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情報リテラシー論11苦戦する紙媒体と電子書籍’25長岡造形大学

情報リテラシー論11苦戦する紙媒体と電子書籍’25長岡造形大学
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情報リテラシー論 第11回 苦戦する紙媒体と電子書籍
📊 情報リテラシー論|紙媒体からデジタルへの大転換と未来
🎓 長岡造形大学 情報リテラシー論 第11回

テーマ:苦戦する紙媒体と電子書籍

📅 2025年12月9日|講師:ネットビジネスアナリスト 横田秀珠

90分の講義で約50枚のスライドを使用!紙媒体の衰退とデジタル化の波を徹底解説 🌊
⬇️ 紙媒体の終焉 ⬇️
📉 消えゆく紙媒体たち
📞 ハローページ
2021年終了
📚 小学2〜6年生
雑誌廃刊
📰 新聞発行部数
激減中
📖 書店数
20年で半減
2040
年までに新聞発行部数がゼロになる可能性も…
記者離れも深刻な問題に 📉
🔍 ジャーナリズムの危機
新聞が読まれなくなる → 記者の収入減 → ジャーナリストがいなくなる → 社会の監視機能が失われる!
🌊 あらゆるメディアのデジタル化
🎵
音楽 → ダウンロード販売 → ストリーミング・サブスク
📖
書籍 → Kindle・タブレットで電子書籍化
📰
新聞 → Yahoo!ニュース・スマートニュースへ
📺
動画 → DVDレンタル → Netflix配信へ
🗺️
地図 → 紙 → Googleマップへデータ化
🎮
ゲーム → ソフトもハードもデジタルに
⚡ 重要な視点
紙や音楽を出していた製作者ではなく、プラットフォーム会社が成功している!
⬇️ 雑誌業界の変革 ⬇️
📱 雑誌業界の激変
従来の雑誌 📰

1冊ずつ購入
価格:数百円〜
雑誌ごとに価値あり
dマガジン 📱

全雑誌読み放題
月額:580円
雑誌の価値が下がる…

🌟 おすすめ神アプリ

フジサンリーダー – 雑誌の本文までキーワード検索できる!

📊 意外な事実
日本で一番売れている雑誌は 家の光(JAの雑誌)!
2位は週刊文春 → デジタル版へ移行中 📲
📚 漫画だけがデジタル移行に成功!
2020
年に電子含む漫画の売上が過去最高を記録!
紙は減っても電子が伸びている 📈

🔑 成功の秘訣

週刊ジャンプは値段を下げなかった

新聞→無料化で価値低下 / 雑誌→定額で価値低下 / 漫画→価格維持で価値保持 ✨

📖 従来の横読み
📱 縦スクロール
🚀 ピッコマがLINEマンガを抜く
スマホ対応の縦読みが新しい漫画の読み方として大人気に!LINEトーク風の縦スクロール漫画も登場 📲
⬇️ 紙 vs デジタル ⬇️
🧠 紙とデジタルの脳への影響
紙の本 📄

反射光で読む
理解度が高い
深い理解に向いている
画面 💻

透過光(直接光)
理解度が低い
サッと読むのに便利
💡 なぜ印刷すると間違いに気づく?
デジタルで作成→紙で印刷→間違い発見!
→ そもそも脳の処理方法が違うから!

📚 Kindleは例外

Amazon Kindleは間接光を使用 → 紙に近い読書体験が可能

🕰️ 印刷技術の歴史
1880年
エジソンが謄写版(ガリ版)を発明 ✏️
活版印刷
活字を並べて文章に。日本語は文字が多く英語より困難 🔤
1977-2008
理想科学工業のプリントゴッコ 📮 年賀状といえばコレ!
現在
スキャナーがサランラップサイズまでコンパクトに!OCR精度も向上 📷
🎬 ジブリ映画「コクリコ坂から」でガリ版シーンが登場!あの「ガリガリ」という音がASMR的と話題に ✨
⬇️ 新しいサービス ⬇️
🆕 知っておきたい新サービス
✉️ Webレター
ネットから郵送可能
📠 eFAX
紙不要のFAX
🗞️ ペパPON!
誕生日新聞印刷
🥽 日経空間版
3Dでニュース

🇸🇪 スウェーデンの革新

本の自動販売機:電子データをその場で印刷→製本!
在庫不要・品切れなし・バックナンバーも入手可能 📚

✨ 自費出版の民主化
PDFから1冊から格安出版 → Amazonで販売 → コンビニに並ぶ可能性も!
⚠️ 知っておくべき注意点
📊 カスタマーバーコードの危険性
郵便物のバーコードには郵便番号・番地・部屋番号が全て含まれている!
住所を隠してもバーコードから自宅がバレる可能性 🏠

📱 QRコードの可能性(デンソー考案・日本発の技術 🇯🇵)

URL誘導 / テキスト表示 / 連絡先登録 / Wi-Fi接続 / メール起動 / SMS送信
📵 終了したサービス
Google検索の3D AR表示機能が2024年頃に終了…
ポケモンGOのようなARは引き続き人気 🎮
⬇️ 学生の声 ⬇️
💬 学生からの声・気づき
📚 シェア書店の広がり
本棚を借りて自分の選書で本を並べられる「シェア書店」が全国で人気!札幌にも「ぷらっとBOOK」が登場
📰 新聞を取る家庭の減少
「自分の家はずっと新聞を取っていたので、取ってない人が多いと知ってびっくり」
👨‍👩‍👧 日経ファミリープラン
家族全員で新聞を読める!一人暮らしでテレビがなくてもニュースを知る手段に
📱 縦読み漫画への違和感
「縦読み漫画は今までのコマ割りと違って読みにくい…」新しい形式への適応が課題
🎯 講義を聞いて「SmartNews」をインストールした学生も!実践につながる学びが大切 ✨
🎯 本日のまとめ
  • 紙媒体は衰退の一途だが、漫画だけはデジタル移行に成功
  • 成功の鍵は価格維持縦スクロール対応
  • 紙の方が理解度が高い研究結果あり(使い分けが大切)
  • プラットフォーム企業が利益を得る構造への注意
  • ジャーナリズムの危機 → 社会の監視機能が失われるリスク
  • シェア書店など新しい本との出会いの形も登場

長岡造形大学の情報リテラシー講義第11回「苦戦する紙媒体と電子書籍」の内容。新聞・雑誌の発行部数激減、書店数の半減、電子書籍への移行など、紙媒体を取り巻く厳しい現状を解説。一方で漫画は電子化に成功した事例として紹介。紙の本は脳の理解度が高いという研究結果や、QRコード・ARなど紙からデジタルへの誘導技術、縦読み漫画の台頭なども取り上げ、メディアの変革期における課題と可能性を論じている。

  1. はじめに
  2. 紙媒体の歴史とデジタル化の始まり
  3. 新聞・雑誌業界を襲うデジタル化の波
  4. 電子書籍時代における漫画の成功と紙の価値
  5. 学生からの質問と紙媒体についての考察
  6. おわりに
  7. よくある質問(Q&A)

はじめに

皆さんは最近、紙の本や新聞、雑誌を手に取る機会があっただろうか。

スマートフォンやタブレットが生活に浸透した現代、私たちの情報との向き合い方は劇的に変化している。電車内で新聞を広げる人の姿は減少し、代わりにスマートフォンでニュースアプリをチェックする光景が日常となった。書店に足を運ぶ機会も減り、電子書籍をワンクリックで購入する利便性に慣れてしまった方も多いのではないだろうか。

しかし、紙媒体は本当に消滅してしまうのだろうか。デジタル化が急速に進む中でも、紙には紙ならではの価値が存在するのではないだろうか。

本記事では、新潟県の長岡造形大学で行われた情報リテラシー講義の第11回「苦戦する紙媒体と電子書籍」の内容を紹介する。ネットビジネスアナリストの横田秀珠氏が、約50枚のスライドを用いて90分間の講義で解説した内容を、分かりやすくまとめた。紙媒体の歴史から最新のデジタル技術まで、情報メディアの変遷を一緒に学んでいこう。


紙媒体の歴史とデジタル化の始まり

講義の概要

本講義は2025年12月9日に行われた、長岡造形大学における情報リテラシー論の第11回目である。テーマは「苦戦する紙媒体と電子書籍」で、紙媒体がデジタル化の波の中でどのような変化を遂げているのかを詳しく解説している。

当日は雨天であったが、雨に反射した街路樹が美しく映えており、来週も雨の予報で雪景色はまだ見られそうにないとのことであった。

紙媒体からデジタルへの移行サービス

まず紹介されたのは、紙媒体とデジタルを橋渡しする各種サービスである。

**郵便局の「Webレター」**は、ネットからPDFやWordファイルを送信すると、郵便局が印刷して郵送してくれるサービスである。インターネットから申し込めるという点で非常に便利なサービスとなっている。

また、**インターネットFAX「eFAX」**は、送受信いずれも紙が不要で利用できるサービスである。従来のFAXのように紙を使用する必要がなく、完全にデジタルで完結する点が特徴的である。

電話帳の終焉

固定電話の50音別電話帳である**「ハローページ」や、職業別電話帳である「タウンページ」**についても言及された。特に「ハローページ」は2021年10月で発行が終了しており、長年親しまれてきた電話帳という紙媒体も徐々に姿を消しつつある現状が示された。

電子辞書の普及と会社案内の変遷

かつては多くの辞書が一括で収録された電子辞書が学校の推薦図書となっていた時代があった。複数の辞書を持ち歩く必要がなくなり、学習の効率化に大きく貢献したツールである。

また、会社案内の形態も大きく変化している。かつては紙媒体で作成されていた会社案内が、ホームページへと移行し、さらにSNSへと発展した。そしてこれからはAIの時代へと移り変わっていくことが予想される。

スキャナー技術の進化

スキャナーの技術も飛躍的に進歩している。処理速度が大幅に向上し、サイズもコンパクトになり、現在ではサランラップほどの大きさにまで小型化されている。また、紙1枚だけでなく、書籍全体をスキャンすることも可能になった。

スキャナー普及における課題はOCR(光学的文字認識)の精度であった。スキャンした画像から文字を正確に認識する技術が向上したことで、紙媒体のデジタル化がより実用的なものとなった。紙媒体をデジタル化する際のコツについても講義では触れられている。

印刷技術の歴史

講義では印刷技術の歴史についても詳しく解説された。

かつての活版印刷では、活字を一つひとつ並べて文章を組み、新聞や書籍を出版していた。英語のタイプライターと比較して、日本語は文字数が圧倒的に多いため、活版印刷は非常に困難な作業であった。

**謄写版(ガリ版)**は、発明王エジソンが1880年に発明した製版技術である。蝋を塗った原紙に鉄筆で文字を書き、インクを通して印刷する方式で、学校のプリントや同人誌の印刷などに広く使用されていた。

また、理想科学工業の家庭用印刷器「プリントゴッコ」(1977年〜2008年)についても紹介された。年賀状作成などに多くの家庭で愛用されていた製品であり、印刷時に非常に強い光を発することが特徴であった。


新聞・雑誌業界を襲うデジタル化の波

新聞業界の現状

若者は新聞離れしていても、文字離れはしていないという興味深い傾向がある。むしろ、SNSなどを通じて文字による発信を積極的に行っている。しかし、新聞の発行部数はインターネットが普及し始めた直後から減少の一途をたどっている

新聞各社はWeb版に力を入れているが、有料版の購読者数は少なく、厳しい経営状況が続いている。それでも、世界的に見ると日本人は一人あたりの新聞購読率が圧倒的に高いという特徴がある。

新しいニュースメディアの台頭

紙媒体を持たない新しいニュースメディアとしてNewsPicksが注目されている。デジタルネイティブなニュースメディアとして黒字化を達成しており、新しいビジネスモデルの成功例として挙げられる。

講義では「新聞各社の報道から学ぶべきメディアリテラシー」についても触れられた。これはテスト問題にも出題される重要な内容であり、メディア・新聞各社の政治思想と国政政党の相関関係についても解説されている。

ユニークな新聞関連サービス

**「ペパPON!(ペパポン)」**は、指定した日付の新聞を印刷できる自動販売機である。自分の生まれた日や記念日の新聞を入手できるユニークなサービスとなっている。

また、**日本経済新聞のApple Vision Pro向け「日経空間版」**は、ニュースを3Dで読むことができる革新的なサービスである。従来の平面的な記事閲覧とは異なる、立体的な情報体験を提供している。

雑誌業界の危機

雑誌の発行部数は、**「日本雑誌協会」**のWebサイトで推移を確認することができる。過去20年ほどで発行部数は大幅に落ち込んでおり、業界全体が厳しい状況に置かれている。

特に深刻なのは子供向け雑誌である。少子化の影響を直接受け、発行部数は減少傾向が続いている。かつては「小学1年生」から「小学6年生」まで揃っていた学年誌も、現在では「小学1年生」のみが存続している状況であり、小学2年生から6年生向けの雑誌は全て廃刊となってしまった。

電子雑誌サービスの影響

NTTドコモが提供するスマートフォン向け電子雑誌の定額読み放題サービス**「dマガジン」**の登場が、雑誌業界に大きな影響を与えている。月額580円で多数の雑誌が読み放題となるため、個別に雑誌を購入する必要がなくなった。1つのサービスで全ての雑誌を読めてしまうという利便性は、消費者にとってはメリットであるが、雑誌出版社にとっては収益構造の変化を迫られる要因となっている。

そのような状況の中で、便利なアプリとして**「フジサンリーダー」**が紹介された。このアプリは雑誌の本文までキーワード検索ができる機能を持っており、特定の情報を探す際に非常に便利なツールである。

電子雑誌市場の動向

2016年は電子雑誌元年と呼ばれ、電子媒体が紙の雑誌を上回るケースも出始めた。興味深いことに、最も売れている雑誌は**JAの「家の光」**である。この事実はあまり知られていないが、農業協同組合が発行する雑誌が業界トップに立っているのである。第2位は有名な「週刊文春」となっている。

週刊文春とスクープジャーナリズム

「噂の真相」から「FOCUS」を経て「週刊文春」へと続くスクープ合戦の歴史についても解説された。スクープジャーナリズムには様々な功罪があり、その在り方について考えさせられる内容である。

週刊文春はデジタル版への移行を進めている。LINEでは「週刊文春」のスクープ記事を1本50コインでアプリから購読できるサービスを提供している。また、週刊文春と週刊新潮は2021年9月末で電車の中づり広告を終了し、Web展開に注力する方針を発表した。

ジャーナリズムの危機

デジタル化の波は、ジャーナリズムそのものにも大きな影響を与えている。読者がデジタルに移行すること自体は時代の流れであるが、問題はジャーナリストの収入源が失われることである。新聞が読まれなくなると、取材や報道を行うジャーナリストたちの生活が成り立たなくなる。結果として、新聞がジャーナリストとしての役目を終えてしまうという深刻な問題が生じる可能性がある。

予測によると、2040年までに発行部数がゼロになりそうな新聞もあり、記者離れも深刻化している。質の高いジャーナリズムを維持するための収益構造をどう確保するかが、業界全体の課題となっている。

書店の減少と新たな動き

書店の数は最近20年で半分以下に減少しており、深刻な事態となっている。2020年からは統計の発表すら行われなくなったが、減少傾向が続いていることは確かである。

そのような中、スウェーデンでは書籍の自動販売機が設置され始めている。この販売機の特徴は、内部に書籍がストックされているのではなく、電子データを読み込んでその場でプリントアウトして本に成形する点にある。数分で完了し、ユーザーが欲しい本や雑誌を受注形式で提供できるため、在庫を持つ必要がない。データさえあれば品切れが発生せず、バックナンバーなども入手しやすいという利点がある。日本ではまだ普及していないが、非常に便利なシステムであり、普及が期待される。

自費出版のハードルの低下

現在は誰でも簡単にPDFファイルから格安で1冊から自費出版できる時代になった。Amazonでは電子書籍だけでなく、紙の本も出版でき、コンビニエンスストアに並ぶ可能性もある。出版のハードルは大幅に下がっており、電子書籍が売れた後に紙の本として再販売することも可能になった。

また、自社名の出版ブランドで紙書籍を1冊単位からAmazonで販売することも可能になっている。

コンビニと女性誌のマーケティング

コンビニエンスストアに並ぶ女性誌を観察するだけで、ターゲティング戦略を読み取ることができる。女性向けのデザインではマゼンタ(赤紫色)を使用することが有効とされている。また、表紙のモデルが店頭のお客様を視線で見ているようにデザインされていることも、購買意欲を高めるテクニックの一つである。

雑誌はバッグインサイズや変形正方形など、様々なサイズを模索している。しかし、ページ数は薄くなる傾向にある。デザインを学ぶ人にとっては興味深いテーマである。


電子書籍時代における漫画の成功と紙の価値

各業界のデジタル化事例

自社の商品やサービスをITによってデジタル化する成功事例として、以下のような変化が挙げられる。

  • 音楽 → ダウンロード販売、ストリーミングによるサブスクリプション
  • 書籍 → AmazonのKindleやタブレットなどで電子書籍の販売
  • 新聞 → Yahoo!ニュースやスマートニュースなどアプリ配信に
  • 漫画 → LINEマンガ、ピッコマから縦スクロールメディアへ
  • レシピ → クックパッドからクラシルなどの動画メディアへ
  • 地図 → 紙媒体からGoogleマップなどにデータとして提供へ
  • 辞書 → 1冊をデジタル化するのではなく電子辞書で一括収録へ
  • 動画 → ビデオやDVDレンタルから配信に切り替えたNetflix
  • チケット → 店頭販売からネット販売へ、さらにNFTで転売防止
  • ゲーム → 単体毎のゲーム機からソフトもハードもデジタルに

デジタル化の勝者は誰か

デジタル化の波が進む中で、紙やCDなどに載せた情報を販売していた事業者にとって重要な問題がある。情報がデジタルになったことで配布コストは確かに安くなった。しかし、元々紙や音楽を出していた事業者がデジタル時代に成功しているかというと、そうではない

成功しているのはプラットフォームを運営する会社であり、コンテンツの販売者や制作者が成功しているわけではない。これは非常に重要な問題である。

電子書籍と漫画の特異性

日本では流行らないと言われてきた電子書籍だが、漫画以外は苦戦している状況にある。一方で、電子も含めた漫画の売上は2020年に過去最高を記録した。つまり、漫画においては紙からデジタルへの置き換えが比較的うまく進んでいるのである。

データを見ると、紙の漫画は減少しているがデジタルの漫画は増加している。しかし、新聞やその他のメディアではこのような成功は見られない。

紙とデジタルで異なる脳の働き

紙の文字は反射光、画面の文字は透過光(直接光)で捉えられる。これは脳の働き方に影響を与える。パソコンなどのデジタル環境で作成した文書をデジタル上でチェックしても間違いを見つけにくいが、印刷して紙にするとすぐに発見できることがある。これは、紙とデジタルでは脳の思考プロセスが異なるためである。

紙の本と同じような構成になっているのがAmazon Kindleである。iPadなどタブレットの直接光と異なり、Kindleは間接光を使用しているため、紙に近い読書体験を提供できる。Kindleで本を読むのであれば、タブレットよりも目に優しく、理解度も高まる可能性がある。

研究結果でも、紙の本はデジタルの本で読むよりも理解度が高いことが示されている。手軽に読むにはスマートフォンやタブレットが便利であるが、深く理解したい場合は紙に戻るのが正解といえる。用途に応じた使い分けが重要である。

週刊少年ジャンプの成功要因

2014年9月22日より、毎週151万部を発行する週刊「少年ジャンプ」もWeb化し、他社も追随している。週刊ジャンプは比較的成功している例であり、漫画全体としてもデジタルへの移行がうまく進んでいる。

その成功要因は価格を下げなかったことにある。新聞は紙では有料で購入されていたが、デジタルでは無料で読めてしまう状況が生まれた。これでは価値が低下するのは当然である。雑誌も1冊ずつ有料で購入されていたが、dマガジンのようなサービスにより、1つのサービスで全ての雑誌が読めるようになると、雑誌の価値は下がる。

漫画業界はこのような価格破壊を行わなかったことが、漫画が生き残っている要因であると考えられる。これは非常に重要な視点である。

縦読み漫画の台頭

漫画アプリの分野では、LINEマンガをピッコマが追い抜いた。その鍵となったのはスマートフォン対応の縦読みである。従来の横にめくって読む形式ではなく、縦にスクロールして漫画を読むスタイルが人気を集めている。漫画の読み方に新しい波が来ているのである。

スマートフォン普及とLINE全盛の時代に合わせて、LINEトーク風の縦スクロール漫画も登場している。誰でも漫画を作成できるサービスとして注目を集めている。

カスタマーバーコードの注意点

ここで重要な注意喚起がある。カスタマーバーコードには住所情報が含まれているのである。最近SNSで話題になったこの情報は、意外と知られていない。カスタマーバーコードには、郵便番号7桁、番地、そして部屋番号までが含まれている。つまり、カスタマーバーコードを写して住所だけ隠しても、自宅は特定されてしまう可能性がある。この事実は多くの人が認識していないため、注意が必要である。

AR・VRと紙媒体の連携

これまで紙媒体からデジタルへの誘導方法として、**AR(拡張現実)とVR(仮想現実)**の2つが存在してきた。

QRコードは株式会社デンソーが考案した、世界に誇る日本の技術である。QRコードには様々な情報を埋め込むことができ、URL誘導、テキスト誘導、連絡先登録、Wi-Fi接続、メール起動、SMS誘導など、多様な活用方法がある。

ARは当初、紙をスマートフォンのカメラで読み取ると、ARで何かが動き出すという形式でスタートした。しかし現在のARは、リアルな世界をカメラで映し出し、その上にデジタル情報を重ねて表現する技術へと発展している。代表的な例がポケモンGOのゲームアプリである。

講義では例年、Google検索の3D表示ができるAR機能について説明していたが、今回の授業で使用してみたところ、この機能が利用できなくなっていることが判明した。昨年の授業では使用できていたため、この1年の間にサービスが終了したものと思われる。この詳細については別途調査が必要である。


学生からの質問と紙媒体についての考察

書店と読書体験について

学生から「あまり書店に行くことがなくなったので、今度久しぶりに行ってみようかなと思いました」という感想が寄せられた。書店には思わぬ発見があるため、ぜひ足を運んでみることをお勧めする。

また、「最近流行っているシェア書店を思い出しました」という意見もあった。シェア書店には以下のような特徴がある。

**「小さな書店の集合体」**として、大きな本棚の一部を「棚」として借り、自分の選書で本を並べることができる。ZINEやアートブックなどを置くことも可能である。

**「誰でも店主になれる」**という点も特徴的で、本好きなら誰でも棚オーナーになり、自分の「好き」を発信できる。棚主は本棚のデコレーションや値付けも行う。

**「運営参加型」**として、多くの店舗で棚主が交代で1日店長を務め、来店客との交流を深めている。遠隔地からのオーナー向けプランも用意されている。

**「多様な品揃え」**も魅力で、SF専門棚、絵本棚、健康書棚など、棚主の個性や趣味が反映されたバラエティ豊かな本が並ぶ。

札幌での事例として、**「札幌シェア型書店ぷらっとBOOK」では札幌市中央区で100人以上の棚主が参加し、地域の名物店を目指している。また、「よはくの本やさん」**は2025年11月に札幌市電通りにオープン予定で、温かい繋がりの場を創出している。

シェア書店は、大型書店ではできないような、人と本とが深く繋がる新しい読書体験を提供する場として、全国で広がりを見せている。

電子辞書とスキャナーについて

「中学生の時は電子辞書を使用していました」という声があり、若い世代にとって電子辞書はすでに当たり前のツールになっていることがわかる。

「高校のときは、電子辞書やスキャナーを使いたくて使っているというより、仕方なく使っている感じでした」という意見もあり、必ずしも積極的な選択ではなく、必要に迫られて使用しているケースもあることが示された。

「紙資料はかさばったり整理が難しいのでデジタル資料はありがたいです」という感想は、デジタル化のメリットを実感している学生の声である。うまく切り替えていくことが重要である。

印刷技術への関心

「高校の頃にタイプライターがプチバズりしていて憧れていました」という意見があり、若い世代の間でレトロな技術への関心があることがわかる。興味深いブームである。

「ガリ版はジブリで見てから憧れでした!」という声も寄せられた。スタジオジブリの作品**「コクリコ坂から」**にはガリ版のシーンが登場する。

「カルチェラタン(コクリコ坂からに登場する建物)、私も頭に思い浮かびました。ガリ切りのシーン、音もすごく好きでした」という感想もあり、ガリ版を切る独特の音はASMRとして楽しむこともできる。

「プリントゴッコで印刷する際、すごく光るのでびっくりした記憶があります」という懐かしい思い出を語る学生もいた。プリントゴッコの強烈なフラッシュは印象に残るものであった。

新聞との関わり

「新聞をとってはいないですが、日経新聞のネット版をよく見ます」という学生がおり、デジタルで経済ニュースを追う姿勢は素晴らしいことである。

「恐らく活版印刷だと思われるものの字が一部滲んで潰れていたことがありましたが、読みづらさも味だと感じました」という意見は、手作業ならではの温かみや人間の努力が伝わってくる感覚を表現している。

「自分の家はずっと新聞を取っていたので、とってない人が多いと知ってびっくりした」という声があり、新聞購読の減少を実感していない家庭もあることがわかる。しかし、実際には購読世帯は減少の一途をたどっている。

「日経のファミリープランに入ってWeb版を読んでいます。実家にいた時はテレビでニュースを見ていましたが、一人暮らしでテレビがないのでニュースを知る手段として役立っています」という意見があった。日経のファミリープランは家族全員で新聞を読める点で優れている。特に自分でお金を出せない子供たちにとっては良い選択肢となる。

「この間ニュースダイレクトと、SmartNewsをスマホに入れてみました。世間のニュースを知る良い機会ができたと思います」という感想は、講義を聞いて実践に移した学生の声である。行動に移すことは非常に重要である。

「自分の生まれた日の新聞はどんな内容だったのかすごく気になりました」という興味深い意見もあった。先述の「ペパPON!」などのサービスを利用して、ぜひ購入してみてはどうだろうか。

「父の考えで受験前に新聞の社説を読んで話すという時間をつくっている時期がありました。最近は読んでいないので久しぶりに読みたいなと思いました」という感想があり、このような家庭での取り組みは非常に大切なものである。

雑誌について

「女性誌は確かに見なくなりました。たまに美容室で読んだりすると内容が古く感じる時があります」という意見があった。紙の雑誌は印刷に1ヶ月以上かかるため、情報の鮮度という点ではデジタルに劣る面がある。

「文春の表紙のデザインが他社と異なる理由を初めて知りました」「雑誌を買わないので週刊文春も派手な表紙だと思い込んでいました」という感想は、講義で新たな発見があったことを示している。

本の自動販売機について

「本の自動販売機、バックナンバーなども手に入れやすそうだと思いました」「本の自販機があったら絶対買いに行くので、ぜひ日本でも普及して欲しいです」という期待の声が寄せられた。この技術の日本への普及が待ち望まれる。

雑誌のサイズと形状について

「雑誌名が読みにくい雑誌が多いなと感じていたので納得しました」という意見があった。雑誌も売るために必死でデザインを工夫しているが、時に読みやすさが犠牲になることもある。

「小さい雑誌はいくらぐらいなんですか?」という質問については、おそらく通常サイズと同じ価格で販売されていると思われる。

「本棚整理した際、最近は収納がなぜか難しく感じたのは大きさや形に理由があったのですね」という気づきがあった。変形サイズの雑誌が増えたことで、本棚への収納が難しくなっている。

「この前、ネットで雑誌を買って、届いた時にノートサイズでびっくりしました。小さい雑誌、色んなところで販売してるんですね」という経験談も寄せられた。

縦読み漫画について

「縦読み漫画は今までのコマ割りと違って読みにくいです…」という率直な感想もあった。新しい形式への適応には時間がかかることもある。


おわりに

本講義「苦戦する紙媒体と電子書籍」では、紙媒体がデジタル化の波の中でどのような変化を遂げているのかを多角的に検証した。

電話帳や会社案内から始まり、新聞、雑誌、書籍に至るまで、あらゆる紙媒体がデジタルへの移行を迫られている。新聞の発行部数はインターネット普及後から減少を続け、書店の数は20年で半分以下になった。子供向け雑誌は少子化とデジタルサービスの普及により、壊滅的な状況にある。

しかし、漫画業界は価格を維持したことで比較的成功しており、紙の本は理解度においてデジタルより優れているという研究結果も存在する。紙には紙ならではの価値があり、完全な消滅ではなく、デジタルとの共存・使い分けが今後の方向性となるだろう。

また、シェア書店のような新しい形態の書店が全国で広がりを見せていることは、人と本との新しい関わり方を示唆している。書籍の自動販売機やAR技術など、紙とデジタルを橋渡しする技術も進化を続けている。

重要なのは、デジタル化によって便利になる一方で、ジャーナリズムの維持という社会的課題や、プラットフォーム企業に利益が集中するという構造的問題にも目を向けることである。情報リテラシーとは、単にツールを使いこなすことだけでなく、メディアの変化が社会に与える影響を理解することでもある。

紙媒体とデジタル、それぞれの特性を理解し、目的に応じて適切に使い分けていくことが、これからの情報社会を生きる上で求められる力となるだろう。


よくある質問(Q&A)

Q1. 電子書籍と紙の本、どちらが理解度が高いのですか?

A1. 研究結果によると、紙の本はデジタルの本で読むよりも理解度が高いとされています。これは、紙の文字は反射光で、画面の文字は透過光(直接光)で脳が捉えるため、思考プロセスが異なることが関係しています。手軽に読むにはスマートフォンやタブレットが便利ですが、深く理解したい内容は紙で読むことをお勧めします。なお、Amazon Kindleは間接光を使用しているため、タブレットよりは紙に近い読書体験を提供できます。

Q2. なぜ漫画だけがデジタル化に成功しているのですか?

A2. 漫画がデジタル化に成功している最大の要因は「価格を下げなかったこと」にあります。新聞はデジタルで無料で読めるようになり、雑誌もdマガジンのようなサービスで月額580円で読み放題になりました。しかし、漫画業界はこのような価格破壊を行わず、デジタルでも適正な価格を維持したため、コンテンツの価値が保たれました。2020年には電子も含めた漫画の売上が過去最高を記録しています。

Q3. カスタマーバーコードにはどのような情報が含まれていますか?

A3. カスタマーバーコードには、郵便番号7桁、番地、部屋番号までの情報が含まれています。そのため、郵便物の写真をSNSなどに投稿する際、住所を隠してもカスタマーバーコードが写っていると、自宅が特定されてしまう可能性があります。郵便物を撮影する際は、カスタマーバーコードも含めて隠すよう注意が必要です。

Q4. シェア書店とはどのような書店ですか?

A4. シェア書店は、大きな本棚の一部を「棚」として借り、自分の選書で本を並べることができる新しい形態の書店です。本好きなら誰でも棚オーナーになることができ、自分の「好き」を発信できます。棚主が交代で1日店長を務めることも多く、来店客との交流も深められます。SF専門棚や絵本棚など、棚主の個性が反映された多様な品揃えが特徴で、大型書店ではできない、人と本が深く繋がる読書体験を提供する場として全国で広がりを見せています。

Q5. 2040年までに新聞は本当になくなってしまうのですか?

A5. 現在の発行部数の減少傾向が続けば、2040年までに発行部数がゼロになりそうな新聞があるという予測は存在します。しかし、全ての新聞がなくなるわけではなく、デジタル版への移行や新しいビジネスモデルの構築により、形を変えて存続する可能性があります。ただし、記者離れも深刻化しており、質の高いジャーナリズムを維持するための収益構造をどう確保するかが大きな課題となっています。日本経済新聞のように、デジタル版で付加価値を提供する取り組みも進んでいます。

詳しくは15分の動画で解説しました。
https://www.youtube.com/watch?v=Ma7inyY92Lg

📰 新聞離れ 新聞の発行部数がインターネット普及後から継続的に減少している現象のこと。2040年までに発行部数がゼロになると予測される新聞社もあり、記者離れも深刻化している。若者は新聞を読まなくなったが文字離れはしておらず、むしろSNSなどで自ら情報発信するようになっている。

📱 dマガジン NTTドコモが提供するスマートフォン向け電子雑誌の定額読み放題サービス。月額580円で多数の雑誌が読み放題になるため、紙の雑誌が1冊ずつ売れなくなる要因となっている。1つのサービスで全雑誌が読めてしまうことで雑誌の価値が下がる問題を引き起こしている。

📚 電子書籍 紙の本をデジタル化し、スマートフォンやタブレット、専用端末で読める書籍形態。日本では漫画以外の電子書籍は苦戦しているが、漫画は2020年に電子含む売上が過去最高を記録。紙から電子への移行が成功した数少ない例として注目されている。

🔍 OCR(光学的文字認識) スキャナーで読み取った紙の文字をデジタルテキストデータに変換する技術。紙媒体のデジタル化において精度が課題だったが、技術進歩により実用レベルに向上。紙の書類や書籍をデータ化する際に必須の技術となっている。

📖 縦読み漫画 従来の横にページをめくる形式ではなく、スマートフォンで縦スクロールして読む漫画形式。ピッコマがLINEマンガを抜いた要因とされ、スマホ時代に適した新しい漫画の読み方として普及が進んでいる。韓国発のウェブトゥーンが代表例である。

🏪 書店減少 過去20年で書店数が半分以下に減少している深刻な事態。電子書籍やネット通販の普及により実店舗の書店経営が困難になっている。一方でシェア書店という新しい形態も登場し、本好きが棚を借りて自分の選書を並べる取り組みも広がっている。

🧠 反射光と透過光 紙の文字は反射光、画面の文字は透過光(直接光)で脳が認識するという違い。研究では紙の本の方がデジタルより理解度が高いとされ、デジタルで作成した文書の誤りが印刷すると見つかりやすい理由もこの脳の認識の違いで説明される。

📲 QRコード デンソーが考案した世界に誇る日本発の二次元バーコード技術。URL誘導、テキスト表示、連絡先登録、Wi-Fi接続、メール起動など多様な機能を持ち、紙媒体からデジタルへ誘導する代表的な手段として広く普及している。

🖨️ オンデマンド出版 電子データからその場で印刷・製本する仕組み。スウェーデンでは書籍の自動販売機が設置され、在庫不要でバックナンバーも入手可能になっている。Amazonでも電子書籍から紙の本を1冊から出版でき、出版のハードルが大幅に下がった。

💰 デジタル化と価格戦略 漫画が電子化に成功した要因は価格を下げなかったこと。新聞はデジタル版を無料化し、雑誌はdマガジンで定額化したため価値が下がった。週刊少年ジャンプは値段を維持したまま電子化を進め、紙から電子への移行に成功した成功事例として挙げられる。

導入:紙のぬくもりとデジタルの利便性、読書の未来はどこへ?

あなたは今、情報を得たり学習したりする際に、紙とデジタルのどちらを多く使っているでしょうか?私たちは、長年にわたり慣れ親しんできた紙媒体が持つ伝統的な価値と、スマートフォンやタブレットの普及がもたらした電子書籍の革命的な利便性の両方を享受できる、まさに読書スタイルの大きな転換期に生きています。

一概に「どちらが良い」と断言することはできません。重要なのは、それぞれの特性を深く理解することです。この資料は、科学的な研究結果や具体的な事例を基に、紙の本と電子書籍の長所と短所を多角的に整理し、あなた自身の目的やライフスタイルに合った最適な読書方法を見つける手助けをすることを目的としています。

1. 読書体験と理解度の科学:脳は「紙」と「画面」をどう捉えるか?

紙とデジタルでは、脳の働き方や情報の捉え方が根本的に異なります。パソコンで完璧に校正したはずの文章を、紙に印刷した途端に間違いを見つけた経験はありませんか?これは、媒体の違いによって脳の「モード」が切り替わっている証拠です。

比較項目紙の読書デジタルの読書(タブレット/スマホ)
光の種類反射光(間接光)<br>紙に当たった光が反射して目に入る透過光(直接光)<br>画面自体が発する光を直接見る
脳のモード分析モード<br>文章の構造や論理をじっくり追うのに適しているパターン認識モード<br>情報を素早く広く浅く捉えるのに適している
研究結果デジタル媒体よりも全体的な理解度が高いという研究結果が多数ある。特に、情報量の多い説明文を読む際や、時間制限がある場合にその優位性が顕著になる。紙媒体と比較して、特に説明文や時間制限のある読書において理解度が低くなる傾向が報告されている。

ネット検索の罠:「コピペ思考」と論理性の欠如

• 筑波大学の実験より 普段から読書をする学生と、全くしない学生に同じテーマで小論文を書いてもらったところ、読書をしない学生のレポートはネットで見つけた情報の「コピー&ペースト」がほとんどでした。一方、読書習慣のある学生は、情報を整理・分析し、自らの論理で文章を構築する「構造的な思考力」が高い傾向にありました。

• 東京大学の事例より あるレポートの約75%がインターネットからのコピー&ペーストだったという衝撃的な事例が報告されています。専門家は、ネット検索を中心とした情報収集は、情報を断片的に繋ぎ合わせる「感覚的なつなぎ方」に陥りやすく、「論理的な思考」を育む上で妨げになる可能性があると警鐘を鳴らしています。

補足:目に優しい「E Ink」技術 Amazon Kindleなどの電子書籍専用リーダーに採用されている「E Ink」は、タブレットやスマホの**透過光(直接光)とは異なり、紙と同様の反射光(間接光)**の技術を利用しています。そのため、ブルーライトの刺激が少なく、目に優しい読書体験を提供します。深く読書をしたいがデジタルの利便性も捨てがたい、という場合に有力な選択肢となります。

2. 徹底比較:紙の本と電子書籍の長所と短所

こうした脳の働きの違いが、私たちが日常で感じる紙とデジタルの具体的な長所・短所となって現れます。

2.1. 紙の本の魅力と弱点

長所(メリット)

• 深い理解を促す セクション1で見たように、紙の読書は脳を「分析モード」に導きます。これにより、内容をじっくりと構造的に読み解き、記憶に定着させやすいとされています。学習や専門的な知識の習得に適しています。

• 偶然の出会い(セレンディピティ)を生む 書店を歩き回る中で、目的の本の隣にあった別の本に興味を惹かれたり、全く予期しなかったジャンルの本と出会ったりすることがあります。この「寄り道余剰」こそが、知識の幅を広げる大きな価値となります。

• 所有する満足感と集中しやすさ 物理的な存在感があり、本棚に並べてコレクションする喜びがあります。また、スマートフォンと違って通知が来ることもなく、他のアプリへの誘惑もないため、読書そのものに深く集中できる環境を作りやすいです。

短所(デメリット)

• 保管に物理的なスペースが必要です。

• 複数冊を持ち運ぶには重く、かさばります。

• 文字のサイズを変更したり、本文中のキーワードで検索したりすることはできません。

2.2. 電子書籍の利便性と課題

長所(メリット)

• 圧倒的な携帯性と省スペース 一つの端末に何千冊もの本を保存でき、通勤・通学中や旅行先など、いつでもどこでも膨大な書庫を持ち歩けます。保管場所にも困りません。

• 便利な検索機能とカスタマイズ性 本文中のキーワードを瞬時に検索できるため、特定の情報を探し出す際に非常に効率的です。また、文字のサイズやフォント、行間などを自分好みに調整できるため、誰にとっても読みやすい環境を作れます。

• 入手しやすさと価格 書店に行く必要がなく、24時間いつでも思い立った時に購入・ダウンロードが可能です。また、紙媒体よりも安価に販売されているケースも多くあります。

短所(デメリット)

• 読書には端末のバッテリー残量が必要です。

• 透過光(ブルーライト)を発する端末では、眼精疲労を引き起こす可能性があります(E Ink端末を除く)。

• 脳が情報を素早くスキャンする「パターン認識モード」になりがちなため、SNSの通知や他のアプリへの誘惑に意識が移りやすく、集中を妨げる要因が同じ端末内に存在します。

3. 変わりゆく情報メディアの世界:なぜ紙は苦戦しているのか

新聞や雑誌といった紙媒体は、この20年あまりで劇的な変化に直面しています。

• 新聞の発行部数: 2000年には約5300万部でしたが、約24年間で半減し、2600万部台まで落ち込んでいます。

• 女性ファッション誌: かつて数十万部を発行していた人気雑誌も、InstagramなどのSNSに読者を奪われ、発行部数が1/10以下にまで激減する例も少なくありません。この変化は雑誌の物理的な形にも影響を与えています。かつて分厚かった少年誌はページ数を減らし、女性誌はInstagramを意識した正方形に近い判型や、持ち運びやすいコンパクトサイズを模索するなど、デジタルへの対抗策を講じていますが、苦戦が続いています。

この変化の中で、デジタル化への対応が明暗を分けました。

成功事例(週刊少年ジャンプ)苦戦事例(新聞)
戦略紙の雑誌と同じ価格で電子版を提供。ネットでニュースを無料で提供。
結果コンテンツの価値を下げず、読者をスムーズに電子版へ移行させることに成功。紙の部数は減少したが、全体としてのブランド価値は維持。有料で販売していた紙媒体の価値が相対的に下落。「ニュースは無料で読めるもの」という認識が広まり、有料購読者が激減。

さらに、媒体の変化はコンテンツの作り方そのものにも影響を与えています。漫画アプリ「ピッコマ」は、スマートフォンでの閲覧に最適化された「縦読み(ウェブトゥーン)」という新しいフォーマットで大成功を収めました。これは、横にページをめくるという紙の前提を覆し、縦スクロールというスマホの操作性に合わせた表現方法であり、媒体がコンテンツを進化させた好例と言えます。

4. 結論:あなたに合った「最高の読書スタイル」を見つけるために

ここまで見てきたように、紙の本と電子書籍のどちらか一方が絶対的に優れているわけではありません。それぞれに明確な長所と短所があり、私たちの目的や状況によって最適な選択は変わります。

これからの時代に求められるのは、両者の特性を理解し、柔軟に使い分けるハイブリッドな読書スタイルです。

• じっくり学びたい専門書や、何度も読み返したい小説など、深い理解と記憶の定着が目的の場合 → 紙の本が適しています。

• 通勤・通学中に手軽に読書をしたい、あるいは多くの資料を一度に持ち歩きたい場合 → 電子書籍がその真価を発揮します。

• 最新のニュースや多様なジャンルの雑誌に気軽に触れたい時 → ニュースアプリや電子雑誌の定額サービスが便利です。

最も重要なのは、流行や周囲の意見に流されるのではなく、「自分にとって最も内容が頭に入り、かつ継続しやすい方法を見つけること」です。ぜひ、この資料を参考に、様々な読書スタイルを試しながら、あなただけの最高の読書体験を築き上げてください。

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この記事を書いた人

横田 秀珠のアバター 横田 秀珠 (新潟)公立長岡造形大学 情報リテラシー論 講師

ネットビジネス・アナリスト。未経験のIT企業に就職し、たった3年で独立し、2007年にITコンサルタント会社のイーンスパイア(株)を設立し現在に至る。All About ProFile全専門家で全国1位のコラム評価を獲得した実績を持つ。全国で年間200回を超える講演も行う。