のお客様の声で確かめることが大切です。

生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)

ペルソナとターゲットの違いを基本から理解する

ターゲットは「属性で分けた集団」、ペルソナは「ひとりの具体的な人物像」

マーケティングの本やセミナーで必ず出てくる言葉が「ターゲット」と「ペルソナ」です。どちらも「誰に売るか」を決める考え方ですが、粒度がまったく違います。

ターゲットは、年齢・性別・職業・未既婚といった属性で分類した集団です。たとえば「30代・会社員・既婚」のように条件を決め、その条件に合う人に向けてキャッチコピーや商品を考えます。ターゲットは「誰の集団に届けるか」という範囲を決めるためのものです。

一方のペルソナは、その集団の中から実在しそうな1人の人物像を具体的に描いたものです。たとえば次のような設定になります。

  • 山田花子さん、32歳、会社員
  • 既婚(夫と、幼稚園に通う息子の3人家族)
  • マーケティング部でリーダー的なポジション
  • 東京都在住

ここまで描くと、「休日にイベントへ行きたいけれど、子どもが退屈しないか心配」「仕事と子育てで忙しい」といった暮らしや悩みまで想像できるようになります。ターゲットの「30代・会社員・既婚」には「小さい子どもがいる」という条件は入っていませんが、ペルソナでは自然に見えてきます。

つまり、ターゲットは集団の範囲を決めるもの、ペルソナは1人の暮らしまで具体化するものです。どちらかが正解というわけではなく、ターゲットで広く範囲を押さえ、ペルソナで深く理解する、という組み合わせで使うのが基本です。

なお、ペルソナを作れば必ず売れるわけではありません。ペルソナはあくまで「お客様を理解するための仮説」です。実際の反応を見て直していくことを前提に考えましょう。この「仮説→検証」の流れは、後半のABテストや生成AIの章で詳しく解説します。

同じ「30代・会社員・既婚」でも来店理由が違う——チラシの事例

ターゲットだけでは見えないものがある、ということを具体例で確認しましょう。

ある会社が「30代・会社員・既婚」をターゲットに週末イベントのチラシを作り、集客したとします。来場したお客様に「なぜ参加したのですか?」と聞くと、こんな答えが返ってきました。

  • Aさん「チラシの右下に小さくキッズスペースありと書いてあったから」
  • Bさん「左下に小さく駐車場ありと書いてあったので、車で行けるなら便利だと思った」
  • Cさん「来場者プレゼントが魅力だったから」

3人ともターゲット条件にはぴったり当てはまっています。ところが、参加の決め手はターゲット設定に含まれていない部分でした。キッズスペースも駐車場も、隙間があったので「ついでに」載せた情報だったのです。

ここから分かるのは、属性が同じでも、求める価値は同じとは限らないということです。Aさんは「子連れで参加できるか」という不安を解消したかった、Bさんは「アクセスのしやすさ」を重視した、Cさんは「体験や特典」に惹かれた——同じ属性の中にも、悩みや行動の違う人が混ざっています。

こうした違いは、プロフィールを眺めているだけでは見えてきません。大切なのは、お客様に「何を見て知りましたか」「何が決め手でしたか」「参加前に不安はありましたか」「ほかと比較しましたか」と直接聞くことです。

ただし、1人の声がそのまま全員の意見とは限りません。複数の回答を集めて共通点を探し、「キッズスペースを目立たせたら子連れ世帯の申込が増えるのでは?」という改善の仮説にまとめる。この流れが、ターゲットからペルソナへ一歩踏み込むきっかけになります。

ABテストで見えるターゲット設定の限界

ABテストの基本とCVRの計算方法

先ほどのチラシの例では、社内で意見が分かれます。「キッズスペースを大きく載せればもっと人が来る」という意見と、「たまたまでしょう。何かを大きくすれば別の要素が小さくなり、今まで来ていた人が減るかもしれない」という意見です。担当者の好みで決めずに、お客様の反応で確かめる方法がABテストです。

ABテストとは、2つの案を用意して対象者を振り分け、どちらの反応が良いかを比べる方法です。たとえばWebサイトに1,000人がアクセスした場合、500人ずつ「従来のデザイン(A)」と「テストデザイン(B)」に振り分けます。

ここで使う指標が CV(コンバージョン) と CVR(コンバージョン率) です。CVは問い合わせ・申込・購入などの目標行動、CVRはそのうち目標行動に至った割合のことです。

  • A:閲覧500人 → 問い合わせ5人 → 5÷500×100=1%
  • B:閲覧500人 → 問い合わせ10人 → 10÷500×100=2%

この結果だけを見ると「BはAの2倍」です。ただし差は1ポイントで、件数も少ないため、この結果だけで今後も必ずBが勝つとは断定できません。結果の大きさと判断の確かさは分けて考えましょう。

正しく比べるには、知りたい違い以外の条件をそろえることが重要です。

  1. 対象者:似た条件の人を無作為に分けているか
  2. 実施時期:同じ期間に実施しているか(A=平日、B=休日では比較できない)
  3. 変更点:知りたい違い(見出しだけ、など)以外をそろえているか

紙のチラシでもABテストは可能です。識別コード付きのクーポンをA・Bそれぞれに入れ、配った枚数と回収数を記録すれば比較できます。ただし、配布地域が違うと地域差が結果に影響するので注意しましょう。

A・B・C・D…案が増えると検証が回らない理由

ABテストを始めると、別の問題が出てきます。キッズスペースを推す人、駐車場を推す人、プレゼントを推す人——意見が増えるたびに「じゃあABCテストを」「ABCDテストを」と案が増えていくのです。

理屈の上では、一人ひとりに刺さる案を全部試したほうが成果は上がるはずです。もしかすると「来場者プレゼント」案が一番人を集めるかもしれません。しかし現実には、案が増えるほど次の負担が増えます。

  • 制作・印刷・配布の手間とコスト
  • 集計・分析の作業量
  • 1案あたりの人数が減ることによる判断の難しさ

たとえば対象者1,000人を2案に分ければ1案500人ですが、4案に分ければ1案250人です。人数が少ないと偶然の差が出やすく、正しく判断しにくくなります。さらに、本来なら1案を全員に届ければうまくいったかもしれないのに、細かく分けたことで失敗する案の比率が増えるリスクもあります。

案を増やす前に、人数・時間・費用が足りるかを確認することが欠かせません。テストにかける時間が増えれば、その分チラシ制作やお客様対応など、ほかの仕事に使える時間は減るからです。

だからこそ多くの企業では、上司が「せめて2案に絞りなさい」と言うわけです。これは企業の「あるある」ですが、絞り方を間違えると一番効果のありそうな案を捨ててしまい、本末転倒になりかねません。

そこで生まれたのが、「案を無限に増やすのではなく、最も可能性の高い1人の人物像に絞り込んで、その人に刺さる要素をすべて盛り込もう」という発想です。これがペルソナの考え方です。「30代・会社員・既婚」で、しかも小さい子どもがいて、車で移動する——そうした条件を掛け合わせると届く範囲は狭まりますが、その人にとっては魅力的な情報しか載っていないため、強く刺さるようになります。

ペルソナの作り方と設定すべき項目

「プロフィール・生活・悩み」の3層で整理する

ペルソナを作るとき、項目を細かく埋めること自体が目的になりがちです。大切なのは、購入や利用に関係する情報を押さえることです。おすすめは、次の3層で整理する方法です。

① プロフィール(全体像をつかむ) 年齢、性別、居住地域、住居情報(持ち家・賃貸・実家など)、最終学歴、職業、年収、家族構成。居住地域は「〇〇市」より「駅の近くか、団地か」のように、暮らし方が見える書き方のほうが役立ちます。

② 生活(接点のヒントを得る) 趣味(旅行・映画・料理など)、よく使うSNS(Instagram・X・YouTubeなど)、平日と休日の過ごし方、情報を見る時間帯。たとえば「忙しい子育て世帯で、情報を見るのは子どもが寝た夜」と分かれば、「夜に短時間で分かる案内」を用意すべきだと判断できます。

③ 悩みと理想(購入のきっかけを探る) 現在の悩み(仕事・家事・育児・お金・健康など)と、解決したらどうなりたいか。ここが見えると、伝えるべき言葉が変わります。

山田花子さんの例で考えてみましょう。「休日にイベントへ行きたい。でも子どもが退屈しないか、子連れでも参加できるか不安」という悩みが見えると、チラシに載せるべき言葉は「イベント内容がすごい」ではなく「親子で参加できます」「キッズスペースあり」「会場での過ごし方をご案内」になります。生活の不安が見えると、伝えるべき安心が見つかるのです。

もう1つのポイントは、事実と仮説を分けて書くことです。調査データや実際の顧客の声、社内の販売データは「事実」、想定される悩みや行動の理由、今後検証したいことは「仮説」として区別しておくと、ペルソナが思い込みで固まるのを防げます。

雑誌の編集長に学ぶ「1人の暮らしを丸ごと考える」発想

ペルソナの考え方を身につけるのにおすすめなのが、本屋さんの雑誌コーナーを観察することです。

女性誌のコーナーには、大きな書店なら20〜30種類もの雑誌が並んでいます。『CanCam』や『non-no』のような有名誌のほか、年代・未既婚・ライフスタイルごとに雑誌が細かく分かれています。後発の雑誌は、先行誌が狙っていない読者層を狙って創刊されるため、結果として読者層が隙間なく埋まっているのです。男性誌や漫画誌(ジャンプ、マガジン、サンデー、りぼん、マーガレットなど)も同じ構造です。

たとえば『ハルメク』は「50代からの女性」を対象にした定期購読誌で、日本ABC協会の集計では女性誌の販売部数で長くトップを続けています。若い世代が雑誌を読まなくなった中でも、老後の暮らしや年金、スマホの使い方といった、その世代に役立つ特集が支持されているわけです。

雑誌が分かりやすいのは、1冊の中にファッション・食・健康・家族・趣味・仕事など、テーマが複数あるのに一貫性があることです。それは編集長が「この読者の暮らしに役立つか」という基準で企画を選んでいるからです。読者にとっても、読みたい記事がたくさん載っている雑誌ほど買う価値があります。

広告も同じです。車メーカーがゴルフ雑誌に広告を出すとき、軽自動車ではなく大型セダンを選びます。セダンのトランク容量は昔から「ゴルフバッグ何個分」で表現されてきましたが、それはゴルフをする読者にとって重要な情報だからです。同じクラウンでも、2013年に受注限定で発売されたピンクの「ReBORN PINK」のように、打ち出し方を変えれば別の読者層に届く可能性があります。

自社のお客様はどんな雑誌を読み、どんなドラマを見て、どんな音楽を聴いているか。それを社員全員が共通認識として持てると、販促の判断は格段にぶれなくなります。

時代とともに変わるターゲットとペルソナの役割

アナログ→ネット→SNS→生成AIの4つの時代

ターゲットとペルソナのどちらが主流になるかは、**「届く範囲・分かる反応・作れる量」**の変化に左右されてきました。

① アナログ時代(紙・店頭) チラシ・DM・店頭が中心で、届けられるのはお店を中心とした限られた商圏です。印刷・配布にコストがかかり、紙面の広さも限られます。そのため、ターゲットを「漠然と」広めに設定し、地元に広く浅く告知して、反応の取れるものを探るやり方が合理的でした。

② ネット時代(ウェブ・検索) Webサイトや検索広告によって、遠方の人にも届く可能性が生まれました。地元では対象者が少ない悩みでも、全国には同じ悩みを持つ人がいるかもしれません。対象を絞っても、その先にたくさんの人がいる——だからこそペルソナのような細かな絞り込みが効果的になりました。ページの変更もしやすく、アクセスや申込を計測できるため、ABテストも手軽になりました。ただし、公開するだけで全国に届くわけではなく、検索や広告などの集客は別途必要です。

③ SNS時代(投稿・人とのつながり) 関心や共感からお客様と接点を持てるようになりました。インフルエンサーやアンバサダーのように、「人」を切り口にしたマーケティングも広がっています。保存・閲覧・問い合わせなどの反応も見える一方、継続的な発信が求められます。

④ 生成AI時代(発想・制作の支援) 1人のペルソナを作って販促物を作るだけでも大変だったのが、AIを使えば複数の人物像に展開し、制作物を増やすことが容易になりました。

重要なのは、古い手法が消えたのではなく、選択肢が積み重なっていることです。時代が変わっても、中心にあるのは「誰に、どんな価値を届けるか」です。

SNS時代は「売り込み」より「役立つ発信」でつながる

ペルソナの考え方は、SNS運用でこそ威力を発揮します。

たとえばベビーチェアを販売する場合、「ベビーチェアが欲しい人」はすぐに思いつきます。しかし毎回「椅子を買いませんか」と投稿するだけのアカウントは、売り込み色が強く、フォローしたいとは思われません。

そこでペルソナを使い、その人がどんな暮らしをしているかを考えます。幼い子どもと暮らす子育て世帯なら、子どもの食事の工夫、片付けのコツ、時短の家事など、暮らしに役立つ情報も欲しいはずです。その上で、椅子の使い方や調整方法、サイズの選び方やお手入れ方法を発信すれば、自然に商品理解が深まります。

SNSでの投稿は、次のような流れでお客様との関係を育てます。

  • 関心:役立つ情報で興味を持ってもらう
  • 信頼:継続的に発信し、信頼を築く
  • 商品理解:使い方を知り、自分ごととしてイメージしてもらう
  • 問い合わせ:購入の検討が進み、問い合わせにつながる

SNSのフィードは、利用者の好みに合わせてどんどん最適化されていきます。よく反応する投稿に似たものが優先的に表示され、興味のないものは表示されにくくなります。売り込み一辺倒のアカウントは、ペルソナの「見たいもの」に入れず、そもそも表示されなくなるおそれがあるのです。

ベビーチェアに興味がなかった人が、別の役立つ投稿をきっかけにフォローし、後から流れてきた椅子の情報で「そういえば欲しかった」と気づくこともあります。これは、好きな雑誌を読んでいたら車の広告が目に入り、欲しくなるのと同じ構造です。

効果測定では、いいねの数だけでなく、投稿の目的に合う反応を見ましょう。役立つ情報なら「保存」、信頼づくりなら「プロフィール閲覧」、購入支援なら「問い合わせ」です。なお、別日の投稿は時期や届いた人が違うため、単純比較を厳密なABテストとは扱えない点に注意が必要です。

生成AI時代のペルソナ活用法

AIで100人のペルソナを作り「○・△・×」で整理する

これまで、ペルソナは1つ作るだけでも大変でした。2人目、3人目と増やしていくのは、時間的にも人員的にも現実的ではありませんでした。年齢・性別・居住地域・住居・学歴・職業・年収・家族構成・趣味と、組み合わせは事実上無限にあるからです。

生成AIを使えば、「自社の商品を買ってくれそうなペルソナを100パターン考えて」と依頼するだけで、多様な人物像を一気に出してもらえます。基本ペルソナ(例:幼い子どもと暮らす会社員)を1つ作っておけば、「置き場所に困る人」「掃除の手間を減らしたい人」「長く使いたい人」のように、悩みや利用場面の違う人物像へ展開できます。

出てきた人物像は、次の3つに分類して優先順位を決めましょう。

  • ○ 既存客に似ている:今の購入者と同じ悩みを持つ人。実際の声や購入データで確認する
  • △ 可能性はあるが未確認:新しい使い方を求める人など。質問・調査・小さな試作で確かめる
  • × 商品や事業との適合が低い:提供できない機能が必要な人。見送り理由を記録する

この分類は、「今のお客様」と「まだ届いていないお客様」を考えるきっかけになります。買わない理由は大きく3つです。情報が届いていないなら発信場所や届け方を見直す。魅力が伝わっていないなら説明や具体例を見直す。商品が合っていないなら商品開発・改良・仕入れを検討する。総合スーパーがあっても家具店や靴屋などの専門店が成り立つのは、絞り込んで専門性を高めたほうが刺さりやすいからです。

ただし注意点があります。AIが作った人物像は、実在する顧客を確認した結果ではなく、検証前の仮説です。100人中30人に○がついても、市場占有率30%という意味ではありません。AIの案は市場データではないので、理由を付けて選び、実際のお客様の情報で確かめましょう。

1人を決め2案で試す——初心者の実践手順と注意点

AIを使えば制作案は簡単に増やせますが、ABテストの基本は変わりません。制作案を増やすだけでは、成果は分からないからです。初心者は、最初から大量展開せず、次の流れを1周完成させることから始めましょう。

  1. 目的を決める(例:イベント申込を増やす)
  2. 顧客の声を集める(決め手・不安を聞く)
  3. ターゲットを決める(届けたい集団を整理する)
  4. ペルソナを具体化する(暮らし・悩みを描く)
  5. AIで訴求案を作る(顧客の声・ターゲット・ペルソナなど確認済みの情報を渡す)
  6. 比較する2案を選ぶ(変更点と指標を決める)
  7. 反応を測る(条件をそろえて確認する)
  8. 人物像と発信を見直す(学びを次の案へ活かす)

AIに訴求案を作らせるときは、人物像・悩み・確認済みの商品特徴をセットで渡します。たとえば「部屋が狭い人」には実際の寸法と設置イメージ、「忙しい保護者」には実際のお手入れ方法と手順を見せる投稿、という具合です。ない機能や未確認の効果は書かず、人が確認することを徹底してください。

AIに顧客役で感想を聞くのは「仮説づくりの補助」にはなりますが、「検証」ではありません。検証は、実際の顧客の行動データで行います。

地域別・人物像別に複数アカウントを展開することも、理屈の上ではリーチを広げます。ただし、制作・確認・投稿・対応・改善という運用の仕事は残り、アカウント数と成果は単純比例しません。また、架空の人物になりすまして宣伝することはプラットフォームの規約や、2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制(景品表示法)に抵触するおそれがあります。企業アカウントであることを明示したうえで、まず1つのアカウントでテーマやシリーズを分けて試すのが現実的です。

顧客理解は深く、制作は広く、判断は反応で。 AIで可能性を広げ、実際のお客様の反応で磨き続けましょう。


ファクトチェック・修正一覧

#文字起こし・資料の記述検証結果記事での扱い
1ハルメクは「50代とか60代の人が読む雑誌」で「まだ伸びてる」公式の対象は「50代からの女性」。日本ABC協会の集計で2019年上期から女性誌の販売部数1位が続き、2022年12月号は漫画誌を除く全雑誌で1位。2023年3月期も増収増益。2024年以降の最新部数は未確認「50代からの女性」に修正し、「長くトップ」と表現
2トヨタが「ピンクのクラウンを今出した」「クラウン アスリート ReBORN PINK」は2013年9月1日〜30日の受注期間限定モデル(生産開始2013年12月)。現行の話ではない「2013年に受注限定で発売」と時期を明記
3ピンクのクラウンは「絶対に女性しか乗らない」公式発表には女性向けという記載なし(コーディネートはテリー伊藤氏、テーマ「PINK SURPRISE」)断定を避け「別の読者層に届く可能性」と表現
4クラウンはゴルフバッグが4つ入ることが売りでゴルフ誌に広告を出していた9インチのゴルフバッグ4個を積めるセダンとしてクラウンが紹介されており、「ゴルフバッグ何個分」でトランク容量を表す慣習も確認。特定のゴルフ誌広告の出稿事実は未確認「ゴルフバッグ何個分」の慣習として一般化して記述
5「今から15年ぐらい前」にTwitterで47都道府県のアカウントを1人で運用していた人がいた出典・時期とも確認できず(Twitterの日本語版開始は2008年、X改称は2023年7月)。また架空人物を装った宣伝は規約やステマ規制(2023年10月施行)に抵触するおそれ逸話としては記事に載せず、複数アカウント展開の注意点として整理
6「100人中30人に○がついた=世の中で自社商品を欲しい人のうち30人しか買っていない」AIが生成した人物像は検証前の仮説で、○の数は市場占有率ではない(資料24枚目でも注意書きあり)「市場占有率30%という意味ではない」と明記
7ABテストでBが2%、Aが1%なので「次回からBを採用」件数が5件と10件と少なく、この結果だけでBの優位は断定できない(資料10枚目)「結果の大きさと判断の確かさは分けて考える」と補足
8女性誌は「20〜30種類」並んでいる書店規模による概数。正確な誌数は未確認「大きな書店なら」と条件を付けて記述

参考資料・出典

資料URL
講義資料「マーケティング2」(横田秀珠、全30枚+導入スライド)—
SATORI マーケティングブログ「ペルソナとは?」(資料中の山田花子さんの例の出典)https://satori.marketing/marketing-blog/marketing-persona/
EC NOW「シニア女性の支持が広がる定期購読誌『ハルメク』」https://paymentnavi.com/?p=131124
トヨタ自動車 ニュースリリース(クラウン ReBORN PINK、2013年8月30日)https://global.toyota/jp/detail/1740618
くるまのニュース「荷室の広さ『ゴルフバック●個分』は古い?」https://kuruma-news.jp/post/112571
All About「ビジネスでの『ペルソナ』の意味とは?」https://news.allabout.co.jp/articles/o/73195/
UXPin「AIペルソナ – ChatGPTを使ってペルソナを作成する方法」https://www.uxpin.com/studio/jp/blog-jp/ai-personas-ja/

生成AI時代のマーケティング(ターゲット・ペルソナ・ABテスト)

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この記事を書いた人

横田 秀珠のアバター 横田 秀珠 (新潟)公立長岡造形大学 情報リテラシー論 講師

ネットビジネス・アナリスト。未経験のIT企業に就職し、たった3年で独立し、2007年にITコンサルタント会社のイーンスパイア(株)を設立し現在に至る。All About ProFile全専門家で全国1位のコラム評価を獲得した実績を持つ。全国で年間200回を超える講演も行う。